JIMIYA
女子大生ヂミや1001夜。

98年10月7日(水)

【川越商店街:その2】
拾え、拾うんだ、ちま!なんて考えながら、
自販を探していた。
当然、ちまの自販探知機はちゃんと作動していた。
すると、ちょっと路地に入ったところで、
またまたナイスな自販を発見した。
どのへんがナイスなのかと言うと、
「酒」の自販ってとこだ。
「タバコは確率がいい」とか言って、喜んでいたのだが、
酒の確率は、もっといいんじゃないか?
なぜなら、ジュースやタバコと比べると酒の値段は高い。
ってことは、千円札や五百円玉で買って、
確実に釣り銭が出るわけだ。
その釣り銭を取り忘れてたり、取り残してたりする。
あと、酔っぱらってる時は...。
こんな事を考えていたから、酒の自販には、
かなり期待してしまった。

そこは、こじんまりとした酒屋さんで、
店の入り口を囲むように、自販が並んでいた。
向かって右側から、ジュース1台、
タバコ1台、酒1台、
タバコ2台、酒1台。

もう、ごちゃ混ぜ!といった感じだが、
こーゆーのは個人的に大好きである。
さらに、ここの好きなところは、
商店街の街頭に照らされて、
やや見えやすくなっていたところと、
ちょっと自販の置いてあるところが、
高台になっているとこだ。
この、高台ってのは、かなり好感触だ。
普通にしゃがんだだけでもいいってことは、
ヒール技が披露できる。

しかし、どうしたことか?
こんなうだうだ言ってるのに、探しても探しても、ない。
条件は良すぎる
(台数・種類・照明・位置)にも関わらずだ。
これじゃ、いくら自販探知機の性能がよくたって、
小銭探知機の性能がズタズタじゃ、話しにならん。

そうこうしてるうちに、雨まで降ってきた。
その雨は、まるで私の惨敗ぶりをあざけ笑うかのようで、
この商店街でヂミやすることに、かなり不安を感じた。
もう、20台まであと4台だよ!
ここまできたら、出来るだけやるしかない。
当初予定していた20台を、
倍の40台に増やすことにした。

そうと決まったら、たくさん並んでいるとこがほしい。
と、探していたらさっそく、
スーパーの入り口のとこに、
たくさん並んでいるではないか。
ここの自販は、一気に8台もあった。
しかし、8台中5台はジュースの自販なのだ。
まあ、スーパーだからしょうがないのだが、
実に、62.5パーセントがジュースの自販である。
ジュースにそんな割合を占められちゃうと、ちょっと困る。
なるべく、タバコや酒にその割合を占めて頂きたかった。
しかし、そんなことも言っていられない。
残りの37.5パーセントの、
酒2台とタバコ1台に期待しよう。

まずはジュースから、と、私は自販に近づいた。
そしたら横で、小さい女の子を連れた母親が
ジュースを買っていた。
小さい女の子が、
釣り銭受けをカチャカチャやっていて、
すかさず母親が一言。

「ないわよ、お釣りなんて」
ガ〜〜〜〜〜ン。
「ないわよ、お釣りなんて」
その言葉、
そっくりそのまま私に言ってるのかと思った。
母君が女の子に言ってた「ないわよ」は、
ちょうど入れたから、釣り銭なんてないの
「ないわよ」だったんだろうが、
私にとっての「ないわよ」は、
探しても探してもない、
ないもんはないの「ないわよ」なのだ。
どっちにしろ、母君のあの一言は、痛く心に響いた。
そう簡単に落っこってるモンじゃないのだ、釣り銭なんて。
あ〜、そんなこと言ってるヂミやが情けない。

気を取り直して、そこの8台をチェック。
しかし、雨は降ってるわ、もう真っ暗だわで、
探すのはかなり困難。
カチャカチャ、ライティング、掻き出しなど、
ヂミやの先端技術を駆使して試みたが、なかった。

やはり、ないものはないのか?
私の探し方が、まだまだ甘いのか?
そんな風に落ち込みながらも、絶対に拾える気がしてた。

こうなったらとにかく、自販を逃さないようにしよう。
1台だけしかないとこが、
「もしかしてあの1台に?」なんて気になった。
「こういう1台、しかもジュースに限ってあるんだよ」と、
本来、意外性大好きなちまは考えたのだ。
この意外性大好きの考えは、夢にまで出てくる。
その夢は決まって、
ジャンボ宝くじが発売された直後にみるのだ。
そう、ありがちだが
1億6千万円当たって大喜びしてる夢だ。
でも、その当たり方が意外性たっぷりなのだ。

買うときは、地元の小さい・汚い・古い、
と三拍子揃った、
売場がテントみたいな宝くじ売場で、3枚だけ買う。
その買い方も、「いざ!」といって買うのではなく、
「通りすがりになんとなく」といった感じで買うのだ。
もちろん、そこから今までに
大当たりなんてでたことはないのだ。
さらに、自分が当たってることなんて、全然気づかない。
なんせ、当選番号を発表する頃には、
買ったことすら忘れちゃってるからだ。
あげくの果てに、引き替え期限ギリギリのところで、
テレビを見てやっと気づく。
よく、「引き替え期限が間近ですので、
もう一度ご確認を!」
なんてやってる、アレだ。
「そういえば買ってた気がする」なんて照合したら見事、
大当たり。
おかげで、
1億6千万円も手に入っちゃって、もう、大喜び。
こんな夢を今までにもう、4〜5回は見てるのだ。
で、ジャンボがくるたんびに買ってみようとは思うんだが、
このシナリオをもう分かっちゃてるから、
買う時に「いざ!」となってしまう。
おそらく、それじゃダメだろうと思って、いつも買わない。

かなり話はそれたが、そうそう、
「もしかしてあの1台に?」だった。
さっそく、見つけた。ちょっと路地に入ったところで。
それは、自販の大御所、コカコーラの自販だった。
ドキドキしながら、
いつものルーティンを終わらせた、が、
やっぱり、なかった。
もう、ここまできたら、
そう簡単にはいちいち落ち込まなくなった。
きりがないのだ。
1台ごとに落ち込んでたら。

で、さっさと次を見つけた。
今度は、パチンコ屋の真ん前で、
そこだけ真っ昼間みたいに明るい自販だ。
しかも今度もジュースの自販(サントリー)1台のみ。
ツカツカーっと近寄ってチェックしようとしたその時、
その自販のある、
芋屋のおとっつぁんがちょっとにらんできた。
申し訳ないが、こちらも軽く返しておいた。
調べずに、のこのこ立ち去るわけにはいかないので。
で、調べた結果、またしてもない。

ここらへんはもう、観光気分で、楽しんでいたようだ。
そこの「芋屋」だって、普通の商店街にはないだろう。
なんせ、川越はさつまいもが名物なのだ。
そんなことを思えば、
まさに観光気分にひたれるのであった。

が、やはりここはヂミやモードに戻して、と。
で、見つけたのがタバコ屋さん。
自販の前で立ち止まると、今度は、
タバコ屋のおばさまたちがジロジロ見てくる。
申し訳ないが、しかとした。
気にしてたらチェックするのに、気が散るのだ。
せっかく集中したのに、タバコの自販4台、
またしてもなかった。
もう、顔がひきつってきてるのが、
自分でやってて分かった。
でも、拾いたい!その一心が自販を探していたのだ。
足もちょっと疲れてきたが、まだまだいける。

ちょっと歩いたら、
ずいぶん風情のある酒屋さんを発見。
そこは、日本昔話に出てきそうな、
日本酒しか売ってなさそうな酒屋さん。
ビールとかウイスキーとかカタカナのお酒ではなく、
あくまでも日本酒。しかも量り売り。
ちょっと店を覗いたところ、
カタカナのお酒もあることはあるのだろうが、
ぱっと見は、日本酒しか見あたらなかった。
で、「ビールが飲みたきゃ、自販で買いな」
ってことなのか、
ちゃんと酒の自販が3台あった。
あとはジュースも2台あって。
で、どお?やっぱりね。
そう、やっぱりなかったのだ。

でも、ここの酒屋さんに出会えたことは
なんだか嬉しかった。
家の地元じゃ、酒のディスカウントショップとか
デカいのばっかりで、
それはそれで便利だが、
こういうお店が頑張っているのは、
なんだか微笑ましかった。

ってなこと言ってたら、ずいぶん歩いたもんだ。
でも、この商店街はさすがに長いだけあって、
もう少し続くのである。
とうとう、今日の目標台数まで、
残りあと5台となった。

そこで、少しずつ攻めようなんて考えてたら、
本当に、自販が少しずつしかなくなってきた。
で、1台のジュースの自販を見つけて、
釣り銭受けやら、
地面やら見ていた。
そして、自販の横の隙間を覗いた、
そ、そ、そ、その時!
何か光っているではないかっっっっっっ!!!!
しかも、銀色に。
この間の銅とは、光かたが違う、光かたが。
もしかして、100円?それとも500円?
その光がいくらなのかは、その後一瞬で分かった。
その光は、ただだった。
そう、あの光は、お金の光じゃなかったのだ。
暗闇で、銀色に光るあの正体は、
ただのパチンコ玉だったのだ。
なんで、こんなところにあるんだよ。
と、辺りを見回したら、
すぐ近くにパチンコ屋があった。
ったく、紛らわしいったらありゃしない。
もう、あの光を見た時の感動を返してくれ!
私は、誰にもぶつけることの出来ない悔しさを
自分にぶつけていた。

私の気持ちも、商店街も寂しくなってきた。
だんだんと、人通りも少なくなり、店も少なくなった。
「もう少し、もう少しだから」と自分に言い聞かせ、
自販を探した。
そこで、仲良く並んだタバコの自販を2台見つけた。
もう、お願いいいいいい!
と、祈るような気持ちで望んだ、この自販。
やっぱり、「やられた」。
もう、「なかった」とは言いたくない。
すでに言ってるのだが。

今度は、なんだかぽつんと
1台だけのコカコーラの自販に。
これで、39台目だ。
今度こそ、今度こそ!
しかし、もはや何も言うことはない。

とうとう、最後の1台となった。
最後の1台をどれにしようかなんて考えたが、
選ぶほど台数がない。
とりあえず、そこからは見あたらない。
と、後ろを振り返った時、
1台の古ぼけた「ワンカップ大関」の
自販があった。

十分汚くて、販売してないかと思うほどのものだった。
見事なまでに哀愁が漂っていた。自販も私も。
「ほかのにしよう」と立ち去ろうとしたその時、
一人のおじさんがその自販で酒を買ったのだ。
ちゃんと機能していたのだ、この古ぼけた自販も。
そうと分かったら、さっそく調査開始だ。
しかし、そのおじさんの釣り銭の取り残しもなく、
地面をいくら探しても、
過去に置き去りにされた小銭はなかった。

今日は見事に惨敗だ。

【今日の様子】
場所:埼玉県川越市の川越商店街
時間:17:00〜18:30
天気:くもりのち雨
気温:暑くもなく寒くもなく
人通り:若者がたくさん
台数:40台(タバコ、酒、ジュース)
金額:0円
残り台数:950台
只今の金額:10円

(つづく)

1998-10-25-SUN


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