もくじ
第1回「芋煮」とは、なんぞや?  2017-04-18-Tue
第2回もっと、「芋煮」のことを、知りたい。 2017-04-18-Tue
第3回だから「芋煮」が好きなんだ 2017-04-18-Tue

日本酒と芋煮とばあちゃんの漬物をこよなく愛する90年生まれ。地方で編集の仕事をしています。

私の好きなもの</br>郷土料理・芋煮

私の好きなもの
郷土料理・芋煮

担当・逸見栞

「ほぼ日の塾」2回目の課題は、「私の好きなもの」である。
課題の説明の際、講師である、ほぼ日の永田さんはこう言った。

「これ以外ない!という、好きなものについて書いてください」

それならば、と必死に頭の中で「これ以上ない好きなもの」を探る。
あれか、これか、はたまたこれについて書こうか。
しかしこれはきっともっと好きな人がいる。
案外、堂々と「これが私の好きなものです」と宣言できるものは、少ない。

数日悩んで出てきた「私の好きなもの」は、
生まれ育った山形の郷土料理「芋煮」であった。

でも、芋煮の魅力を語るには、何かが足りない。
そもそも、私はどうして芋煮が好きなんだろう。
単純に「おいしいから」だけじゃない気がする。

そこで、私はばあちゃんに聞いてみることにした。
すると、意外な話が出てきて‥‥
やっぱり、私が好きなのは「おいしいから」だけじゃなかった!

芋煮について探求した、全3回の連載です。

第1回 「芋煮」とは、なんぞや? 

「芋煮」とは、山形県をはじめ東北各地で食べられる郷土料理で、
里芋の入った汁である。「いもこ汁(じる)」と呼ぶこともある。

「芋煮」と一口に言っても、地域によって味付けや食材は異なる。
たとえば、私が生まれ育った山形県村山地方は、醤油味で、肉は牛肉だ。
しかし、庄内地方の芋煮は、味噌味で、肉は豚肉になる。
共通しているのは「里芋」が必ず入っていることである。

家庭によっても味付けや、食材が違ったりする。
我が家は、甘めの醤油味。もちろん、肉は牛肉を使う。

牛肉とごぼうを醤油・酒で炒め、
水を加え、里芋・こんにゃく・きのこ等と煮て、
醤油・みりん・砂糖で味を調えたら、ネギや豆腐を入れる。
シメにうどんを入れてもおいしいし、
なんならカレーのルーを入れて芋煮カレーにする時もある。
そしてうどんを入れれば、芋煮カレーうどんの完成。
これがまた、だしが効いていて、たまらなく、うまい。
そして、その頃にはお腹ははちきれんばかりに膨らんでいる。 

山形では、里芋の収穫時期である秋になると
桜の季節に花見をするように、河原に人がわらわらと集う。
「芋煮会」をするためだ。
友達同士、自治会、子ども会など、さまざまな組織で連日開かれる。
みんなで芋煮をつくり、食べるのだ。
子どもたちはここで、芋煮のつくり方を覚えたりする。

我が家では、里芋を畑で収穫すると皮をむき、
ぜんぶ冷凍してとっておくようにしている。
そして、いつだって芋煮がつくれるようにしているのだ。
盆暮れ正月に親戚が集まる時には、必ず芋煮をつくる。
私が帰省する時も、必ず芋煮が出てくる。

今、わたしは山形を離れ、一人暮らしをしている。
それでも秋になると、体がうずうずして芋煮をつくってしまう。
山形の里芋は小さくて、柔らかい。
でも、こっちで売っている里芋は大きくて固い品種だ。
山形では、こんにゃくが白かったのに、
こっちでは、黒いこんにゃくしか売ってない。
だから、故郷でつくる芋煮とはちょっと違ってしまうけれど、
それでもやっぱり、つくらずにはいられない。
 
歯磨きをしないと気持ちわるいのと同じくらい、
秋に芋煮を食べないと、なんだか落ち着かない。
きっと、物心がつく前から食べるのが当たり前だから、
もう体に染み付いてしまっているのだと思う。

(つづきます)

第2回 もっと、「芋煮」のことを、知りたい。