春風の気持ちよい、よく晴れた日のこと。
私は、すこし遅い昼ごはんを取ろうとしていました。
連休をつかって、友達に会いに行きたい。
できれば、美術館にも寄りたい、と考えながら
スマホに「京都 美術館」と打ち込んで、検索をかけました。
そこでたまたまたどり着いた画面から、
目が離せなくなったのです。
月に照らされて、軽やかに舞う義経。
地面に足をめり込ませ、応じる弁慶。
今にも動き出しそうなワンシーン。
『芳年―激動の時代を生きた鬼才浮世絵師』告知チラシより。
『義経記五条橋之図』という作品が使われています。
これが、浮世絵師・月岡芳年(つきおかよしとし)との出会いでした。
もしかすると、なにかの機会に彼の絵を見たことがあるしれませんが、
私の頭からはすっぽりと抜け落ちていました。
「芳年」って「ほうねん」って読むのかな、
と考えてしまうくらい。
さっそくスケジュール帳を開いたものの、
すでに週末の予定がちらほらと入っており、
この期間に京都に行くことは難しそうです。
来年東京で行われる、巡回展を待つことを決めました。
それから数か月後。
神保町の書店街を歩いているときに目に留まったのが、
原宿の太田記念美術館で行われる、企画展のポスターです。
『妖怪百物語』・『月百姿』の
2回に分けて開催されるとありました。
今度はその場で、スマホのメモ欄に「芳年」と打ち込みました。
次の週末、炎天下の中をいそいそと出かけた『妖怪百物語』には、
想像していた以上にエネルギッシュな作品が揃っていました。
どこか可愛らしさの残る妖怪が描かれているものもあれば、
よくよく解説を読んでみると、
人の恨みつらみが姿を変えたもの、ということもあります。
計算された構図に、
鮮やかな色彩。
そのどれもがキマッていて、恰好よかったのですが、
憎悪や無念といった感情が渦巻いており、
絵の中に引きずり込まれてしまいそうになりました。
夏の暑さに疲れた私にとっては、
体力や気力を使って観ているように感じられました。
それだけ、作品に惹きつけられたということかもしれません。
(つづきます)
『芳年―激動の時代を生きた鬼才浮世絵師』は
下記の会場でも開催されます。
・2018年1月13日(土)〜3月11日(日) 神戸ファッション美術館
・2018年3月17日(土)〜5月14日(月) 山梨県立博物館
・2018年8月5日(日)〜9月24日(月振休) 練馬区立美術館