辞書の挿絵は、とても魅力的だ。
ずっと頭から離れない強烈な挿絵、
日がな思い出し笑いをしてしまう大胆な挿絵、
表情にぐっとくる、せつない挿絵。
どの挿絵にも味があり、愛おしい。
しかし、この「好き」は伝わりづらい。
なので簡単に、挿絵とはなにか、
辞書の挿絵とはなにを指すか、を考えたい。
挿絵とはなにか
下の挿絵と文章は、辻まことの『文明戯評』からの引用である。
前進するのにバックミラーが要る。
街道をはずれると化け物に食われる。
二本足では立ってもいられず、ツリ皮が要る。
落ち着く椅子に車がある。
もし「電車」という単語や概念を知らず、
この文章を読んだなら、同じような絵を描くのではないだろうか。
あるいは、この挿絵を見て、「これは電車だ」と気づけるだろうか。
挿絵と文字とは、対等で密な関係にある。
決して、文字がえらくて、挿絵はえらくない、
なんてことはない。
文章が挿絵を定義付け、挿絵は文章の理解を補う。
互いが互いに影響し合うのだ。
辞書の挿絵とはなにを指すのか
以降扱うのは、このような挿絵だ。
辞書の挿絵にもさまざま種類があるが、
今回の引用は立項している単語に絞った。
ぜひ単語の意味と挿絵のマリアージュを楽しんでほしい。
なお、今回は国語辞典ではなく、主に英英辞典を題材にしている。
それは私がはじめて挿絵に強く惹かれたのが、
英英辞典だったからである。
中学校で挿絵のおもしろさに出会い、
今年で足かけ10年を迎えます。
めくるめく辞書の挿絵の世界へ、ご一緒しましょう。
(はじまります)