18歳で上京してから、この春で12年になった。
大学生活を送り、社会人として働くうちにうまれたのは、
もと居た地元ではなく、
「東京で過ごす自分」を普通と思えてくる感覚。
最近では帰省した時に、東京に戻ることを
「帰るね」と言ってしまったりする。
言ったあとで、
どちらが自分のホームなのだっけ、と
思う瞬間も少なくない。
地元・山形への帰省にはいつも、
東京駅から新幹線を利用している。
新幹線に乗る前、
在来線の各ホームへ繋がる中央通路や
駅ナカのグランスタなど、
大勢のひとの間を縫うようにして歩いていると、
ここには様々なひとが集まっているなぁ、と思う。
幼稚園くらいの男の子を連れながら、
大きなボストンバッグを持つお母さん。
「おばあちゃんに会ったら何て言う?」と、
孫挨拶のチェックをしている。
リュックを背負い、椅子に腰かけて、
コーヒーを飲んでいるおじいさん。
こちらはひとりなので無言。
小さなリュックだから、遠出ではないのかも。
ディズニーランドに行く女子グループ。
全員おしゃれに気合いが入っている。
お揃いのカチューシャで写真を撮ろうと盛り上がっていた。
当たり前だけど、
わたしのように帰省ばかりが目的ではない。
それぞれの理由でみんな、
東京駅からどこかへ向かったり、
どこかから東京駅へ帰ってきたりしている。
帰省当日は、乗る便を決めていないことが多いので、
山形新幹線の自由席乗り場がある
ホームの一番端まで、
様々なひとの会話の断片を耳にしながら歩く。
線路に向かい直ると、丸の内の空と、
東京駅すぐそばにある書店の丸善が見える。
ホームの屋根で額縁のように切り取られた
この景色を眺めていると、
もう少しで新幹線に乗るんだな、と実感がわいてくる。
今ではよく帰省するようになったが、
上京当初はほとんど帰らなかった。
山形県出身のわたしは、中学生ごろから
テレビや雑誌でみる東京の風景・人々に憧れるようになった。
ここにいては感じられない、
東京の街の匂いはどんなのだろうと考えていた。
高校生になると、
大学は絶対、関東圏に行きたいと心に決め、
横浜の大学を受験し、上京した。
大学は、横浜は、東京は、
想像どおりの刺激あふれる場所だった。
山形にいては出会えなかったような、
個性的で、魅力ある新しい友人たち。
現実に行ける距離にある、
憧れのショップやカフェ、美術館。
すべてが新鮮で、何を目にしても面白く、
自分の世界が広がっていく感覚。
ずっとここにいられたらいいと思った。
どきどきしながら街を歩けることが
嬉しくて、仕方なかったのだ。
(つづきます)