JIMIYA
女子大生ヂミや1001夜。

98年11月27日(金)
『給料日後の金曜の夜』

今日やるべき事を明日に延ばしてしまう。
これは、ちまの最大の欠陥だ。
前回のヂミ屋は11月2日だった。
「今日こそ拾いに行くぞ」と思いつつ、
なんだかんだで11月の末になってしまった。
いつも私は「ギリギリの美学」なるものをうたっていて、
「切羽詰まった時にこそ、本領発揮できるのだ」
と、自分のいい加減さを正当化している。
で、今日はその「ギリギリの美学」を遂行すべく
ギリギリの日なのだ。
もう、これ以上は延ばせない。
本当にギリギリだ。
手遅れなぐらいに。

しかし、ギリギリのおかげで今日は、
「給料日後の金曜日」なのだ。
かなりの人が、ぱあーっと飲みに行くはずだ。
こんな日は、コバちゃんに教わったとおりに、
「酔っぱらいの取り忘れ・取り残し」を狙うのだ。
ということで、
さっそく東京駅八重洲口周辺に向かう。

23時30分。
東京駅八重洲口到着。
着くなり皆、ホントにいい感じで出来上がっていた。
至るところで円を描き、
「この後、どうする?」なんてやってる。
ここが、新宿や渋谷なら当たり前の光景だが、
東京駅だと、私が見慣れていないこともあって、
ちょっと圧倒された。
リーマンやオーエルのパワーみなぎる姿に。

その人達の横で私はすかさず自販をチェックした。
しかし、思ってたよりないもんだ、自販が。
こんな調子じゃ、今日の目標台数をこなせそうにない。
コバちゃんのようにハシゴしないと。
そう意気込み、少ない自販をチョコチョコやっていたら、
なんか、後ろから視線を感じた。
ちらっと横目で見た瞬間、何やら怪しい黒い陰が。
怖くなりながら、自販チェックを続けていたら、
「あのー」
と、普通のリーマンに声をかけられた。
私はとっさに、
「あっ、決して怪しいもんじゃないんです。
ちょっと自販の調査をしておりまして」。
と、自ら怪しいと言わんばかりだった。
そしてリーマンの方は、
「いや、ちょっと食事でもと思って」。と。
なんだ、そういうことか。

急にホッとした私は、
「すいませんが、今仕事中なんで」。
と、かなり強気に断った。
しかし、タダで帰すわけにはいかない。
せっかくこうして出会ったのだから、宣伝しとかないと。
「あの、インターネットとかやってますか?」
「うん、やってるよ」。
「じゃあ、是非見てもらいたいページがあるんです。
 これなんですが、よろしくお願いします」。
私はヂミやノートに、ほぼ日のURLを書き、
軽く説明をして渡した。
そして最後にリーマンは、なぜだか握手をして、
「それにしても楽しそうだね、キミ」。
と、嬉しいことを言ってくれたのだ。

いつもヂミやをやる時は、
貧乏くさくならないようにしていたが、
楽しそうに見られたのは嬉しかった。
現に私は、ヂミやをやってる時とても楽しい。
なんだか、小さい旅行をしている感覚になる。
いろんなものを見て、人とふれあって。
こんなこと普通じゃ、やらないし出来ないゾ。と。
すごく得した気分になるのだ。

また一人私は、小銭を求めて歩きだした。
駅から離れていくのは私だけだ。
なんだか妙に、人が少なくなってきた。
時刻はちょうど午前0時。
皆「この後、どうする?」と話し合った結果、
「帰ろうか」に落ち着いたらしい。
私が思ったほどパワフルじゃなかったようだ。
活気もなくなったところで、
こじんまりとチェックをしていたら、大問題が発生。
もーおっ、トイレに行きたくてしょうがない。
やっぱり冬の夜はこれだから困る。
今日、家を出る前に一番心配していたのはこの事だった。
でも、コンビニでトイレを借りればいいだけのことだ。
そこで、あるコンビニに入った。

たいして飲みたくもなかったが、ジュースを買って、
「すいません、トイレを貸して頂きたいのですが」。
「あっ、トイレはお貸しできないんです」。
「あー、そうですか」。
と、すんなり引き下がってしまった。
やっぱり都心のコンビニはトイレを貸してくれないのか?
海や山に行った時、「トイレに行きたきゃ、コンビニ」
ってくらい、コンビニは公衆便所と化してるのに。
どうするんだこの後!
まだ全然拾ってないし、他の街へハシゴもするのだ。
とにかく、気晴らしに他の街へ移ることにした。
東京駅周辺で、45台だけやって、さっそく銀座に。

銀座も「終電と共に終わる街」なだけあって、
大通りにはほとんど人がいない。
タクシー乗り場に数人並んでるくらい。
人がいないってことは、お金も落ちてないのか?
ちょっと不安になりながら、自販を探した。

松屋通りから奥へ入って行き、7台並んだ自販を見つけた。
一番奥の自販からチェックをしていたら、
4台目の自販の下で何か光る物が!!
しかも100円の裏のさくらのように見える。
すっかり冷たくなった手で、その光る物を取り出したら、
やっぱり、100円だったのだーーー!!
その100円には、
ちゃっかりホコリとタバコまでくっついてきた。
でも、汚くなんかないのだ、その100円は。
清き、美しき100円なのだ。

さらに嬉しいことに、その100円が落ちてた自販は、
クリスマス仕立てだった。
商品の並んでる上の方に、
きれいに赤や緑でデコレーションしてあった。
ってことは、この100円は自販から私への、
「クリスマスプレゼント」なんだ!
そう思うと、その自販に抱きつきたくなった。
でも、横の隙間がなくて、手が入らない。
仕方なく、ニッコッと微笑んで
その自販へのお礼とさせてもらった。
ありがとう〜!
自動販売機さ〜ん!

う〜〜〜ん、しあわせっ。
そんな気分で私は、
もっと銀座らしいところへ入っていった。

(つづく)

【今日の様子】
場所:東京八重洲口・銀座
時間:23:30〜翌1:00
天気:晴れ
気温:寒い
人通り:リーマン、OL、だんだん少なく
台数:78台
金額:100円
残り台数:810台
只今の金額:160円(記録更新!)

1998-12-07-MON


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