私が初めてスピッツと出会ったのは、小学校低学年の頃でした。
中学生になった4歳上の兄が音楽に興味を持ち始め、
音楽好きの両親が集めていた膨大な数のCDの中から
見つけて聴き始めたのがきっかけでした。
それから兄のブームが終わるまでしばらくの間、
家でも車でもずっとスピッツの曲がかかるようになり、
当時の私はそれをあくまで受け身で聞いていました。
もう一度、スピッツを聞くようになったのは、
それからしばらく経って、高校に入学した頃でした。
学校帰りにカラオケに遊びに行くようになり、
ランキングに『チェリー』が入っているのを見つけました。
「スピッツ、昔よく聞いていたなぁ」
という懐かしさで選んでみたところ、
幼い頃に何回も何回も聞いていたからか、
メロディも歌詞も自然と口をついて出てくるのでした。
だいたいの女子高生にとって、スピッツは
「『チェリー』や『ロビンソン』、『空も飛べるはず』を歌っていた、
昔流行っていたバンド」
という認識でした。
懐かしくなって家でCDを聞いてみると、
初めて聞いてから8年近く経っているのに、
曲は全く古く感じませんでした。
それから、音楽プレイヤーに入れて自主的に聞くようになりました。
自然と家や車のスピーカーから流れていた幼い頃とは違って、
誰とも音楽を共有せずに、
ひとりでイヤホンをして聞いていました。
高校でダンス部に所属し、周囲の目に敏感な思春期真っ只中の私は、
J-POPや洋楽、ダンスミュージックの流行を追いかけながら、
無意識のうちにこっそりと、スピッツを聞いていました。
それでも、自分の中で
「遠くに引っ越す友達と最後に遊んだ日、
帰り道の車でふと『楓』が流れて、お母さんに隠れて泣いていたなあ」
とか、忘れていたことと、そのときの気持ちをたくさん思い出すのでした。
「私の好きなもの」について考えたとき、
今ハマっているものが、いくつかパッと思いつきました。
それについて書こうと、自分のことを思い返していると、
気がつけばスピッツにたどり着いていました。
小・中学生の頃からの親友たちとは、普段あまり連絡を取りません。
それでも、ふと地元に帰って会えば、
昔の気持ちを思い出して、楽しい時間を過ごすことができます。
私にとって「ほんとうに好きだ」と感じたものは、
穏やかに、ずっと心の奥にある、そんな存在なのだろうと思います。