もくじ
第0回私の「好き」を創った人たち 2016-11-08-Tue

1983年長野県生まれ。
漫画好きが高じて漫画の出版社に入りますが、昨年独立。漫画のレビューを書いたり、漫画の編集、雑誌のライター、実家の漆器屋の仕事をしています。
好きなことは映画、テレビ、舞台、美術展、ライブ、お笑いを観ること。漫画を読むこと。その感想を友達と語ることです。

私の好きなもの</br>スチャダラパー

私の好きなもの
スチャダラパー

担当・miyahara

私には「好きなもの」がたくさんあります。

漫画、雑誌、音楽、テレビ、お笑い、映画、演劇……。

素敵な作品に出会うたびに高揚感を感じたり、
涙を流したり。
感受性豊かな日々を過ごしています。

好きが高じて、エンターテインメントに
関わって生きていきたいと思い、
現在ライターという仕事をしているのも
自然な流れなのかもしれません。

たくさんある多くの好きなものの中から
一つを選んでエッセイを書こうとした時、
「なぜ」好きなのかという問いに向き合うことになります。

漠然と好きだったものの理由を探すのは
まるで自分との対話のような時間でした。

それぞれを好きになった過程。
それを辿っていくと、
多くの場合そこには共通点があることに気づいたのです。

それはヒップホップグループの「スチャダラパー」。
彼らは私の価値観の基準を作った人たちでした。

ヒップホップグループが、
どのように私の人生を大きく決定付けたのか。

全てはここから始まったのです

プロフィール
スチャダラパーさんのプロフィール

私の「好き」を創った人たち

スチャダラパーを初めて知ったのは1994年。
小沢健二さんとのコラボレーション曲
『今夜はブギーバック』が大ヒットした年です。
当時、私は10歳。
「かっこいい曲だな〜」と思いながらも、
特にスチャダラパーに注目することなく
一つのヒット曲として通りすぎてしまいました。

時は流れて2000年。
高校生になった私の周囲では、
メロコアと呼ばれる音楽が大流行。
私もご多分に漏れずバンドを組んでギターを弾いて
(正確には弾くフリをして)いました。

そんなある日、家でTVをみていた時に
流れてきたあるミュージックビデオに目が釘付けに。
それが、忘れもしないスチャダラパーの
『ドリジナルコンセプト』という曲でした。

その頃はヒップホップという音楽には疎く、
早口でしゃべるような音楽というイメージしか
持っていなかったのですが、
繰り返されるホーンの音と、「ド」という言葉。
なんだかよくわからないけど「ドかっこいい!」。
そして気づいたのです。
あのブギーバックの人たちじゃん!と……。

それからというもの、スチャダラパーの過去に発表された
CDを漁るように聞き、
インタビュー記事が載っていると聞けば、雑誌を買って暗記
するように読み込む日々。
彼らのことを知れば知るほど「もっと早く彼らを知っていた
かった」「ブギーバックを聞いた時から、ちゃんと彼らの活
動を追っていればよかった」と後悔したものでした。

彼らの魅力は、やはりその音楽性。
かっこいいビートに、おもしろくてチクリと刺さるような
鋭い視点の歌詞。
普通なら見過ごしてしまいそうなことを面白がるセンス。

そしてもう一つは、彼らの脱力感。
かっこつけていないのにかっこいい。
力んでないのにかっこいい。面白くてかっこいい。
そんな彼らの佇まいがたまらく好きだったのです。

好きになればなるほど、スチャダラパーを形作っているものを
知りたくなります。
スチャダラパーが影響を受けた音楽はなんなのか。
好きな映画は?漫画は?
歌詞に出てくるこのフレーズはどんな意味なんだろう。

彼らのことをもっと知りたいという思いから
海外のヒップホップを聞き、
宮沢章夫さんのエッセイを読み、
『ガロ』を知り、
歌詞に登場する漫才を見ました。

そして、スチャダラパーに心酔したように、スチャダラパー
が好きだというものにもどんどんはまっていったのです。
一気に私の世界が広がっていきました。

彼らは私にとって、かっこいいミュージシャンであるのと同
時に、絶対に信頼できる「面白いこと紹介業者」でした。

スチャダラパーが面白いというものは絶対に面白かったのです。

「面白いこと紹介業」。
思えば、私は彼らのこのスタンスに影響され今生きています。
漫画の出版社に入り、現在はライターをしているのは、
そんな彼らの生き方に憧れていたからなのです。
私も世の中の面白いことを少しでも多くの人に伝えたい。
気づけば、そんな思いが生まれていました。

彼らが与えてくれたものは、果てしなく大きい。

いま私に好きなものがたくさんあるのは、
スチャダラパーがたくさんの面白いことを教えてくれたから。

大事な友達と仲良くなれたのも、音楽や映画をみて生き
ててよかったと感動できるのも、全てあの日スチャダラパー
に出会えたから。

面白いことを教えてもらったおかげで、毎日楽しく生きている。

そんなスチャダラパーに感謝しつつ、
いまでも相変わらず日常を面白がり、違う角度から物事を見ることを
提示してくれる彼らのように、私はなりたいのです。

「世間に風穴を 空くかな でもやるんだよ」
(『ノーベルやんちゃDE賞』)。

私はこれからもずっとこの言葉を胸に、彼らの背中を追い続
けるんだと思います。