もくじ
第1回第1回 2016-06-28-Tue
第2回第2回 2016-06-28-Tue

広告制作11年目、1児の父。立浪和義が晩年、ネクストバッターズサークルに立ったときのナゴヤドームの歓声が好きでした。

かーくんの、とくべつな、ふつうの日。

かーくん、ガチャガチャしてもいい?
いいよ。どれにするの。
これ、4だからだめ?
ほんとだ。4だけど、きょうはとくべつに、
してもいいよ。
えー?いいの?
とくべつな日だから、いいよ!
やったー。

息子は、小銭を入れるとカプセルに入った玩具が出てくる、
「ガチャガチャ」が大好きだ。
4というのは、400円のもの、という意味だ。

ふだんは100円か200円のものだけ許可している。
それ以上の価格の製品も並んでいるが、高価なため、
「1か2のやつしかだめだよ」と言い聞かせてある。
数字はよめるので、価格の表記を見て、
自分で、ほしいものを選ばせている。

400円もするガチャガチャは、値段だけあって、
よくできている、長くあそべそうな玩具だった。
手にして、興奮して、はしゃいでいる。

その後、「アイスのしゅわしゅわ、のみたい」と言う。
クリームソーダのことだ。近くの喫茶店へ来た。

食品などの買い物を済ませ、帰ろうとしたところ、
息子が「タクシー乗りたいんだけど」と言い出す。

彼は、乗り物が大好きだ。
電車やバスはもちろん、乗り物全般が好きなようだ。
救急車や消防車だけでなく、タクシーも大好きだ。

ただ、バスや電車を差し置いて乗ることはそんなになく、
タクシーは「あめがふってて、にもつがたくさんのときに、
おかねがあれば、乗ってもいい」と言い聞かせてある。

まあ今日はいいかな、ということで、
とくべつだからね、と言い聞かせつつ、乗車する。

すっかり日も暮れて、疲れて眠ってしまうかと思いきや、
目を輝かせながら、おとなしく座っている。うれしそうだ。

この「とくべつないちにち」は、
日が暮れるまでと取り決めていたので、
これでおしまいだ。

家へ帰って、晩御飯をみんなで食べた。

***

この日の前日、妻とこんな会話をした。

かーくん、すごいこと言ってたよ。
なになに。
「じいじ(祖父)にあいたいなー」って。
えー!
そうなる可能性、あるかもよ。
名古屋か‥‥
新幹線のチケット、買う準備しとかないとね。
それはそれで、おもしろいけどね。
あと「ピザと、ケーキたべたい」って。
やりたい放題かよ。

僕も妻も、実家は愛知県のはずれにある。
朝いちばんに「じいじにあいたい」などと言われたら、
新幹線にのって祖父のところへ向かう覚悟はできていた。

ただ実際には、近所で済んだし、
驚くような展開にはならなかった。
なんなら、こういう過ごし方をする休日はよくある。

でも、息子とたくさん話をできたのは良かったし、
夫婦で事前に色々な可能性を想定した会議は面白かった。

ふつうの1日だったけど、
こうしてふりかえりながら記事の形にすることは、
決してふつうではなく、なかなかおもしろい体験だった。

翌日は、近所のお祭りに出かけた。
あれがほしい、これがほしいと言う息子をたしなめると、
「とくべつな日じゃないから、しかたないね」と言うので、
ひとしきりほめて、頭をなでてやった。
なかなか、わかっている。

ほしがったいろいろの中から、
「いちごあめ」を買ってやった。

またいつか、ほとぼりのさめた頃をみはからって、
「とくべつな日」をやってみようとおもっている。

(おわります。お読みいただきありがとうございました!)