もくじ
第1回怖いの裏返し。 2017-04-18-Tue
第2回ヤバい先生に出会ったな。 2017-04-18-Tue
第3回いい先生でまとめたくない。 2017-04-18-Tue

東京に住んでいる、年中花粉症の18歳。先日高校生を終えました。最近の悩みは、もらった卒業アルバムの個人写真の写りが、なぜか私だけすごく悪く見えることです。たぶん、みんなそれぞれ、自分の写りが悪いと思っています。

面と向かっては、改まっては、ちょっと、無理です。

担当・スガネガス

私の好きなものって、何だろう。
本も、好き。
アイドルも、好き。
ゲームも、好き。

絞ろうと思えば思うほど決まらなくて、
しばらく、ぐるぐるとしていた。

なんなら、嫌いなものの方が書けちゃうような気がする。
にんじんのあの絶妙な甘さは苦手だし、
キーボードを「ッターン」と叩く人も嫌。
あとは、学校も嫌いだった。
先生は結構面倒で、
前髪が長いだのスカートが短いだの。

そうだ、あの先生。

いちいちしつこいし、ウザいし。
正直に言えば、めんどくさい。

でも。
嫌いじゃあ、ないんだよなあ。

むしろ、好きというか、大好きというか。
実は同級生からも人気があって、
特別おもしろくはないけれど、話しているとなぜか楽しい。

あの頃からあまり変わらない、「先生」への気持ち。

私、スガネガスが、当時から大好きで、
今も大好きなO先生の話をさせてください。

第1回 怖いの裏返し。

中学2年になる、始業式のことだった。

‥‥と、その前に。
私の通っていた中学校が、
どんなものかを話しておかなければならない。

いわゆる普通の公立中学だ。
それじゃあ、説明する必要がない。
普通とはいえ、少し普通じゃないから説明する。

1学年2クラス。
全校生徒は200名ちょっと。
同じクラスになったことのない人も、
授業を担当していない先生も、
みんな知り合いのような学校だ。
誰と誰が付き合っている、だなんて噂話は、
あっというまに筒抜けになる。

先生と生徒の距離も近いし、
卒業した先輩は体育祭や文化祭に来てくれる。
校歌を一番ノリノリで歌うのは卒業生だ。
比較的、小さな学校だった。

話を最初に戻そう。
中学2年の始業式の日、
教室に入ってきたのは見慣れない女性の先生だった。
若くて、小柄で、美人系。
目が大きくてクリっとしていて‥‥。
あ、指輪してる、結婚しているのかな。
新しく学校に赴任してきた先生だ、
ということはすぐにわかった。

ちょっとだけ緊張しつつも、浮かれた教室の雰囲気。
女性の先生が口を開くと、一瞬で静かになった。

細かいことは後の学年集会で話す、しばらく教室で待機。
クラス替えの教室移動は、また後で。

事務連絡をして、その女性の先生は職員室に戻っていった。

サバサバしていて、強い口調だった。
「この先生は舐めたらだめだ」と悟るクラスメイト。
怒らせたらアウト。超怖いって、絶対。
うかつに話しかけられないよ。教科は何かな。
でも美人だったよね。名前なんて言うんだろう。

前方の座席に座っていた私は、騒ぐクラスメイトをよそに、
教卓の上の忘れ物に目を向けた。
あの先生の、教職用の手帳である。
学校支給と思われる、年間スケジュールだとか、
生徒の評価なんかに使われるものだ。
学校が小規模なだけに、提出物などの簡単なチェックは
手帳で済ませる先生は多かった。

視力には自信があったから、
少し腰を浮かせて名前をのぞき込む。

O先生、それがその先生の名前だった。

怒らせたらダメな先生。
その第一印象は、狭い教室で声を聞いた生徒なら、
誰もが共通に思うことだったと思う。

‥‥もう一度言うが、その中学校は小規模である。
生徒も先生も、大体顔と名前が一致している。
給食の時間は担任の先生を交えて雑談するし、
授業終わりに質問ではなくおしゃべりしに行く。
最近やってるあのドラマがおもしろいだとか、
さっき○○ちゃんが変なダンスを思いついたとか、
男子が廊下で逆立ちばっかりして邪魔ですとか。

第一印象が怖いからと言って、
怖じ気づく生徒はいなかった。

怖い、確かに怖そうな先生だ。
それは間違いない。
間違いなく怒らせたらダメだし、
下手に喋らない方が無難である。
無難どころか身のためである。
最悪の場合は視線で殺される。

ところがどっこい、あろうことか、
「先生何の教科担当してるんですかー」と
話しかけに行くのだ。
飛んで火に入る夏の虫どころか、
ネズミ取りに突進するネズミみたいなものだ。
ツワモノどころかアホの極みである。

そのアホの極みこそ他でもない。
当時学級委員で、
最初にO先生の近くに行くこととなった、私であった。

第2回 ヤバい先生に出会ったな。