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第0回お母さんは好きだけど、なりたくなかった。 2016-11-08-Tue

東京にきて4年目の関西人。
趣味は、寝ること、食べること。
ぐーたらする隙を日々探してます。

私の好きなもの

私の好きなもの

担当・ぬぅ

お母さんは好きですか?
お母さんになりたいですか?

それとこれとは別問題、と思っていた
とある娘のお話です。

お母さんは好きだけど、なりたくなかった。

わたしはお母さんが好きだ。

生まれた時からずっとお母さんが好き、な気がする。
どちらかといえばお母さんっ子だったし
お母さん好き?と聞かれるとうん!って答えられるような子どもだった。

わたしはお母さんのことは大好きだけれども
お母さんのようにはなりたくないと思っていた。

田舎から関西へでてきて、23歳で私を生み専業主婦。
これだ!という趣味もない。
今日のご飯は何にしよっかな〜と歌い、ごはんをつくる。
何時に帰ってくるん〜?と聞いて、私たちきょうだいの送り迎えをする。
買い物にいき、掃除をし、洗濯をし、エトセトラエトセトラ。
全部家族中心にまわっていた。

なんでお母さんはひとのことばっかりなんだろう。

思春期なんて自分のことが一番楽しいし、それで精一杯。
家族のために家の中に閉じこもっているなんてまっぴらごめん。

家族のために精一杯頑張るお母さんを横目に
私は将来バリバリ働くんだ!と思っていた。

お母さんという職業も
当時私が思い描いていたバリバリな職業も
どんな仕事も誰かのために存在しているなんてわかっていなかった。

それから10年。
わたしはお母さんがお母さんになった歳に東京へでてきた。
就職のためだ。結果的に「バリバリ」とした職業につくことになった。

お母さんは、私が東京で働くことには何も言わなかった。
お父さんが地元で働きよ〜って言っても、お母さんは何も言わなかった。
「東京にはまた楽しいものがいっぱいあるで〜!いいなあ!!」
むしろ東京行きを応援しているようだった。

ただ、地元を出る一週間ぐらい前のある日。
昼寝をしていたら電話の声が聞こえてきた。
お母さんが誰か親戚と話している風だった。
「そりゃあ、寂しいよ〜。できれば地元に残って欲しいなあって思ったりもするよ。心配やし。でも、頑張るって言って本人が決めたんやもん。何も言わへん。私が1番に応援せな!」

その時、ふと中学生の頃に何気なしに聞いた質問を思い出した。
「お母さんは、お母さんしてて楽しい?大丈夫?」

いま思えば失礼な質問だが
当時の私はお母さんの青春を奪ったのではないかと少し不安でもあったのだ。

お母さんは
「え?お母さんはお母さんが楽しいし、向いてるねん。天職!」

当時はふーんそっかあぐらいだった。

しかし、この電話の返事を聞いた時「かなわないな」と思った。
お母さんは、お母さんが天職だった。

働くいまお母さんが尊い仕事であることがわかる。
母親という職業は、すごく楽しくて、すごく切なくて、すごく尊い。
そしてずっと生きている限りお母さんは続いていく。

かくいう、私はお母さんという職業とはまだ違うところにいる。
子どものためにではないけど、誰かのために働いている。

いつか私も今の仕事を天職って言い切りたい。
そして、いつかお母さんになりたいと思う。