『最強のふたり』(原題: 『Untouchable』)は、
2011年公開の、実話を元にしたフランス映画だ。
事故により首から下が麻痺してしまい、
車いすで生活している大富豪フィリップ。
スラム街出身で、
フィリップの介護をするために雇われた黒人青年のドリス。
全く違う境遇の二人の友情が描かれている。
僕は映画はあまり見ないのだが、
たまたまみたこの映画はすごく気に入って、
DVDも買って何度も見た。
この映画をみるときにいつも、
ああここだ、と思うシーンがある。
自宅にオーケストラを招いての、
フィリップのお気に入りのクラシックの演奏会が終わった後、
「今度は俺のお薦めを聞いてくれ」と、
ドリスが自分のiPodからお気に入りの音楽を流す。
『アース・ウィンド&ファイアー』の曲だ。
「別モノだろ」、といいながら踊りだすドリス。
フィリップが制止しても止まらない。
「誕生日だ 踊ろう」
「フィリップの誕生日だ」
最初は見守るだけだった周りの使用人たちも、
楽しそうに踊るドリスと一緒になって踊りだす。
最初は怪訝な顔をしていたフィリップも、
目を細めて嬉しそうだ。
このシーンでグッときて、
気づくと泣いている。
糸井さんの書いた、
「ちょっと低いところで落ち合おう」
というコラムを思い出す。
同じように「さくら」ということばをつかっていても、
日本人の「さくら」にこめた意味と、
アメリカ人の「SAKURA」に対するイメージはちがう。
それでも、「さくらは、いいですねぇ」ということで、
コミュニケーションは成立するものだ。
そして、そのコミュニケーションは成立はしているけれど、
「ちょっと低いところ」でのものだ。(中略)
なにがなんでも「高いところ」を尊しとする考えは、
けっこう魅力的に映るものだ。
でも、その尊さを守ろうとして、
息を止めてしまうことよりも、
ぼくらは「ちょっと低いところ」で、
異種と、異文化と、異人種と、いっしょに歩いていくことが
大事なのではないだろうか。
ほぼ日刊イトイ新聞-ダーリンコラム より
いろんなことが違っても、
上機嫌であることだったり、
嬉しそうに、楽しそうになにかをやることは、
たくさんの人が惹きつけられる要素があるんじゃないだろうか。
そこなら、いまよりもっと多くの人と
落ち合えるんじゃないだろうか。
そこでも、一番大事な気持ちは、
きっと伝わるんじゃないか。
このシーンをみているとそんな気がしてきて、
すごく救われた気持ちになる。
僕は相変わらず、仕事でもそれ以外のことでも、
よく悩む。
たいてい、自分でいろいろこねくり回して、
余計なものがたくさんついてわかりづらくなっているけど、
その原因はほとんどが、相手の気持ちがわからなかったり、
自分の気持ちが伝わらないことだったりする。
そんなときでも自分から、楽しく上機嫌にやれる人でありたい。
うまく踊る自信はまったくないけど、
一番最初に、一番楽しそうに踊りだす人であれたらと思う。
そんなことを考えているうち、
またストーリーに引き戻され、
それから後もいろいろなことが起こる。
でも、見終わった後には間違いなく元気が出ている。
そんな映画です。
ぜひ、観てみてください。
『最強のふたり』
DVD&ブルーレイ発売中
発売元:ギャガ
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