
まず、なぜ私がテン泊(テンパク)を好きになったのか
お話したいと思うのですが、
それは「きらい」から始まりました。
きらい、というのはちょっと言い過ぎではあるんですが、
じつは、山小屋に泊まるのが、やや苦手なのです。
登山は、最初は日帰りから始めるものの
次のステップとして、2、3日の行程が必要な山を
登るようになります。そういう山に登りたくなります。
そのときに問題になるのが、宿泊の環境です。
もちろん、山という、人間にとっては不便な場所に
みずから行くのですから、
お風呂がないとかトイレが充実してないとか
そういうのは最初から目をつぶります。
実際そのあたりは、慣れればそれほど苦ということも
なかったのですが、
結果的に私にとって一番苦痛だったのは、
他人との距離をとれず、物理的にも心理的にも
自分のスペースを保てないことでした。
昨今の登山ブームもあり、とくに夏山や紅葉シーズンには、
登山道に行列ができることもあるくらい、混み合います。
(冬は危険度が高まるため登山人口はぐっと減ります)

山小屋での寝る場所はだいたい、広めの板張りの部屋に
お布団がだーっと何十とひいてあり、1人分のスペースは
その布団1枚のみ。隣とぴったりくっついていることも多いです。
休憩室も、それも仕方のないことですが、
何十人、ときには100人単位の人が山小屋にいるので
なかなか落ち着いて座るような空間はありません。
私もその混雑に貢献してしまっているひとり。
みんなおなじ条件。
それはよくわかっています。
ただ、旧友との話が盛り上がる人生の大先輩方などは
そのすぐ後ろで体を休めている人がいても、
わいわいとにぎやかで気づかない。
休憩室でも、数にかぎりのある座布団を
何時間も占領し、酒盛りを続ける人たちに
つい、イラっと‥‥。
大人なんだから怒っちゃいけないと思い
我慢しておだやかに注意したのに聞こえてないフリをされ、
今度こそ鬼の形相の私を見て、
旦那さんは苦笑いを浮かべるばかりです。
とはいえ、ピークシーズンに
山小屋にたくさん人がいることは、
だれも責められないこと。
だからこそ、自分がその環境をいやだと思うんだったら、
それがストレスになって山を楽しめないのなら、
自分がなんとか工夫するしかない。
そんなあなたにこちらはいかが? と、
救世主のように現れたのが、テントでした。