もくじ
第1回わたしと挿絵 2017-04-18-Tue
第2回スポーツと挿絵 2017-04-18-Tue
第3回笑いと挿絵 2017-04-18-Tue
第4回わたしと挿絵とこれからと 2017-04-18-Tue

外にからだを開いた文章を書きたいです。ちょっと高い牛乳を買ってみる、終電で映画を観に行くなど、ささやかな挑戦の味が好き。

わたしの好きなもの</br>辞書の挿絵

わたしの好きなもの
辞書の挿絵

担当・曽根千智

わたしは辞書の挿絵が好きだ。
とくに、小さく描かれた人間の表情を見るのが好き。

目当ての単語を探す途中、不意に彼らと目が合う。
彼らはいつも、あいまいで、せつない顔をしている。
緩急のない淡々とした細い線で描かれた絵は、
どこまでも薄味で、でも大胆だ。

辞書の中には「辞書に住む人」だけの
愉快な世界があるらしい。
日夜覗き見している曽根が、にやにやしながらレポートします。

第1回 わたしと挿絵

辞書の挿絵は、とても魅力的だ。

ずっと頭から離れない強烈な挿絵、
日がな思い出し笑いをしてしまう大胆な挿絵、
表情にぐっとくる、せつない挿絵。

どの挿絵にも味があり、愛おしい。
しかし、この「好き」は伝わりづらい。
なので簡単に、挿絵とはなにか、
辞書の挿絵とはなにを指すか、を考えたい。

挿絵とはなにか
下の挿絵と文章は、辻まことの『文明戯評』からの引用である。


前進するのにバックミラーが要る。
街道をはずれると化け物に食われる。
二本足では立ってもいられず、ツリ皮が要る。
落ち着く椅子に車がある。

もし「電車」という単語や概念を知らず、
この文章を読んだなら、同じような絵を描くのではないだろうか。
あるいは、この挿絵を見て、「これは電車だ」と気づけるだろうか。

挿絵と文字とは、対等で密な関係にある。
決して、文字がえらくて、挿絵はえらくない、
なんてことはない。
文章が挿絵を定義付け、挿絵は文章の理解を補う。
互いが互いに影響し合うのだ。

辞書の挿絵とはなにを指すのか
以降扱うのは、このような挿絵だ。

辞書の挿絵にもさまざま種類があるが、
今回の引用は立項している単語に絞った。
ぜひ単語の意味と挿絵のマリアージュを楽しんでほしい。

なお、今回は国語辞典ではなく、主に英英辞典を題材にしている。
それは私がはじめて挿絵に強く惹かれたのが、
英英辞典だったからである。

中学校で挿絵のおもしろさに出会い、
今年で足かけ10年を迎えます。
めくるめく辞書の挿絵の世界へ、ご一緒しましょう。

(はじまります)

第2回 スポーツと挿絵