Vol.4 髪(前編)
「ダーウィンと19世紀のジュエリー」
チャールズ・ダーウィンの暮らしていた家が
南東ロンドンの我が家から車で20分と
意外に近いことを知り今年の2月に初めて訪れた。
旧邸宅はケント州の小さな村にあり
現在はイギリスのチャリティ団体
ナショナル ヘリテッジが管理している。
19世紀当時、まだ不衛生で
公害もひどかったロンドンの街と
しがらみの多い人付き合いに嫌気がさし、
チャールズはこの自然に囲まれた美しい村へ
妻子を連れて引っ越したのだそうだ。
ダウン ハウス (Down House)
と名付けられた屋敷は今はミュージアムになり
チャールズ一家と使用人たちが暮らしていた
面影を残しつつ、約半数の部屋は
『種の起源』を著して世界的に知られることになった
自然科学者としての彼の生涯をたどる
パネル展示、遺品の陳列に使われている。
亡くなるまでの40年間、チャールズは
ダウンハウスで生活を送っていたという。
多くの研究もここで行われていたと聞き、
彼が育てていた植物が今も見られるのだろうか、
と私は期待を膨らませて足を運んだが、
庭の木々も草花も当然のごとく
ほとんどがまだ休眠期で
ところどころに顔を出し始めたスノードロップや
クロッカスを除いては茶色く閑散としていた。
そうか、うっかりしていた。
植物が美しく息を吹き返す季節にまた出直そう。
私は、この日はかわりに邸宅の中を歩いて
チャールズ・ダーウィンという人物と
当時の彼の暮らしぶりを見てまわることにした。
ダウンハウスの外観。夏に再訪した際に撮影したもの。
写真 : Akemi Otsuka
(後編へつづく)
2018-09-28-MON

