小さい頃から、盆踊りや神輿を担ぐ夏祭りが特に好きです。
お囃子の「ピ〜ヒャララ♫」という音色が聞こえたら、私の頭の中は祭りのことでたちまちいっぱいになってしまいます。
急いで部屋の窓を開けて、お囃子の姿を見つけた時の嬉しさといったら!
体の底から「早く参加したい!」とうずうずしてきてあの楽しそうな輪の中に早く入りたい、そう思っていたのを覚えています。
実家の横が公園だったので、そこで行われる祭りの音色は昼間からよく聞こえました。
- 母
- 「音が聞こえたら、(祭りが)終わっちゃう〜!って
はしゃいじゃってね。大変だった(笑)」
おばあちゃんからピンクの法被をもらった時は、喜んで家の中でずっと着ていたよ、などと母は懐かしそうに話してくれました。
記憶にある1番最初の祭りは、ある夏の盆踊り。
ようやく夜になり、浴衣を母に着せてもらって勢いよく家を飛び出すと、
目の前には驚くべき光景が広がっていました。
夜空に揺らめく赤や白の提灯に、焼きそばやかき氷の屋台。
愉快な音楽に合わせやぐらで踊る浴衣の女性たち、
それを囲み楽しそうに踊る人々。
大人も子供もニコニコしていて、まるで夢の世界でした。
私は嬉しくなって「わ〜!」と踊りの輪の中に入り、炭坑節や東京音頭を
みんなと一緒に踊りました。楽しい!気持ちでいっぱいになりました。
夏祭りでは、もう1つ嬉しい思い出があります。
公園の屋台で、父は頭にタオルを巻いて熱い網の前で焼き鳥を焼き、
母はエプロンをして、てきぱきと1番人気の焼きそばを売っていました。
電灯に照らされた2人の顔はきらきらしていて、町内会の人と楽しそうに
笑っていました。
その姿は粋でかっこよく、恥ずかしいような、誇らしい気持ちで見ていたのを覚えています。普段の両親とは違った一面を見ることができたのが、嬉しかったんだと思います。
履き慣れないかたい下駄。やぐらの畳の柔らかい感触にまぶしいライト。
心踊る音楽。夏の夜特有の、草木の青くさいむっとした薫り。目に映り、
耳で聞き、鼻に入ってくる匂いすべてが私を魅了しました。
「ああ。私はこういうの、大好きだ」そう思った、幸せな瞬間でした。
(つづく)