イセキさんのジュエリー雑記帖

ロンドンを拠点に
アンティークや
ヴィンテージの
ブローチを探し、
ご紹介していた
イセキアヤコさんの
人気コンテンツ

リニューアルして
かえってきました。
雑記帖という
タイトルにあるように、
ジュエリー全般に
まつわるあれこれを、
魅力的なエッセイと
写真でお届けします。
不定期更新です。

profile

イセキアヤコさんプロフィール

京都出身。2004年よりイギリス、ロンドン在住。
アンティークやヴィンテージのジュエリーを扱う
ロンドン発信のオンラインショップ、
tinycrown(タイニークラウン)
を運営している。

Vol.9 ルーサイト

ここ何年ものあいだ、環境問題の課題として
世界各国がプラスチック削減を掲げている。
私が住んでいるイギリスも、
大手スーパーマーケットや百貨店だけでなく、
学校、中小企業、ひいては個人レベルで
プラスチック製品を排斥する方向に
人々の意識が向きつつある。


先日行われた
娘(4歳)の同級生の誕生日パーティでは
その子の両親が「プラスチックの
パッケージに入ったお菓子やドリンク、
プラスチックの食器は一切使いません」
と宣言したので、
ノー プラスチックの誕生日会だった。
私がいつもジュエリー制作をお願いしている
ロンドンの工房も、いつの間にか
ウォーターサーバーのカップが
プラスチックから紙コップになっていた。
受付のカウンターに置かれていた
工房のロゴ入りキャンディーも、
「包み紙は土に還る生分解性プラスチックに
変えました。ご自由にお取りください。」
というメモが添えられている。


そんな社会で暮らしていると、人は自然と
プラスチックで過剰に包装されたものに
抵抗を覚えるようになるものである。
私も、プラスチックの容器に入った
野菜や果物は、昔と比べて
もうあまり買わなくなった。


けれども、ヴィンテージのジュエリーを
蚤の市などで仕入れるとき、
私は「プラスチック」のジュエリーを
選ぶのにためらいはない。
どうしてだろう、と考えてみた。
理由はおそらく、
私の中でそのプラスチックの用途が
「使い捨て」目的ではないからだ。
一方で、たとえ使い捨てでなくとも
今後、私がプラスチックジュエリーを
制作するつもりもない。
プラスチック製品を世に増やす行為は
したくないが、過去に作られた美しい品は
保存するに値する、
という思いがあるからだと気が付いた。


過去15年にわたって、私が集めている
プラスチックジュエリーがある。
それはルーサイト製のジュエリーで、
とくに、無色透明で裏側に絵柄を彫って
ペイントした1940-50年代のブローチだ。


上の写真はこの5年くらいの間に見つけた、
鳥がモチーフのもの。
中には非常に似ている、
シリーズのようなデザインがあって、
もしかしたら
製造元が同じなのかもしれないが、
片やフランス、片やイギリスで見つけた品である。
ヨーロッパの古い絵本に出てくる挿絵を
切り取ったような、視覚的にも奥行きのある世界観。
透明なプラスチックに白1色でまとめているところ、
ペイントの剥げでいい具体に
味わいが出ているところも素敵だと思う。


ヴィンテージジュエリーの世界に
果てしなく広がるプラスチック製品の海。
さて、その中でこの「ルーサイト」とは
一体どんな特徴を持つプラスチックなのだろうか。

(書籍編へつづく)

 

このページの掲載商品はtinycrownのオンラインショップ
2020年1月10日17:00(日本時間)から販売されます。

2019-12-07-SAT

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