JIMIYA
女子大生ヂミや1001夜。

98年11月2日(月)

【ヂミやの師匠、ついに参上!!】
場所は神田。
時は午後の3時半。
今日は神田でやる予定など、これぽっちもなかった。
「新宿でやれるだけやる!」と決めてきたからだ。
最低でも100台はやろうと決め、慣れない早起きや、
慣れないスニーカーを履いての出動だった。
本来なら、【ちまがヒールを脱いだ!!】なんて
ビックニュースにする予定だったのが、まんまと崩れた。
私がヒールを脱いで、
スニーカーでヂミやにのぞんだことなど、
ほんと、ちっぽけなことになってしまったからだ。

そりゃそうと、なんで神田に来たのか。
それは、家から新宿まで行くのに、
神田は乗り換えるとこだったからだ。
実は、神田で途中下車する前に、上野でも降りていた。
なんだか素直に、ただ新宿に向かえなかった。
「ちょっと、地ならしでもすっか〜」てな事を考えて。
乗り換えで改札を一度出るたびに、
「ちょっと寄ってみよう」なんて調子だった。
そんな調子で上野で36台やったが、結局拾えずじまい。
「ゼッタイ、新宿で拾ってやるぅ!」と思っていた。

神田という街には、全くと言っていいくらい行かない。
だから、どっからどうやっていいのかがわからなかった。
点々と散らばった自販を、地道にやってくほかない。
で、神田○○商店街(ちょっと忘れた)に入っていった。
商店街なら自販がたくさんあるはずだ。
さっそく角地にあったジュースの自販を見つけて、
近寄ったその時ぃぃぃ!
向こうから、ゆっくーりと人が来るではないか!
その人は、私の目の前で私よりも先にチェックを始めた。
そう、その人こそ、ヂミやの師匠となる人だったのだ。
プロの技を目の当たりにした私は、
その技を盗みたいと思った。
が、師匠はその自販で拾えずに、
商店街を出ていってしまった。
私は、この商店街に入ったからには、
自分で自販を見て回りたい。
つまり、師匠とは反対方向だ。
ここで道が二手に別れてしまった。
一瞬、自販を優先しようと2、3歩あるいたものの、
どうしても師匠のことが忘れられない。
呆然と立ちすくんでいるうちに、師匠はどんどん遠ざかる。
「え〜い!こうなったら、ついてっちゃえ」
と、急いでついていった。
急いでついていったが、見失う心配はなかった。
なんせ、師匠の歩く速度はゆっくーりだからだ。
まわりのリーマン達(サラリーマン)が速いこともあって、
さらに私は普段、友達から「歩くの速いよ!」
と言われることもあって、
ちょっとあのゆっくりな速度でついて行くには
つらいものがあった。

タバコの自販のところで、さっそく師匠がチェック。
まずは、釣り銭レバーをガチャガチャやり、
つぎに、釣り銭受けをカチャカチャやってその自販は終了。
そう、さっきから、下は全くといっていいほど見ないのだ。
師匠が下を見て探すものはタバコだ。
タバコの吸い殻でまだイケそうなものを拾っていく。
で、また歩き、今度は公衆電話をチェック。
さすが、抜かりない。
師匠の技を5、6台分見させてもらったから、
「もういいかな」とも思ったが、
今度はじかにお話をしたくなってきた。
私の欲望はとどまることを知らず、
「技を盗む」のではなく、
「ちゃんと伝授」してもらいたくなった。

そうとなったら、もっと師匠にくっついていかねば。
しかし、師匠は電話ボックスに入ったり、
神社に行ったりと、なかなか自販をやってくれない。
相変わらず、歩く速度はゆーっくり。
その速度に合わせて私が歩くもんだから、
道行くリーマン達には邪魔がられる始末。
ちょっとイライラしてきたけど、
ここで匙を投げるわけにはいかない。
で、しばらくついてかなくても見逃さないと思って、
先に歩いてもらった。
その隙に、ちょっと近くにあった自販を、
師匠がやってたと同じように私がチェックしていた。
と、その時!!!
釣り銭がっっっっっ、じゃなくって、
師匠を見失ってしまったのだ。
一瞬冷や汗もんだったが、絶対再会できる自信があった。
あの歩く速度なら、この短時間に
そう遠くに行けるはずがないからだ。
しかし、まったく影も形もないのだ。
その時私の立っていた場所から行ける方向は3つ。
でもなんだか「正面の路地にいるな」と、ピンときた。
すでに、師匠とこころが通じていたのだろうか。
なんだか嬉しくなってきて、その路地に入っていった。
案の定、師匠はそこにいらっしゃった。
やっぱり、師匠は自分のスタイルを完璧につくっていて、
路地にあるジュースの自販をくまなくチェックしていた。

ちょっと先にある自販もチェックするだろうと思って、
離れて見ていた。
と、その時、
「今だ! 伝授してもらえるのは!」と思い、
ほんの数メートルなのに、超ダッシュで師匠に近寄った。
そのダッシュには、
私の気合いがこもっていたのかもしれない。
襲いかかるように近寄った私に師匠は無関心で、
「あのー、私、自販の調査を行なってる者なんですが」
と声をかけた。
すると、師匠はやっと気づいてくれて、
「あーそうなの」と一言。
こっちは、勇気をだしてもう一言。
「さっきからずっと後つけてたんですが、
いくらか拾えました?」
「いや、拾えないよー」
「数えたら、私がつけてた間に13台みてましたけど」
「ないねー」
この辺からだんだんと、
師匠がフレンドリーになってきてくれた。
調子に乗った私は、核心に迫った。
「どの辺が一番拾えますか?」
「そりゃ、トーキョー、トーキョー。東京駅だよ。
でもね、丸の内はダメだよ。八重洲だね。大丸とかあの辺。
バス乗り場とかさ。あの、ほら、長距離バスあるでしょ。
あそこはあるね〜。500円がね」。
「えっえぇ、ご、ご、500円が〜〜〜?
私もかれこれ100台くらいやってるんですが、
500円なんて夢のまた夢ですよぉ。
そんな簡単に落ちてないですよ。
しかも、さっきから、下はあんまり見ないですよね?」
「あ、下ね。
ここんとこに(釣り銭受けを指さして)あるんだよ。
下にはたいして落ちてないから。
あってもせいぜい10円とかだよ」。
「えっ、10円っていったら私にとってはすごいことですよ。
しかも、100台くらいやってるのに
まだ10円しか拾ってないし」。
「お姉さんも、100円とか拾えるようになるよ」。
その時、自分が100円を拾って喜んでる姿がよぎった。
が、もっと質問、質問。
「時間帯はいつがいいですか?」
「そりゃ、夜中だよ。俺は夜中じゅうずっとやってるから。
夜中はさ、酔っぱらいが取り忘れてくんだよな」。
「あー、やっぱり。私もそう思ったんですが、
暗くて見づらいかと」。
「でも、下はほとんど見ないから別にね」。
「あー、そうですよね」。
もうこの時点でかなり伝授してもらった。

これで私も拾えるようになる。
ヂミやとしての自信がメラメラと涌いてきたのだった。

(つづく)

【今日の様子】
場所:上野・神田
時間:14:30〜16:30
天気:くもり
気温:やや寒い
人通り:若者(上野)、リーマン多し(神田)
台数:37台(タバコ・ジュース)
金額:0円
残り台数:913台
只今の金額:10円

1998-11-08-SUN


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