JIMIYA
女子大生ヂミや1001夜。

99年1月23日(土)
『300台で、家まで帰れるか?』

なんと、2ヶ月ぶりのヂミやとなってしまった。
こうなったのはただ単に、ちまが怠けてたからだ。
変にアタマで、こう拾おうとか、あう拾おうとか、
かっこつけようと考えていたのだ。
そもそも「アタマが駄目ならカラダを使え」
と始まったのだった。ちまのヂミやは。
とにかく、行かなきゃ始まらない。
一から出直すつもりで、
今日は新宿で300台やると決めた。
東も西も南も北もあさってやるぅ。

なんせ日本は、世界一の自動販売機大国。
その数なんと、574万台(自動サービス機も含む)。
97年度の売り上げは、6兆7千億円を越えているのだ。
ちまの今までの160円という、しみったれた売り上げは
いったい何なんだ?
しかも、まだ268台しかやっていないのだ。
日本にはこれだけ自販の台数もあって、
ものすごいカネが動いていて、
268台で160円とは何なんだ?

もういい加減、高額を拾うべきではないか。
そう自分に言い聞かせ、今までとは違った方法をとった。
カネもケータイも持たずに、新宿へ向かったのだ。
持っているのは、家から新宿までの行きの電車代のみ。
ここで、めちゃめちゃ心配だったのは、
家から新宿は、乗り換えも多く遠いため、
510円もかかってしまうことだ。
ってことは、夢の500円玉を拾わなければ、悪夢になる。
寒風に吹かれて、家に帰れず一晩明かすのだろうか?
歌舞伎町でオヤジにカネをめぐんでもらうのか?
いやいや、そんな事にならないように絶対に拾う。
しかも最低で、510円だ。

さっそく地元の駅から電車に乗り込もうとした時、
ホームにあった「ローヤルスター」の自販で10円拾得。
じゃあ、あと500円玉が拾えれば、
またここに戻ってこられる。
と、早くもカウントダウンを始めてる始末だった。
2回の乗り換えを経て、やっと新宿に到着。
それにしても、給料日前なのにすごい人だ。
みんな、なにげにカネ持ってんだ。
これは、ちょっと期待出来るかもしれない。

さっそく、東口の新宿通りの高野側を捜索。
しかし、行けども行けども自販がない。
明治通りにぶつかるまで1台もないのだ。
これはすごく意外だった。
なんせ、新宿通りで銀貨を拾っている絵面を、
だいぶ前から想像していたのだから。
じゃあ、反対側はあるだろうと、伊勢丹側を捜索。
またまた1台もないのである。
しかし、本当は意外でも何でもないのだ。
今まで自販の生態を観てきたところ、大通りじゃなく、
小通り、強いて言えばあやしい路地に自販は生息している。
それならやっぱり、歌舞伎町の中がいいはずだ。

とりあえず、また東口の駅前に戻ったので、
南口の方へと足を運んだ。
もう、方向感覚がなくなって、かなりぐるぐる回った。
馬券の予想屋がいたりで、妙な盛り上がり方をしていて、
「新宿の素顔」を見たような気がした。
デパート戦争は仮の姿で、ここが本来の姿なんだ、と。

そのまま、甲州街道沿いを歩き、プロのヂミやとご対面。
今回は、前に師匠と出会った時の感動とは違うものだった。
感動よりむしろ、ライバル意識を燃やしてしまい、
その人に付いて行くのではなく、
私が先に行って自販をチェックした。
縄張りを侵されたような、何だか「あせり」があった。
こうやって、今もライバル達に拾われているのだ。
そう思うと、その人に付いて行ってなんて馬鹿なことは、
とうてい出来なかった。

今度は、とっておきの歌舞伎町へ向かった。
南口から歌舞伎町へはかなり迂回したのだろう。
方向音痴な私には自分がどの辺にいるのか分からなかった。
とにかく、「さくらやホビー館」前の自販だ。
13台も並ぶ大型自販コーナーで、30円拾った。
ちょっと観察すると、そこの自販はすごい売れ行きで、
私が30円拾ったジュースの自販なんかは特にすごかった。

ようやく、歌舞伎町らしいところへ入って行き、
コマ劇前には、かなり人はいたのだが、
区役所通りの方はあまりいなかった。
夜中の歌舞伎町には来るが、夕方の歌舞伎町は知らない。
ちょっと戦略ミスかとも思ったが、台数はかなりある。
なんせ、歌舞伎町の中だけで、133台もあったのだ。

とにかく歩いた。
ホテル街、フーゾク街を。
ホテル街なんかは、若いカップルが安いホテルを
探し歩いているのに、私は一人で小銭探しだ。
フーゾク街に至っては、田舎から上京して、
店探しをしているお姉ちゃんの様でもあった。
おそらく私は、せつない目をしていたのだろう。
ここで言うせつない目とは、「焦って何かを求める目」だ。
やはり相当焦ってたとは思う。
よく、釣り銭受けに手を入れた瞬間、
「ちぇっ」と舌打ちをしていたり、ため息をついたりと。

気分転換に、私の好きな区役所通りへ行った。
人通りは少なかったが、その分、自販機が目立つのだ。
ふいに、あるタバコ屋の自販に目がとまった。
私はいつもの調子で釣り銭受けに手を入れた。

すると、複数の金属片が私の指先に触れた。
「えっ? ま、まさか」。
ヂミやのハートがざわめきだした。
恐る恐るもう一度確かめてみる。
ジャラ、ジャラ。
ま、間違いない。すばらしく高額な釣り銭が、
この自販機に忘れられている。

その高額の釣り銭をわしづかみにした私の手は
グッショリと汗に濡れてきた。
おまけに、しっかりと釣り銭を握っているので
指がつっかえてしまった。我ながら情けない。
早く確かめねば。ハヤル気持ちを押さえて
釣り銭を取り出すと、私はゆっくりと手を開いていった。

すると、なんと、外灯に鈍く光る銀色硬貨が
すぐに私の目に飛び込んできた。
これほどの至福が今までにあっただろうか。
今までの、シケたゼニのチャリンチャリンとはわけが違う。
夢にまでみた、500円玉が入っていたのだから。

何なんだ、あふれんばかりの小銭だ。
私はその大金を、右手の手のひらに並べて数えた。
500、600、700、10、20。
う”おっっっーーー、720円もあるぅぅぅ。
もう、感覚的には7万2千円だ。
私にはその位の重みがあったのだ。
きっと、たばこを買った人が
釣り銭をそっくりそのまま忘れていったのだ。
たばこはさしずめ、マールボロなどのヨウモク系だろう。
「ヨウモクさん、ありがとう」。
私は心のなかでつぶやいた。

さあ、無事拾えたことで、かなり安心していたが、
今度は目標の300台をこなさないと帰れないのだ。
また自販を求めてさまよい始めた。
すると私が拾いに行こうとした方向から、
さっきのヂミやが来たのだ。これには参った。
「あ〜、また邪魔されたよ」と、自分勝手な事を思った。
むしろ、邪魔されてるのは彼の方だろう。
そして、疲れているはずなのに、
一生懸命に小銭を探す姿に、触発された。
私のような、おちゃらけヂミやとはわけが違う。
やはりプロなのだ。

でも、私も私なりに頑張ろうと、
細い路地を靖国通りへ向かって歩いた。
途中、「あかるい花園一番街」という飲屋街を発見した。
三番街と五番街もあって、
昔ながらの飲み屋がぎっしり並んでいた。
なんだかイイモノをたくさん見つけた気がして、
新宿での300台は終了した。
こうして、
「拾えなきゃ帰れない〜新宿サバイバル〜」は幕を閉じた。

なんだか、新宿でのヂミや活動にはハマッてしまいそう。

【ヂミやプライベート情報】
98年末に伊豆旅行に行った時、
伊豆高原駅のキップ売り場で、
100円拾っていたことをこの場をかりて、報告致します。

【今日の様子】
場所:新宿
時間:13:00〜19:00
天気:晴れ
気温:やや暑い(着込みすぎた為)
人通り:買い物客がそうとう多し
台数:300台
金額:860円
残り台数:433台
只今の金額:1020円(ものすごく記録更新!!)

1999-01-30-SAT


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