亡くなった祖母は、晩年、海が近い田舎町で過ごしました。
もともと、はなやかなものが大好きな人だったから、
都心に住む娘(わたしの母)の家によく遊びに来ました。
「あの町は退屈なの。本当にイヤ」
そんな愚痴をこぼしては、孫のわたしとデパートに。
「ギンザ、ギンザ、ギンザ」と歌い、歩く祖母でした。
母が、父親の役割もしなければならない家庭でしたから、
少しは心配してくれていたのかも、と今は思います。
楽しそうに買い物をする祖母を見るのが、大好きでした。
祖母は野球も好きで、松井の大ファンでした。
「顔がいいから」と言いつつ、
同じころ、「SMAPなら中居くん」と言っていて、
少し混乱したことも覚えています。
わたしが就職して地方に暮らし始めたころ。
当時松井が所属していたヤンキースが親善試合で
ジャイアンツと東京ドームで対戦する、と知りました。
祖母の顔が浮かびました。
仕事の合間に、何度も、何度もチケット会社に電話をかけ、
ようやくとれたのが、2階席のずっと上の方の席でした。
東京ドームには弟に一緒に行ってもらい、
その試合で、松井は大きなホームランを打ちました。
仕事の車の中で、軽くガッツポーズが出ました。
夜、弟から「席が上の方だったから、少し怖かったみたい
だけど、すごい喜んでたぞ」と連絡がありました。
祖母は「チケット、よく取れたねぇ」と喜んでくれました。
小さいころのこと。
有名な人が亡くなったり、一線を退いたりした時に、
大人たちが「ありがとう」と言うことに違和感がありました。
2012年、松井が引退した時、
なぜか、この違和感を急に思いだし、妙に納得しました。
「ありがとう」が一番、ぴったりくるんだな、と。