もくじ
第1回『朗読が好き』の再発見。 2016-11-08-Tue
第2回声優さんの養成所へ行こう! 2016-11-08-Tue
第3回そして初めてのお仕事は。 2016-11-08-Tue

文章を書くことが好きな人です。
名前を出して文章を書いたり、
名前を出さずに文章を書いたりして生きています。
特技はお箏を弾くこととタロット占い。
沢山ペンネームを持っているので、
色々な名前で呼ばれます。
とても陽気なお姉さんで、
仕事をしながらすぐ歌を歌ってしまうのが欠点。
最近の趣味は、
『ドコノコ』で、
飼っている犬の写真をアップすること。
うちの犬は本当に可愛い。

私の好きなもの「朗読」

私の好きなもの「朗読」

担当・山口じゅり

第2回 声優さんの養成所へ行こう!

◆養成所へ行くことを友達に報告してみました◆

思ったことをすぐ友達に報告する私は、
「ナレーションをしてみたり、
声優さんをやってみたりしたいから、
養成所へ行くよ」
と友達に報告してみました。
 
友達の反応は大きく分けると3パターン。

その① 心配される。
「えっ・・・・その歳で・・・・?」
「急にどうした、正気か・・・・?」
 
その② 笑われる。
「あははははは、またまた~。
今度はなんだ、また突飛だな」 

その③ 応援される。
「へぇ~、面白そう。
なんか楽しいことがあったら報告よろしく、頑張れ!」

参考までに、割合は①、②、③が、5:4:1です。

たまにですが、
「じゅりさんはどういう基準で養成所を選んだんですか?」
ときかれます。
正直に答えますと、
『好きな声優さんが先生をやっていたから』
という大変ミーハーな理由で養成所を選びました。
ミーハーな理由ではありますが、
実際好きな人から教えてもらえるって、
勉強のモチベーションがめっちゃ上がるので、
個人的にはとてもお勧めです。

◆人生初のオーディションで震える◆

そんなわけで私は養成所へ行くことになったのですが、
養成所では、入所前にオーディションがありました。
そもそも私はオーディションなんて、
人生で一度も受けたことありません。
『一体何をするんだろう?私にできることだろうか?』
と多少心配していましたが、
オーディションは、
それほど長くない文章の音読でした。
これなら私でもなんとかできそうです。
そして、やってみた結果は・・・・

えー、結果は正直に申し上げて、
とても良くありませんでした。
かなり良くないことだけはわかるのですが、
具体的に何が良くないか、自分でも、
全くわかりませんでした。
そして何ができていないかが自分で全くわからない、
ということは、私とんでもなく読むの下手なんじゃ、
と私は震えました。

何だか最初から厳しい道になりそうです。
でも・・・・好きだから、頑張ろう・・・・、
と私は思いましたが、前途多難な予感がします。
かくして私の養成所での勉強は始まったのでした。

◆やることがたくさん!体力づくりに暗記、滑舌練習◆

養成所に行くのは、とても楽しかったです。
そもそも好きな先生がいるわけですから、
授業を受けるたび
「先生いい声・・・・」
と毎度うっとりしていました。
あ、そういうことじゃなくて勉強しなさいですよね。
いえいえ、ちゃんと勉強もしていましたよ!

良い声を作るため、やらなければいけないことって、
いろいろあるのですが、
その一つが、体力づくりの為の運動でした。
声を仕事にする人は、基礎体力が重要だったのです。

声を良くするために、運動するなんて、
まったくの予想外です。
朗読をするのに、どうして体力や筋力がいるのでしょうか。
朗読は座っていたってできるじゃないですか。
でも良く考えれば、音楽で声楽をやっている方とか、
めちゃくちゃ腹筋背筋鍛えてますよね。
声を出すことは体を使うことで、
そうであれば、
体を作ることは大事になってくるんでしょう。

というわけで、運動をしなければいけません。
が、私にとっては、この体力づくり、なかなか大変でした。
そもそも私は運動が大の苦手。
学生の頃も、体育は5段階評価の中で、
2以上とったことがありません。
体育で2というのは、実質1だけど、
あまりにも頑張っているし、
かわいそうだから2にしてあげよう、
という先生の温情による2です。
本当に私、運動音痴だったんです。
私は苦手なことも頑張る方なので、
体育も運動音痴なりに精いっぱい頑張りましたが、
それでも2・・・・。
運動下手で運動が苦手。
そんな私のような人は、
そもそも運動の仕方がわかりません。
最初は自分であれこれやってみましたが、
あまりにわからなすぎて、
仕方がないのでジムに通って、
運動の仕方を教えてもらうことにしました。

しかし、ここでも問題がありました。
私自身が、ジムに通うのをサボりがちに・・・・。
そりゃそうだ、そもそも私は運動が好きではないのです。
であれば、色々と理由を付けてジムをサボるわけです。
それに、おなごは筋肉が付きにくい。
よって成果がすぐに見えない。
成果が見えないとだんだんやりたくなくなってくる。
でもそんな甘えたこと言ってる場合じゃありません。

『意思の力で、自分に勝てそうにない・・・・』

自らの弱さを悟った私は、
一人暮らしの自宅のガス契約を解約しました。
ははは、ガスが使えなくなったということは、
自宅のお風呂に入れないということです。
どうしてもお風呂に入りたかったら、
ジムに併設してあるお風呂に行くほかなくなったのです。
そうすると簡単です。
お風呂に入るためにジムに行く、ジムに行けば運動する。
結果、毎日運動をするというサイクルができました。
ガスの契約を解除したのは、我ながら名案でした。

体力づくりの他にも、やることはたくさんありました。
その一つが暗記です。
養成所では、滑舌の練習のために、
思いのほか暗記する文章が多いのです。
それだけではなく、
言葉のアクセントの場所も暗記が必要で、
これもなかなかに量が多いのでした。

養成所に一番最初に行ったとき、
受付にいた声優のお姉さんに
「声優さんになるために、
絶対やらないといけないことってありますか?
良かったら教えて下さい」
とさり気なくきいていたのですが、
その時に
「外郎売(ういろううり)っていうのは暗記しないとだめよ」
と言われたことを覚えています。

『外郎売ってなんだろう?』
私は調べてみました。

これです→外郎売(ういろううり)

なっが!
長いです!!
長いですよ!!!
しかも、外郎売は、元は歌舞伎の一八番といわれるもので、
現代語ですらありません。
台本を覚えたこともなく、
そもそも何かまるっと暗記したこともなかった私は、
その長さにぞっとしました。

しかし、良く考えれば、今までの長い人生で、
私は多分最低でも、
500人くらいは人の名前を憶えているわけです。
一人につき4文字としても、
人の名前を500人分覚えられたという事は、
つまり2000文字くらいの暗記ができているということ。
それを考えれば、2000文字くらいの外郎売だって、
理屈上、覚えられるはずです。

それにもう一つ、
口を動かしてしゃべる、ということは
口の周りの筋肉を動かすという事でもあります。
筋肉を動かす事は、脳の働きでいえば、
運動をつかさどる小脳の管轄です。
それがなんだ、と思われるかもしれませんが、
この小脳の管轄であるということは、
とても大切なことです。

小脳は一度やった筋肉の動きを自動で、
意識しなくても繰り返してできるようにするところです。
みなさん逆上がりをしたことがあるでしょう?
あれはできるまでは苦労しますが、
出来た後にできなくなった、ということは無いですし、
逆上がりってどうやってやるっけ?
って考え込むことも、無いですよね。
つまり、小脳が覚えちゃったので、
記憶を使わなくても、特に考えずにできるわけです。
あるいはピアノを弾く時、
良く練習して、暗譜して弾けるようになった曲は、
別のことを考えたり、
しゃべりながらでも弾けたりします。
これも、小脳がピアノを弾く動作を、
体の動きとして覚えてしまっているので、
記憶に頼らなくても演奏できるんですよね。

朗読も、口の筋肉を使う、
運動の一種とも言えるでしょう。
つまりこれも小脳の管轄、
何度も繰り返し練習して、
記憶から小脳の運動に移行できれば、
特に思い出そうとしなくても、
スムーズにできるようになるはずです、
・・・・多分。

というごたくはともかく、私はやりました。
そしておおよそ2週間後、
すっかり外郎売を暗記しました。
『私も意外と覚えられるものだなぁ』
と、自分にちょっと安心したことを覚えています。

他にも、
『つっかえずに文章を読み通すことと、
滑舌よく読むことは必須です』
と養成所でよく言われていました。

これについては、上手くなりたいなら、
もうただひたすらに初見の文章を、
読んで練習するという事につきます。
個人的には、読んで5分~10分ほどの文章が、
練習にはちょうどいいかな、と思います。
色々な新聞の社説なんか、
ちょうどいいかもしれません。
私は、槙野さやかさんという方が書いていらっしゃる、
『傘をひらいて、空を』
というブログの中にある文章を、
練習のために読んでいました。
どれも朗読して10分かからないくらいの小話で、
練習にうってつけでしたし、
それに私は書かれている文章がとても好きだったので。

おおよそ養成所へ行って、
半年くらいたったころから、
前に比べて、びっくりするくらい、
何を読んでもつかえなくなっていました。
滑舌も幾分ましになりました。

養成所に入る前、田中君に言われた、
『養成所にいったら、言われた通りに必ずやるんだよ』
という言葉が脳裏に浮かびました。
言われた通りに必ずやるのって、とっても大変だ・・・・
だが!
結果もでるんだな、と私は嬉しさと一緒に、
彼の言葉を思い出していました。

(第3回『そして初めてのお仕事は。』へ続きます)

第3回 そして初めてのお仕事は。