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第1回私の好きなもの 『最強のふたり』 2017-04-18-Tue

コンテンツを作るとはどういうことなのか、考えたくて参加しました。できることを、精一杯がんばろうと思います。どうぞよろしくお願いします。

私の好きなもの</br>『最強のふたり』

私の好きなもの
『最強のふたり』

担当・志谷啓太

「好きなもの」を人に紹介するのは、
ちょっと緊張する。

『糸井さん、僕を面接してください』
というほぼ日のコンテンツで、
「僕の好きなものはコーヒーです!」と、
糸井さんに話したときのことを思い出すからだ。

あの時は就活生で、コーヒーが好きな気持ちもたしかにあったけど、
そこに「選ばれたい盛り」の僕の他の思いが混ざりすぎていて、
きちんと好きなものの話はできていなかったと思う。

今回はとにかく、書きたい!と思えるような、
情熱をもって話ができるものにしよう。

そういうものを探したときに、
頭に浮かんだのはこの映画の、このシーンでした。

『最強のふたり』(原題: 『Untouchable』)は、
2011年公開の、実話を元にしたフランス映画だ。

事故により首から下が麻痺してしまい、
車いすで生活している大富豪フィリップ。
スラム街出身で、
フィリップの介護をするために雇われた黒人青年のドリス。
全く違う境遇の二人の友情が描かれている。

僕は映画はあまり見ないのだが、
たまたまみたこの映画はすごく気に入って、
DVDも買って何度も見た。

この映画をみるときにいつも、
ああここだ、と思うシーンがある。

自宅にオーケストラを招いての、
フィリップのお気に入りのクラシックの演奏会が終わった後、
「今度は俺のお薦めを聞いてくれ」と、
ドリスが自分のiPodからお気に入りの音楽を流す。
『アース・ウィンド&ファイアー』の曲だ。

「別モノだろ」、といいながら踊りだすドリス。
フィリップが制止しても止まらない。

「誕生日だ 踊ろう」
「フィリップの誕生日だ」

最初は見守るだけだった周りの使用人たちも、
楽しそうに踊るドリスと一緒になって踊りだす。

最初は怪訝な顔をしていたフィリップも、
目を細めて嬉しそうだ。

このシーンでグッときて、
気づくと泣いている。
 
 
 
糸井さんの書いた、
「ちょっと低いところで落ち合おう」
というコラムを思い出す。
 
 

同じように「さくら」ということばをつかっていても、
日本人の「さくら」にこめた意味と、
アメリカ人の「SAKURA」に対するイメージはちがう。
それでも、「さくらは、いいですねぇ」ということで、
コミュニケーションは成立するものだ。
そして、そのコミュニケーションは成立はしているけれど、
「ちょっと低いところ」でのものだ。

(中略)

なにがなんでも「高いところ」を尊しとする考えは、
けっこう魅力的に映るものだ。
でも、その尊さを守ろうとして、
息を止めてしまうことよりも、
ぼくらは「ちょっと低いところ」で、
異種と、異文化と、異人種と、いっしょに歩いていくことが
大事なのではないだろうか。

ほぼ日刊イトイ新聞-ダーリンコラム より
 
いろんなことが違っても、
上機嫌であることだったり、
嬉しそうに、楽しそうになにかをやることは、
たくさんの人が惹きつけられる要素があるんじゃないだろうか。

そこなら、いまよりもっと多くの人と
落ち合えるんじゃないだろうか。

そこでも、一番大事な気持ちは、
きっと伝わるんじゃないか。

このシーンをみているとそんな気がしてきて、
すごく救われた気持ちになる。
 
 
 
僕は相変わらず、仕事でもそれ以外のことでも、
よく悩む。

たいてい、自分でいろいろこねくり回して、
余計なものがたくさんついてわかりづらくなっているけど、
その原因はほとんどが、相手の気持ちがわからなかったり、
自分の気持ちが伝わらないことだったりする。

そんなときでも自分から、楽しく上機嫌にやれる人でありたい。

うまく踊る自信はまったくないけど、
一番最初に、一番楽しそうに踊りだす人であれたらと思う。

そんなことを考えているうち、
またストーリーに引き戻され、
それから後もいろいろなことが起こる。
でも、見終わった後には間違いなく元気が出ている。

そんな映画です。
ぜひ、観てみてください。

 

『最強のふたり』
DVD&ブルーレイ発売中
発売元:ギャガ
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