もくじ
第1回鬼ですね・・・ 2017-05-16-Tue
第2回僕が写真を撮る理由 2017-05-16-Tue

ひとつのことを、こつこつ続ける人が好きです。

木籐富士夫さんの写真

木籐富士夫さんの写真

担当・ふなわ

「写真撮ってもいいですか?」
渋谷のデパートの屋上で、そう声をかけられたのが、木籐富士夫さんとの出会いでした。
屋上の遊園地が各地で次々に姿を消していたころのこと。消えゆく風景を残そうと、全国のデパートを訪れていた木藤さんにとって、娘を連れて遊んでいた様子が、ちょうどよかったのかもしれません。
そんな木籐さんが数年前から、他にも撮り続けているものがあると耳にして、話をうかがいました。

プロフィール
木藤富士夫さんのプロフィール

第1回 鬼ですね・・・

ふなわ
新しい作品がホームページにアップされるのを、いつも楽しみにしてます。
木籐
ありがとうございます。
ふなわ
ぼくが好きなのは、ガリバーと、この鬼・・・
木籐
鬼ですね。
ふなわ
これってみんな・・・
木籐
公園にある遊具です。日中はこの周りで、たくさんの子どもたちが遊んでいます。
ふなわ
写真には人がまったく写ってないんですけど。
木藤
誰もいなくなってから撮るんです。だから撮影は、夜、暗くなってから始めてます。
ふなわ
夜、おひとりで。
木籐
そうですね。
夕方から撮影の準備を始めるんですけど、まずは遊具の周りをぐるぐる、20~30分かけて歩き回って、一番いいアングルを決めます。これだっていう角度が決まったら、カメラを三脚に固定します。
ふなわ
夜の公園で、大人が遊具の周りをぐるぐるっていうのは、なかなか・・・
木藤さん
お巡りさんから職務質問を受けることはよくありますね。
ご近所の方が心配されて、通報しているのかもしれません。
いざ撮影、というタイミングで、近所の民家から「ちゃぽん、ざざざ-」と入浴する音が聞こえて、泣く泣く断念したこともありました。
近隣のみなさんにご迷惑はかけたくありませんから、仕方ありません。
ふなわ
夜の学校もそうですけど、昼間にぎやかな場所ほど、夜って怖くないですか。
木藤さん
怖いです。
公園の隣が、墓場だったことがありました。
撮影に夢中になっていた時、背後から「ゴソゴソ」って音がして。背中に視線を感じるんです。
ふなわ
それって、もしかして。
木藤さん
バッと振り返ると、ネコでした。
逆に、にぎやかな車やバイクの音が近づいてきて、「こっちに来るな、来るな」って、別の種類の汗が背中をつたったこともありますけどね。
ふなわ
作品の陰に、見えない幾多のドラマが。
木籐さん
一つの作品を仕上げるまでも、とても時間がかかっています。
三脚にカメラを取り付けたら、ライトスタンドを手に遊具に登って、遊具を照らし、リモコンでシャッターを押します。少しずつ照らす場所を変えては、同じ作業を繰り返すんです。
ふなわ
遊具って大きいものもありますよね。ライトで照らせる範囲にも限りもある。
木籐さん
全長10メートルの遊具だったら、100回くらいシャッターを押しますね。撮影はだいたい、3時間かかります。
ふなわ
3時間!
木藤さん
助手がいれば楽なんですけどね。でも、それで終わりじゃなくって、その後、約30枚分のデータを重ね合わせる作業が待ってます。この編集もだいたい、半日はかかります。
ふなわ
半日!!
木藤さん
こうやって、暗闇に遊具が浮かび上がるような写真になるんです。目指しているのは、博物館に展示される恐竜骨格のような雰囲気。遊具だけをかっこよく見せたいんです。
第2回 僕が写真を撮る理由