「芋煮」とは、山形県をはじめ東北各地で食べられる郷土料理で、
里芋の入った汁である。「いもこ汁(じる)」と呼ぶこともある。
「芋煮」と一口に言っても、地域によって味付けや食材は異なる。
たとえば、私が生まれ育った山形県村山地方は、醤油味で、肉は牛肉だ。
しかし、庄内地方の芋煮は、味噌味で、肉は豚肉になる。
共通しているのは「里芋」が必ず入っていることである。
家庭によっても味付けや、食材が違ったりする。
我が家は、甘めの醤油味。もちろん、肉は牛肉を使う。
牛肉とごぼうを醤油・酒で炒め、
水を加え、里芋・こんにゃく・きのこ等と煮て、
醤油・みりん・砂糖で味を調えたら、ネギや豆腐を入れる。
シメにうどんを入れてもおいしいし、
なんならカレーのルーを入れて芋煮カレーにする時もある。
そしてうどんを入れれば、芋煮カレーうどんの完成。
これがまた、だしが効いていて、たまらなく、うまい。
そして、その頃にはお腹ははちきれんばかりに膨らんでいる。
山形では、里芋の収穫時期である秋になると
桜の季節に花見をするように、河原に人がわらわらと集う。
「芋煮会」をするためだ。
友達同士、自治会、子ども会など、さまざまな組織で連日開かれる。
みんなで芋煮をつくり、食べるのだ。
子どもたちはここで、芋煮のつくり方を覚えたりする。
我が家では、里芋を畑で収穫すると皮をむき、
ぜんぶ冷凍してとっておくようにしている。
そして、いつだって芋煮がつくれるようにしているのだ。
盆暮れ正月に親戚が集まる時には、必ず芋煮をつくる。
私が帰省する時も、必ず芋煮が出てくる。
今、わたしは山形を離れ、一人暮らしをしている。
それでも秋になると、体がうずうずして芋煮をつくってしまう。
山形の里芋は小さくて、柔らかい。
でも、こっちで売っている里芋は大きくて固い品種だ。
山形では、こんにゃくが白かったのに、
こっちでは、黒いこんにゃくしか売ってない。
だから、故郷でつくる芋煮とはちょっと違ってしまうけれど、
それでもやっぱり、つくらずにはいられない。
歯磨きをしないと気持ちわるいのと同じくらい、
秋に芋煮を食べないと、なんだか落ち着かない。
きっと、物心がつく前から食べるのが当たり前だから、
もう体に染み付いてしまっているのだと思う。
(つづきます)