- 糸井
- ミスター手土産、いらっしゃいました。
- 田中
- どうも。
- 糸井
- 今日もいつものように、
いくつかの紙袋に手土産が入っていて、
「手土産研究家の田中さん」って
僕は認識しています。
- 田中
- いつそんなことになったんでしょうか(笑)。
- 糸井
- どうしてあんなに手土産を?
営業やってらっしゃったんですか?
- 田中
- まったくやったことないですけど、
やっぱり貰うとうれしい経験が大きくて。
- 糸井
- 僕もわりと手土産好きな人間だったんですけど、
どこかで面倒くさくなって、やめちゃったんですよ。
でも、おおもと手土産の考え方は、土屋耕一さん。
- 田中
- はい、コピーライターの。
- 糸井
- 同業の神みたいな人ですけど、土屋耕一さんが、
アルバイトのように資生堂の宣伝部に入って、
そこで、
「お前、これから一杯やるから、何か買って来いよ」
っていう時に買ってくるものが気が利いていて、
土屋さんは「それで俺は社員になったんだよ」と。
- 田中
- なるほど。
- 糸井
- それで、田中さんは
「僕が持ってくるものはだいたいつまんないものです」
って言う。
僕は、「うん」って。
- 一同
- (笑)
- 田中
- でも、「つまんないものです」って言うの、
すごいいいコミュニケーションです。
それは、受け取った側が、
「いやいや、そんなことないですよ」
って言わなくても。
昔、田村正和さんに喜んでもらえるだろうと思いつつね、
田村さんがテレビドラマの中で乗ってた車のミニカーを
「つまんないものですけど」って差し出したら、
田村さんがそれを見て「本当につまらないね」と。
あの口調で(笑)。
でも、言いながらもね、
ちょっとこう鞄にしまっていたんですよ。
楽屋に置いていかないで。
それ、いいなぁと思って。
- 糸井
- 「つまんない」のハードルを
ものすごく下げた状態で、
田中さんは選んでこられますよね。
- 田中
- そうですね(笑)。
まぁ新幹線に乗る直前に買うんですけど、
大阪のいいところは、ほら、「面白い恋人」とか、
これ、固有の商品名になっちゃうんですけど、
大阪にまつわる、手土産自体のネーミングが
だいたいくだらないっていう。
- 糸井
- すでにね。
- 田中
- それで、中身のおいしさとか
まったく問われないところで、
コミュニケーションツールになる。
- 糸井
- うんうん(笑)。なってますよね。