- 田中
- 1週間ぶりですね。先日は大阪でお目にかかりました。
あの、今日は、大阪キャラメルプリンケーキを
持ってきました。
- 糸井
- いやいや、いらっしゃいました。
いつもお土産、ありがとうございます。
- 糸井
- 田中さんの人生を1時間で語れるかなぁ(笑)。
- 田中
- いやぁ、もう、今日は本当に、
なにを喋っていいのかわからないので、
糸井さんから聞かれたことに対して、
言葉少なに答えようかなと思っています。
- 糸井
- 放っておいたら1人でやってくれますから、この人(笑)。
- 田中
- いや、そんな。漫談家じゃないんですから。
- 糸井
- ぼくが最初に田中さんを知ったのは、
東京コピーライターズクラブのリレーコラムで。
田中さんのコラムを誰かが紹介していたんです。
ぼくもかつてコピーライターズクラブにいたので、
「今はこんなことをやっているのか」
と思って読み始めたらおもしろくて、
「この人は誰なんだ?」って。
まだせいぜい2年くらい前のことです。
- 田中
- たぶんそのくらいですね。
そのコラムは、2015年の4月くらいに書きました。
- 糸井
- それでぼく、そのコラムを初めて読んだときに、
田中さんのことを
27,8歳くらいの若いかただと思っていて。
「こういう子が出てくるんだなぁ」、
「この子がもっと書かないかなぁ」と思っていたら、
そのあと、
27,8歳ではないとわかったんですよね(笑)。
- 田中
- 46,7歳のおっさんだった、という。
- 糸井
- 20歳も開きがある(笑)。
でも、まだ触ると敏感みたいな。ね。
- 田中
- そうなんですよ。
- 糸井
- それまで田中泰延名義で、
個人の文章を書くことはなかったんですか?
- 田中
- それが、一切なかったんです。
この仕事(コピーライター)は、
20文字程度、ボディコピー200文字くらいで、
それ以上の長い文章を書いたことが、
人生にはなかったんです。
- 一同
- (笑)
- 田中
- これまで書いてきたもののなかで一番長かったものは、
大学の卒論です。
原稿用紙200枚ぶんくらい書きました。
でも、これは人の本の丸写しなので、
書いたうちに入らないですね。
- 糸井
- ちなみに、それはなんの研究ですか?
- 田中
- 芥川龍之介の『羅生門』の小説です。
いろいろな人の丸写しで、切ったり貼ったりしました。
担当教授にそれを見せたら、
「これはわたしには評価できません。
これを荒俣宏さんのところに送るので、
おもしろがってもらいなさい」と言われました。
とんでもないところから切ったり貼ったりしようという
意識は当時からあったんですよね。
『羅生門』に
「きりぎりすが泣いている」という1行があるんです。
それに関しては、
「どんな種類のきりぎりすが、
この小説の舞台になった時代の京都にいるのか」
など、無関係なことをたくさん書きました。
- 糸井
- いわゆる、「博覧強記」というジャンルに入りそうなものを
書いたんですね。
- 田中
- たぶん、そのときからぼくは多少変だったんだと思います。
なので、今もそれにちょっと近いかもしれません。
- 糸井
- のちに、ぼくらが「石田三成研究」で味わうようなことを、
大学の教授が味わったわけですね。
というと、田中さんは、それまで
その卒論しか書いたことがないんですか?
- 田中
- そうなんです。それだけですね。
- 糸井
- ラブレターも書いたことがないんですか?
- 田中
- まったく、もう苦手で。
その後、なにか書くといったら、
2010年に出会ったツイッターです。
ツイッターは140文字までしか書けないので、
広告のコピーを書いている身としては
ラクだということで始めたんです。
だから、ツイッターができたときには、
なにか文字を書いて打って、
これが活字のようなものになって
人にばらまかれるということに関して、
ぼくは飢えていたという感覚がありました。
- 糸井
- あぁ。なるほど。
友達同士のメールのやりとりも、
あまりしたことがなかったんですか?
- 田中
- そうですね。
友達とのメールもあまりしていませんでした。
- 糸井
- すごい溜まっていますね。
- 田中
- 溜まっていましたね。
- 糸井
- 性欲みたいに(笑)。
- 田中
- もうすごいんですよね。
溜まりに溜まった何かが(笑)。
- 糸井
- ということは、田中さんの筆おろしは、
コピーライターズクラブのリレーコラムですか?
- 田中
- はい。そうなんです。
- 糸井
- そして、次が「田中泰延のエンタメ新党」の映画評ですか?
※田中泰延のエンタメ新党:
西島知宏さん主宰のWebメディア
「街角のクリエイティブ」のコラム
- 田中
- そうですね。
ぼく、ツイッターにときどき、
「昨日観た映画、ここがおもしろかった」と、
2,3行つぶやいていたんですね。
そのつぶやきと
東京コピーライターズクラブのリレーコラムを読んだ
元電通の西島知宏さんが、
「うちのメディアで連載してください」と。
- 糸井
- なるほど。そのようないきさつで。
- 田中
- それで、「分量はどれくらいですか?」と聞いてみたら、
「ツイッターでも
2,3行で映画評をされてるときもあるので、
2,3行で大丈夫です」と。
「2,3行でいいんですか?」と聞き直したのですが、
「そうです」と言われたので、
映画を観て、次の週に7000字書いて送りました。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- 溜まった性欲が。
- 田中
- そうなんです。
書いてみると、やっぱり、
2,3行のはずが7000字になってしまったんです。
- 糸井
- 書き始めたらそうなってしまったんですか?
- 田中
- はい。そうなってしまいました。