ゲーム終了後、スタッフロールで
フルートの主旋律がとても綺麗なこの曲が流れ出すとき。
主人公とヒロインは、自らが持った風船で
宙に浮かび上がって、そのまま夜空を旅するのです。
僕は、このシーンの幻想的な空気感に魅かれました。
何度もゲームをクリアしては、何度も同じシーンを見ました。
もちろん、そのBGMである『遥かなる時の彼方へ』も、
何度も聴きました。
夜空の満月の中にふたりが消えていく映像と共に流れる
スタッフロールには、
TVゲームだけが毎日の楽しみだった
田舎の小学生を夢中にさせた、
空想のものがたりに携わる
一人ひとりの総ての名前がおびただしく流れていました。
「これだけの人が、この作品の中に生きているのだ」
そんな事実は、当時の僕にとっては衝撃でした。
それまでも、何度かそうした
スタッフロールの文字列を自分は見てきたはずです。
しかし、それまでの自分には
視界の上から下へ流れるただの模様でしかなかったのが、
このときは
自分だけに何かを訴えかける、
意味ある何らかの記号のようなものに見えたのです。
そうしてクレジットされている人の名前の
一つひとつに、ふと
「一体どのような職業・立場の人が関わっているんだろう?」
という興味を持ったのです。
その後、あらゆる音楽や文学作品・映像作品と出遭う度に、
そうした「誰が作ったのか?」というところに目を向け、
より一層作品を味わおうという姿勢を
持つようになりました。
僕が、最初に興味を持ったのは、
このゲームのBGMを手掛けたコンポーザーである
光田康典さんでした。
僕は、この人が何を考え、思い、作曲してきたのかを
知りたくなって、
『クロノ・トリガー』のサウンドトラックを買ったのです。
(つづきます)