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ひどい目日誌。
授業料を払ってこきつかわれる
わたしたちの記録。

担当:ハリグチ
試練の章


●メール・ドーピング
みなさんこんにちは。ムーン・ハリグチです。

いやびっくりしました。
このコーナーへみなさんから感想メールを
いただけるなんて。
それも何通も。
ホントにありがとうございます。

これはしかしアレですね、もう麻薬ですよ麻薬。
いやドーピングの方が近いかな。
こう、ホントに効くんです。
いくら疲れてぐったりしていても、メールが来たとたん、
目はパッチリ開き、頭は冴えわたり、体中に力が漲ってくる
のがはっきりとわかります。
大げさに言ってるんじゃないですよ。ホントなんだから。

みなさんとのこういう関係がエスカレートしていくと
どうなるのか、正直言ってぼくは恐いです。
ぼくらが記事を書く→みなさんが感想を書く→
よしがんばろうとまたがんばって記事を書く→
それ見てさらにみなさんが感想を送ってくれる→さらに...

こりゃもう、どこまでいってもキリがありません。
だからこれ、最後はどうなるのかというと、
モニタに向かってぼくらは記事を書き続け、
みなさんはメールを送り続ける、という壮絶なことに
なるんじゃないでしょうか。
双方ともモニタに向かったまま、ひからびてミイラになる
という、世界初のメール心中という最悪の事態さえ
考えられます。
そのとき警察の捜査はいったいどう...

まあそんなこたぁいいとしても、
でもdarlingをはじめとする正式スタッフの方々は、
ぼくの見たところ、もはやみなさんからのメールに
依存せずにはおれない体になっていると思いますよ。
「ほぼ日殺すにゃ刃物はいらぬ。
メール送るのやめりゃいい」
いやほんとにやめないでくださいね。
スタッフにとっての、最大の活力源なんですから。

●自らへの試練
しかし、みなさんからの激励に甘えているばかりでは
いけない。
ぼくらひどい目隊は自らに試練を課すことにしました。

出るというじゃないですか、鼠穴に。
もぎ・カエル部長の言うには、
「ピタピタくん」と「かさかさくん」という2人がいて、
深夜、ピタピタ、かさかさという足音をさせ、
明らかに人がいる気配がするらしいのです。
ぼくは最初「またまたぁ」と思ってたんだけど、
本当らしいです。

鼠穴探検をその任としているひどい目隊としては、
放っておくわけにはいきません。

出るのか出ないのか?
確認するのは義務とさえいえましょう。
でもそのためには3人で一度鼠穴に泊まり込む
必要があります。

が、これはコワイですよ。はっきり言って。
そういうのが特に苦手なルーキーさんなどは
「ぜったいにイヤだ」と申しております。
ぼくだってできることならやりたくない。

そこで。
判断をみなさんにお任せすることにしました。
みなさんからの「やれ」というメールが、
来週月曜日の時点で100通以上あったら、
やることにします。
他の2人も承認済みです。
さてどうなりますか。

●ほぼ日の暗黒面
発端はこうでした。

鼠穴に着いて、やれやれ喉がかわいた、と
ダイニングでお茶を飲んでいたんです。
するともぎ・カエル部長がニヤリと笑いながら
おっしゃるんです。
「それ、割ったら2万円だからね」
何かと思ったら、
お茶を入れたコップのことだと言うのです。

おどろきました。
たかがコップがどうして...と思ってよく聞いてみると、
そのコップはバカラという、おフランスのブランドもの
で、基本的にお客様用らしいのです。


右が問題のバカラ。こうして見ると
ちがうけど、カゴに乱雑に積んであったら
わかんないですよ、こんなもの


へえ、これがなあ、確かに普通の安物よりは重量感は
あるし、高級に見えないこともないけど...
と思いながらその場は終わったんですが、
あとで腑に落ちない点があることに気づきました。

そのバカラは流しの水切りカゴの中に、ぼくらが使っていい
無名コップにまぎれて置いてあったのです。
ぼくが何気なく取ったとしても、不思議はないでしょう?

そんな大切なコップなら、洗ったらすぐに拭いて、
食器棚にしまうのが普通ではないでしょうか。
それにあのもぎ・カエル部長の意味ありげな笑み。
これはいったいどういうことなのか...
ぼくの頭に疑念が生まれた瞬間でした。

そしてその夜、ゴミ出しを手伝っていたときのことです。
ゴミ袋をダイニングに集め、さてこれから外に
出しにいこうかというとき、フクダさんが上品にこう
おっしゃいました。
「シールはもうはったのぉ」
え?シール?
「事業者が出すゴミには、このシールをはらないと
いけないのよぉ」


これが問題のシール。ちゃんとほぼ日名義になっている。
退鼠のときは記念として1枚ちょろまかして...
いやいかんいかん


事業者、つまり会社はコンビニなんかでこれを購入し、
貼らないと、ゴミを持っていってもらえないらしいのです。
そんなこと、ぜんぜん知りませんでした。
あーそうだったのか。なるほど。と思って納得してたら、
さらにフクダさんは、こうおっしゃいました。
あくまでも上品に、そしてにこやかに。
「会社に勤めてるとそういうこと、わかんないのよねぇ」

うっ。
上品な口調だけに、逆に木刀で正面から思い切り
殴られたような衝撃でした。
いや少し大げさですが。

しかし待てよ。
そういう制度があることを知っている、知っていないに
関わらず、シールの保管場所をぼくは知らないわけです。
なのに、シールを貼ったかどうかを
ぼくに確認するというのは...

あのう、これらのことは、もしかしたら一種のいじめ...
いやまさか、そんなはずはありませんよねえ。
いやしかし、うーんまさかなあ。

つらい目とは、もしかしたら仕事面だけではないのかも...
そんな思いが頭をかけめぐる、春の宵でありました。

2000-04-14-FRI

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