タモリ |
今はジャズだけじゃなくて、
ラテンのおもしろいバンドとかが、
ジャズクラブでも、出ていますよ。
ジャズじゃないけど、
ジャズの周辺の音楽と
ジャズとの関係を話すのも、
おもしろいと思う。
ボサノバであるとか……。
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山下 |
うん。
アストラッド・ジルベルトが
『イパネマの娘』で
あんなにヒットして歌っているでしょう?
だけど、お金は一銭もやっていない。
アストラッドにはやらなくていいと、
スタッフがプロデューサーに電話したって、
ちゃんと資料が残っているんです。
アントニオ・カルロス・ジョビンが、
バーブレコード(ジャズレーベル)の
五十周年のお祭りの記者会見に出た時、
ぼく、ちょうど、隣に座っていたの。
ぼくはバーブのアーティストだったから、
なぜか日本でひとり呼ばれて……。
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糸井 |
そうなんですか。
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山下 |
バネッサ・ウィリアムスと
ハービー・ハンコックの司会で、
ぼく、ソロピアノやってきたんです。
みんなひとりひとり出て、
バド・パウエルの曲を、1分59秒、
タキシード着てやれという縛りなんです。
スタッフもタキシードで
カメラマンもタキシードで、
かっこよかったなぁ。
アカデミー賞と同じ形式でした。
そんなことをやって、
いちおう記者会見があるっていうんで行って、
どうせだから座っちゃえっていって、
ぼくは、ハビー・ハンコックと
カルロス・ジョビンの間に座ったの。
まぁ、そしたら、みんな、ジョビンには
「ジャズの影響」について訊くんだけど、
「私はジャズは知りませんから」
の一点張り。絶対に知っているはずなのに。
ジャズからたくさん持ちだしてきているし、
質問者たちも
「あのコードはジャズのコードでしょう?」
と例を出しているのに
「ドビュッシーだってあれをやってた」
って。
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糸井 |
(笑)
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山下 |
カーネギーホールで
世界中のジャズミュージシャンを
集めておこなわれているお祭りだし、
「ジャズには感謝しています」
ぐらい、言えばいいのにね。
もう70歳を過ぎていたんだから……。
でも、絶対にジャズを褒めない。
ジャズに感謝しない。
それがほんとに不思議で、
なんだこの人は、と思って調べたの。
そしたら、やっぱり積年の恨みがあった。
アメリカのジャズミュージシャンが
ブラジル音楽を
搾取しちゃったところがあって、
聞いておもしろいから
どんどんアメリカで吹きこんだはいいけど、
ロイヤリティーの法律がなかったから、
好き放題、ボサノバのミュージシャンを
使っちゃったんだよね。
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タモリ |
ボサノバの側には、
恨みつらみがあるんだよね。
それでジャズの方では
「ジャズがあったから、
あんたたちは有名になれたし、
ジャズからも影響を受けてるんだろ?」
というんだけど……
実際に詳しくボサノバを聞いてみると、
まったくと言っていいほど、
影響を受けていない。
逆に、ジャズが、
ボサノバから影響を受けていた。
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(つづきます) |
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