もくじ
第1回家に土鍋がやってきた 2017-05-16-Tue
第2回土鍋デビュー 2017-05-16-Tue
第3回鍋との思い出 2017-05-16-Tue
第4回楽しみが増えていく 2017-05-16-Tue

散歩が好きです。知らない道をずんずん歩くので、よく迷子になります。それが楽しいのです。高校野球も好きなので、8月と3月は気もそぞろ。
2016年に、社会という大海に舟をこぎだしました。

土鍋日記

土鍋日記

担当・さわむら

第3回 鍋との思い出

冬になると、鍋の蓋が開かなくなることが多かった。
京都の大学に通い、一人暮らしをしていた頃の思い出だ。

京都の冬は、寒い。
「底冷え」の言葉通り、足元からひたひたと
寒さが忍び寄ってくるのがわかる。
床に何か敷物がないと、耐えられない寒さなのだ。

そんな寒さのせいだったからなのか、どうなのか。
東京では悩まなかった鍋の蓋で、よく慌てさせられた。
さあ、後はご飯をよそうだけ、という時に、
どうしたことか蓋が開かないのだ。

我が家は昔からステンレスの鍋でご飯を炊く。
炊飯器が無いため、鍋の蓋が開かないということは、
すなわち、食事に主食が欠けることを意味する。

よりによって、蓋が開かない日の夕飯は親子丼だったりする。
ご飯と具材が合わさってこその「丼もの」なのに、
ご飯がないとは!!
食いしんぼうとしては、親子丼は親子丼として食べたいのだ。
具とご飯が別々であっては、ならんのだ!!

その後、ネットで調べた方法で開けようとしたり、
力づくで開けようとしたが鍋の蓋は頑固であった。

「明けない夜などないのだから、開かない蓋もないだろう」
そんな迷言めいた言葉が頭をよぎる中、
一人、部屋で鍋と格闘した夜は忘れない。

その後、約1時間を経て鍋の蓋は開き、
親子丼にありつけたのだった。

そんな鍋との出来事を思い出す。
一人暮らしの気楽さと、
一人だからこそのさみしさを抱えて
台所に立っていた頃が懐かしくもある。

大学を卒業してからは、実家で家族と生活をしている。
最近我が家にやってきた土鍋が、笑い話の中心になるような、
そんな思い出ができるといい。

発見:土鍋を買ったら、なんだかちょっと、センチメンタルになりました。

(続きます)

第4回 楽しみが増えていく