山下 |
たとえば、スケート選手に
5分間だけ好き勝手にやっていいですよと
言うとするじゃないですか。
どういうタイミングで回転するのか、
どっちへ向けて滑ってくのか、
それは、あなたしだいですからねって。
でも、その選手にテクニックがなければ、
いい滑りはできないでしょう。 |
糸井 |
ははぁ‥‥自分がどの鍵盤を叩いてるのか、
ぜんぶ把握していながら、「自由」なんだ。 |
山下 |
それまでの蓄積と、自分のスタイルを、
瞬時に出していくやりかたなんですね。 |
糸井 |
なるほど‥‥かっこいいなぁ。
じゃ、もう終盤ですが、
次の話は、ジャズのどのあたりになりそうですか? |
山下 |
モダンジャズの次ですから、フュージョンです。 |
糸井 |
そっちに行った人もたくさんいますよね。 |
山下 |
ひとつのジャンルになってますからね。 |
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糸井 |
日本のジャズの今の状況って、
やっぱり、そういう方向なんですか? |
タモリ |
トラディショナルなジャズも多いですよね? |
山下 |
案外、正統派も聴かれてますけど、
人口としては、フュージョンが多いんじゃないかな。 |
糸井 |
演奏するほうも、聴くほうも。 |
山下 |
うん、そうですね。 |
糸井 |
山下さんは、なぜフリーの方面へ‥‥? |
山下 |
いろいろ分析しはじめると長いけど(笑)。 |
糸井 |
長いでしょうけども。 |
山下 |
自分のなかにたまってきたものが、
それまでのやリかたですと
なんというか‥‥釣り合わないんですよ。
すごく強い感情‥‥激情といいますか。 |
タモリ |
うん。 |
糸井 |
他のどんな方法を試しても表現しきれなかったんで、
ヤケになって、
ヒジで鍵盤を叩いちゃったり‥‥そんな感じですね。 |
糸井 |
1960年代くらいから。 |
山下 |
それについては先達がいるんですけれど、
僕がはじめたのは、1969年からです。 |
糸井 |
もう、ご自身の表現の一部になってるんですね。 |
山下 |
その表現をすこしお目にかけようというのが、
次の「HAIKU」という曲なんです。 |
糸井 |
あの「俳句」ですよね。 |
山下 |
ええ、あの「五七五」の「俳句」です。
はじめて会った相手と、フリーにやろうってときに、
途中は、それぞれ勝手なんだけど、
曲の最後は、どうやって終わったらいいのか、
そこのかたちだけ決めとこうっていう、
そういう演奏のしかたをしてる曲なんですよ。
その合図として、同じ日本人なら誰でもわかる、
俳句のリズム「五七五」を使ってるんです。
タタタタタ、タタタタタタタタ、タタタタタって。 |
糸井 |
それが唯一のお約束であると。 |
山下 |
ええ、ただ、それだけがルールの曲。 |
糸井 |
なるほど、なるほど。 |
山下 |
それ以外の部分は、
個々のプレイヤーの表現でできあがっていきます。 |
糸井 |
じゃ、一句、聴かせていただきましょうか。 |
山下 |
はい、それでは「HAIKU」です。
どうぞ、お聴きください。 |
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♪「HAIKU」
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<つづきます> |