- 子
- かーくん、ガチャガチャしてもいい?
- 僕
- いいよ。どれにするの。
- 子
- これ、4だからだめ?
- 僕
- ほんとだ。4だけど、きょうはとくべつに、
してもいいよ。 - 子
- えー?いいの?
- 僕
- とくべつな日だから、いいよ!
- 子
- やったー。
息子は、小銭を入れるとカプセルに入った玩具が出てくる、
「ガチャガチャ」が大好きだ。
4というのは、400円のもの、という意味だ。
ふだんは100円か200円のものだけ許可している。
それ以上の価格の製品も並んでいるが、高価なため、
「1か2のやつしかだめだよ」と言い聞かせてある。
数字はよめるので、価格の表記を見て、
自分で、ほしいものを選ばせている。
400円もするガチャガチャは、値段だけあって、
よくできている、長くあそべそうな玩具だった。
手にして、興奮して、はしゃいでいる。
その後、「アイスのしゅわしゅわ、のみたい」と言う。
クリームソーダのことだ。近くの喫茶店へ来た。
食品などの買い物を済ませ、帰ろうとしたところ、
息子が「タクシー乗りたいんだけど」と言い出す。
彼は、乗り物が大好きだ。
電車やバスはもちろん、乗り物全般が好きなようだ。
救急車や消防車だけでなく、タクシーも大好きだ。
ただ、バスや電車を差し置いて乗ることはそんなになく、
タクシーは「あめがふってて、にもつがたくさんのときに、
おかねがあれば、乗ってもいい」と言い聞かせてある。
まあ今日はいいかな、ということで、
とくべつだからね、と言い聞かせつつ、乗車する。
すっかり日も暮れて、疲れて眠ってしまうかと思いきや、
目を輝かせながら、おとなしく座っている。うれしそうだ。
この「とくべつないちにち」は、
日が暮れるまでと取り決めていたので、
これでおしまいだ。
家へ帰って、晩御飯をみんなで食べた。
***
この日の前日、妻とこんな会話をした。
- 妻
- かーくん、すごいこと言ってたよ。
- 僕
- なになに。
- 妻
- 「じいじ(祖父)にあいたいなー」って。
- 僕
- えー!
- 妻
- そうなる可能性、あるかもよ。
- 僕
- 名古屋か‥‥
- 妻
- 新幹線のチケット、買う準備しとかないとね。
- 僕
- それはそれで、おもしろいけどね。
- 妻
- あと「ピザと、ケーキたべたい」って。
- 僕
- やりたい放題かよ。
僕も妻も、実家は愛知県のはずれにある。
朝いちばんに「じいじにあいたい」などと言われたら、
新幹線にのって祖父のところへ向かう覚悟はできていた。
ただ実際には、近所で済んだし、
驚くような展開にはならなかった。
なんなら、こういう過ごし方をする休日はよくある。
でも、息子とたくさん話をできたのは良かったし、
夫婦で事前に色々な可能性を想定した会議は面白かった。
ふつうの1日だったけど、
こうしてふりかえりながら記事の形にすることは、
決してふつうではなく、なかなかおもしろい体験だった。
翌日は、近所のお祭りに出かけた。
あれがほしい、これがほしいと言う息子をたしなめると、
「とくべつな日じゃないから、しかたないね」と言うので、
ひとしきりほめて、頭をなでてやった。
なかなか、わかっている。
ほしがったいろいろの中から、
「いちごあめ」を買ってやった。
またいつか、ほとぼりのさめた頃をみはからって、
「とくべつな日」をやってみようとおもっている。
(おわります。お読みいただきありがとうございました!)