オーディション番組「ASAYAN」から
モーニング娘。が生まれた。
合格して、名前を呼ばれた女の子が
アイドルになる瞬間を見守るのはすごく不思議な感覚だった。
わたしが小学4年生の頃、『LOVEマシーン』が流行った。
学校でも、モーニング娘。が歌番組に出れば
翌朝の教室では、その話題で大盛り上がり。
「メンバーで誰が一番好きなの?」
好きなメンバーがかぶって
「わたしの方が好きだよ」って喧嘩をしている子までいた。
モーニング娘。はみんなを夢中にさせた。
わたしもモーニング娘。が大好きだったけれど、
メンバー全員が好きで
1人だけを選ぶことができなかった。
だから、その輪には入れずにいた。
好きなメンバーを想って、言い合いをしながらも
楽しそうな子たちが少し羨ましかった。
ある日、いつも一緒にいたナミちゃんの家に遊びに行くと
壁に一枚のポスターが貼ってあった。
4期メンバーが加入した
“新生モーニング娘。”のポスターだった。
ナミちゃんは「辻ちゃんが好き〜」って嬉しそうに言った。
私は、とっさに「辻ちゃんより、加護ちゃんだな〜」って
そっけなく答えてしまった。
もちろん、加護ちゃんは大好きだったし
辻ちゃんだって同じくらい大好きだった。
仲の良いナミちゃんと好きなメンバーが
かぶらないように遠慮したのか、
今でも、なんでそう答えてしまったのかわからない。
その後、ナミちゃんが
「加護ちゃんも好き」って言ってくれたので、もっと驚いた。
ナミちゃんにだったら
「わたしも辻ちゃんが好き」って言ったとしても
喧嘩にならなかっただろうな…って思った。
それから何ヶ月か経ってから行われた「シドニーオリンピック」。
テーマソングをモーニング娘。が歌っていた。
『I WISH』
“晴れの日があるから
そのうち雨も降る
全ていつか納得できるさ!
人生ってすばらしい
ほら いつもと 同じ道だって なんか見つけよう!
Ah すばらしい Ah誰かと
めぐり合う道となれ!”
デビューから2曲目にして加護ちゃんが
初めてセンターに抜擢された曲。
曲の最後の方で加護ちゃんのソロパートがある。
難しい高音パートをしっかりと歌い上げる姿は
グループでひと際目立っていた。
クラスでも“加護ちゃんが好き”っていう子が増えた。
加護ちゃんが褒められているのを聞くだけで
なぜか嬉しくなった。
気付いたら、加護ちゃんに夢中になっていた。
学校が終わると、近所の駄菓子屋で
モーニング娘。のカードを買いに行くのが
楽しみでしょうがなかった。
1枚30円で売っているカードは、袋に入っているので
中を開けるまでメンバーの誰が当たるかわからない。
当時、メンバーは10人いて
加護ちゃんのカードが当たる確立は少ないので
自分よりも先にカードを買った子が
“加護ちゃんを当てた!”って聞くと、すごく羨ましくて
その日のヒーローのように思えた。
カードの他にも楽しみにしていたのが、もうひとつある。
モーニング娘。の看板番組「ハローモーニング!」だ。
私の住んでいた宮崎では、深夜の放送だったので
毎週、父に頼んで予約録画をしてもらい
次の日、学校が終わった後に観るのを楽しみにしていた。
たまに、野球中継の延長で放送時間がずれてしまい
録画ができていないときは、あまりの悲しさで
父を怒ってしまった。
その次の週、母に聞いた話で
「お父さんが、野球の試合が延長になってないか、確認してたよ」
って言われて、やっぱり少し反省した。
中学生になってからは、インターネットで
画像をダウンロードできるようになった。
駄菓子屋にカードを買いに行くことはなくなってしまった。
モーニング娘。は変わらず好きだったけれど
部活や学校行事で忙しい毎日だった。
わたしが中学3年生になったときに
加護ちゃんと辻ちゃんがモーニング娘。を卒業した。
朝起きたら、卒業コンサートの映像がニュースで流れていた。
2人がモーニング娘。として歌った最後の曲は『I WISH』だった。
泣きながら全力で歌って踊る姿を今でも覚えている。
思えば、モーニング娘。のライブには一度も行ったことがなかった。
カードを買ったり、テレビの前で歌って踊る彼女たちを観る。
会ったことなんて一度もないのに
すごく近い存在に感じていた。
でも、モーニング娘。としての加護ちゃんと辻ちゃんに
会ってみかったなぁ、とすごく後悔した。
わたしが高校2年生になったとき、
加護ちゃんは芸能活動を休止した。
会いにいこうと思っていた“いつか”が
もう来ないんじゃないかと、ショックだった。
でも、歌うことが好きな加護ちゃんだから
きっと待っていたら戻ってくるだろうって信じることにした。
メンバーの卒業と加入を繰り返して
小学校の頃に好きだった10人のメンバーは
全員モーニング娘。を卒業した。
2014年からは“モーニング娘。 ’14”と
名前の後ろに西暦の年号を表記するようになった。
この先、10年20年30年…とグループが続いていき
いつの時代の曲であるか分かるようにするために。
今年の2月に、初めて加護ちゃんに会った。
カードでもなく、テレビの中でもなく、本物の加護ちゃん。
ソロの歌手として活動を再開して
28歳になった加護ちゃんのバースデーライブだった。
1曲目に歌った曲は『I WISH』。
目の前で、全てのパートを1人で歌っている。
自然と涙が出て
何でこんなに感動するんだろう…って思った。
やっぱり理由はわからなかった。
ライブが終わった後は、さっき目の前にいたのは
本当に加護ちゃんなんだろうか、と夢のような気分だった。
『I WISH』を初めて聞いて、好きになった
16年前のあの日からずっと
モーニング娘。は進化を繰り返しながら
いつもわたしの側にいた。
加護ちゃんが活動をしていなかった頃も
その当時のモーニング娘。のメンバーが
『I WISH』も大切に歌い継いできてくれた。
そして、来年にはモーニング娘。は結成して20年目を迎える。
この先もきっと変わらず、わたしはモーニング娘。がずっと大好きだ。