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第0回21歳のクリス・ガードナー 2017-04-18-Tue

フリーランスのライター・編集者。
福岡県北九州市出身、東京都中野区在住。

ぼくの好きなもの</br>中野ブロードウェイ

ぼくの好きなもの
中野ブロードウェイ

担当・石川優太(yutaishikawa)

上京して、もうすぐ2年が経つ。

ぼくのまわりの環境は、いぬの年齢のように早くすすんでいる。

それでも、ずっと変わらない「中野ブロードウェイ」が、好きだ。

ぼくの好きなものがたくさんつまっている。

どんなときも、あたりまえのように、ぼくを受け入れてくれた。

21歳のクリス・ガードナー

2015年6月。ぼくは東京は新宿に上京した。

上京のきっかけは、スマホアプリをつくる仕事にさそわれたからだった。

新宿で家賃10万円のマンションをかりて、

自宅と会社を行き来しながら、コツコツ仕事にはげむ日々。

ただ、ホームページしかつくってこなかったぼくには、むずかしかった。

1ヶ月もしないうちに、会社にいけなくなった。

日に日に気持ちがまいってきたのだ。

夏がやってくるころ、ぼくは会社に「もう、来なくていい」と言われてしまった。

家もなく、仕事もなかった。

仕事を失った。

さらに、家賃を払えなくなったので、家を追い出された。

あてはない。めちゃくちゃ絶望。

じりじりと鳴く、蝉の声をききながら、

ひとつきぶんのお給料をもって、

中野駅にむかった。

なんだか、すくわれそうな気がしたからだ。

中野ブロードウェイとの出会い

北口改札を抜けると、汗だくだくのおねえさんがティッシュをそえて迎えてくれた。

ポケットにおさまる恩恵をうけつつ、「今日の宿」をさがす。

お金はないけど、時間はあった。

日中はほとんど、中野ブロードウェイを徘徊していた。

アニメ、漫画、ゲーム、古着、音楽、電子機器……

どのジャンルも大好きなぼくは、退屈しなかった。

けれど、ここは”目的地”ではないことに気づく。

永遠に未完成のままでいるのが自分のようで、当時のぼくにはぴったりだった。

夜になると、夜勤バイトに勤しんだ。

明け方、中野サンプラザのネットカフェで眠る日々。

たまに、ブロードウェイに寄り添うように眠った。

都会の空は、ずっとあおかった。

「好き」を追求すると、書き手になれた

ある日、中野ブロードウェイでお店を営むおじさんに、

「どうして、このお店をやっているのか」ときいた。

そのとき、おじさんは真っ黒になった前歯を光らせてこういった。

「好きだからだよ」。

……なんかカッコいいな。自分の好きなものってなんだろ。

あ、”ここ”を拠点にして、情報発信しよう!へへーん。

中野ブロードウェイの喫茶店で、

なにかと発信していると、ライターになれた。

それから2年が経とうとしている。

ぼくのまわりはかわってしまったけど、

ここは、ずっと変わらない。

そして、今日も。