母は、私が小さいときから、
手仕事が好きなひとでした。
私が幼少期に着ていた服は、母の手作りでした。
ミシンで縫ったズボンから、手編みのセーターまで。
洋裁や手芸はひと通り出来ますし、本人も、
見たらだいたいのものは作れる、と言っています。
布と糸で絵を描く、ファブリックピクチャーを
やっていたこともありました。
子育てで忙しかったため、
憧れの作家の本を読み、独学で作っていたそうです。
陶芸教室に通っていた時期もありました。
通算で10年以上通っていて、
家で使っている食器は、ほとんど母の作品です。
最近では、家庭菜園やガーデニングにも凝っています。
となり近所の農家にアドバイスをもらったり、
ガーデニング情報のブログを見たりして、
日々、野菜や花を育てているようです。
私が実家を離れた今では、
野菜が送られてくるようになりました。
野菜は、そのへんのスーパーで買うよりも美味しいですし、
小学生のときに、母が作ってくれた袋を使っていたのも
少し誇らしかったように記憶しています。

そんな母の近況は、
だいたいFacebookで知ります。
ある日の投稿で、
母が箱の写真を載せているのを見つけました。
可愛らしいレースの柄が入った生地で作られた箱です。
はじめは、その投稿を見ても
また何か作ったのかな、くらいに思って、
あまり気に留めていませんでした。
しかし、それから月に1度くらいのペースで
おしゃれな箱の写真が投稿されるようになり、
徐々にこの箱のことが気になってきました。
洋裁や陶芸や野菜と違って、
箱を作るのが趣味、というひとを、
私はあまり知りません。

なんで急に、箱づくりをはじめたのだろう。
こんなにたくさん箱を作ってどうするんだろう。
写真のキャプションには、
「今日のワークショップ♫」と、
書いてあるくらいで、
ほとんどヒントはありませんでした。
そこで私は、思い切って
箱づくりについて、
母に聞いてみることにしました。
思えば、母の趣味について、
深く話を聞くのは、はじめてのことでした。
(つづきます)
