- 糸井
- 体は大丈夫ですか?結構たくさん取材受けてるでしょ?
- 燃え殻
- はい、サラリーマンなのに。
6月30日に本が出て、そこからありがたいことに。
- 糸井
- よく頑張ってるよね。
- 燃え殻
- あ、久しぶりに褒められた。
- 糸井
- よく頑張ってるよ。
いいことも悪いこともストレスなんだから。
新婚はストレスらしいからね。
豪華マンションに引っ越したとしても。
- 燃え殻
- あ、いいことでもストレスになる?
- 糸井
- 環境が変わったら人体が変わったのと同じだから。
あらゆる変化はストレスなんですよね。
- 燃え殻
- そうか。
それでいえば、ここ2か月ぐらい、
今までの人生にない変化しかしてなくて、
それに少しだけ慣れましたね。
- 糸井
- いや、たいしたものだ。
- 燃え殻
- Facebookの「1年前あなたはこれしてましたよ」
っていう機能で、
糸井さんと一緒に写ってる写真が出てきたんですよ。
- 糸井
- ああ。あのロフトでの対談が1年前…
もしかしてぼくら、まったくの初対面はあの日ですか。
- 燃え殻
- その前に1回‥‥
- 糸井
- ああ、ご飯を食べたね。そうだ、そうだ。
ぼくがご飯をご馳走したい本能がうずいたときですね。
- 燃え殻
- ありがたい本能だ。
- 糸井
- (笑)
- 燃え殻
- ぼく、あのときが人前で話すっていうことが
人生初だったんです。
- 糸井
- ‥‥ちょっといいなあ。何だ、何だ、何だ。
- 燃え殻
- 初で、さらに糸井重里がいて。
またそうそうたる変わった方々がいらっしゃって。
- 糸井
- (笑)
- 燃え殻
- 緊張したー。
その1年前のやつを見たときに、
あ、少し慣れたかもしれないと思ったんですよ。
- 糸井
- いっくらでもやってるじゃない、もう人前で。
- 燃え殻
- ここ2か月ぐらいです。
- 糸井
- あ、それは変化かもしれない。
- 燃え殻
- うん。
- 糸井
- 人前っていう意味はつまり、
知らない人が自分の話を聞いてるってことか。
なかなかないよね、そういえば。
- 燃え殻
- ない、ないですよ。
気軽に糸井さん誘いましたけどね、ロフトへ。
すごい人は気軽に誘うんだなと思いました。
- 糸井
- (笑)
- 燃え殻
- ぼく、会田誠さんもそうだったんです。
会田誠さんから飲みに行かないかって言われて、
「行きたいです」って言ったんです。
そしたら人前でした。
- 糸井
- ああ、あ、そうですか。
ぼくは、そこはぼくのしぶといところで、
断られるんじゃないかって今でも絶対思ってるんです。
だから断る権利を与えてたはずですよ、多分。
「よろしかったら、
こういうのに出ていただけませんか」。
- 燃え殻
- ありました、ありました。
それは自分がガッカリしたくないからってことですか。
- 糸井
- じゃなくて、自分もそうだから。
誰が何と言おうがそれは行きたくないとか、
ちょっと今は勘弁してくださいとか、
いろんな理由があるから。
断れるように誘ってほしいなって思ってるので。
- 燃え殻
- ああ、それはいいですね。
- 糸井
- だから、「すぐ来いよ」みたいなことを
言うまでの関係って、まだないかもな、俺。
娘にでもそうだな。
- 燃え殻
- ちゃんと選択肢を。
- 糸井
- うんうん。ノーと言える空き地をつくる。
- 燃え殻
- ああ、ぼくも絶対そうするんですよね。
気が弱いんです。ぼくはですよ。
- 糸井
- 損得にする必要はないんだけど、多分それのおかげで、
トータルにものすごく健康でいられる気がする。
- 燃え殻
- ああ‥‥。
- 糸井
- え、じゃあ燃え殻さんも、
人前に出るのも初めてかもしれないけど、
人に「こいつは来るに決まってるな」とかって
言ったことはないんですか。
- 燃え殻
- もう、これは本当にない。
- 糸井
- ていうことは、無駄モテしたりしますね。
せっかくモテてるのに、フックアウトするというか。
- 燃え殻
- (笑)。どうなんだろう。
ぼく、直前で嫌になっちゃうってクセがあるので、
すごいわかるんですよ。
- 糸井
- うんうん。
- 燃え殻
- 例えば小学校からの友達と焼肉を食いに行きたい。
何度も行った焼肉屋で味もわかってる。
嫌なことが起きないんです。
- 糸井
- 起きない。
- 燃え殻
- なのに、当日行きたくないってことがあったんです。
そのときに、「ごめん、俺、今日行きたくない」って
言えたんですよね。
- 糸井
- そう言えたんだ。
- 燃え殻
- 言えたんです。
そしたら、「まあ、そういうこともあるわな」って。
友達だなって思いました。
- 糸井
- それは友達だな。
- 燃え殻
- でも、それはほとんどの場合、
我慢するじゃないですか。
多分それが少なければ少ないほど、
長生きの可能性が高いのかもしれない。
- 糸井
- そうですね。そうですね。
ドタキャンってやつですよね、いわゆる。
- 燃え殻
- そう、ドタキャン。
社会でしちゃいけないってよく言われる。
- 糸井
- ずっとドタキャンする人っていうのが100だとして、
全然ドタキャンしない人は1だとして、自分は?
- 燃え殻
- ほとんどの場合はしないようにしてるんです。
だから、常にストレスが溜まってくる。
8ぐらいドタキャンしたいんで。
- 糸井
- ああ。
ぼく、今、自分のことで考えたら‥‥
ドタキャンしないために最初から断るっていうのが、
どんどんできるようになった。
それはさっきの健康でいられるシリーズ。
- 燃え殻
- どうやって断るんですか。
例えば「じゃ、今度ご飯食べましょう」。
それを断るとそんなに一生食いたくないのか
って話になるので、
「あ、そうですね」
ってまず言わなきゃいけないじゃないですか。
- 糸井
- うん、そこは言う。
あ、言わないときもある。「あぁ」つって。
- 燃え殻
- 「あぁ」って。
- 糸井
- そうやって、なんか音だけ出してるっていう。
- 燃え殻
- 音を出すというのがあるんですね。
- 糸井
- うん。
友達なんだけど、今ものすごくドタバタしてるから、
ご飯はちょっと、みたいなときがあったとしたら、
それは基本的には「あ、いいね」って言って。
- 燃え殻
- (笑)
- 糸井
- いつだかわかんないけど行く気があるっていうのは
OKのほうに入れてますね。
断らないけどもそこに置きっぱなしにするのが、
「あー」だとすれば、あとは大体OKです。
はっきり断るのは、「いや、おまえ大嫌いだよ」って
言わなきゃなんないとき。
- 燃え殻
- 断ることもある?
- 糸井
- うん、5、6年にいっぺんぐらいは
あるんじゃないですか?
「嫌だよ」って。
- 燃え殻
- 「嫌だよ」。
- 糸井
- うん。誘う側のときには、
「嫌だよ」を相手が言う可能性はいつも持ってて、
自分が誘われた側のときには、
「嫌だよ」から、「うーん」から、
「おお、いいね!いついつ?」っていうのから。
- 燃え殻
- バリエーションがある。
- 糸井
- 1つじゃ、やっぱり無理。心のままにあるとすれば。
- 燃え殻
- ぼく、入口が1つだから苦しいのかな。
- 糸井
- そうかもしれないね。
今聞いてたらね、「はい」しかないもんね。
- 燃え殻
- 「ああ、いいねえ」って絶対言っちゃうんです。
例えばうちの若手の食事会みたいのがあって。
多分、若手も本当には来てほしくないんですよ。
- 糸井
- (笑)
- 燃え殻
- ただ、誘ってないとまずいじゃないですか。
- 糸井
- ああ。
- 燃え殻
- だから、多分お知らせのつもりで言うんですけど、
「いいね」しかぼくないんで。
「あいつ、行くらしいぜ」みたいな話に
なってると思うんです。
- 糸井
- 面白い。面白いですね、その加減。
- 燃え殻
- そう。だからそうすると、
最終的にドタキャンになるんですよ。
- 糸井
- それって「男を狂わせるガール」みたいだね。
全部に「私はあなたを受け入れる」って言っちゃう。
案外しっかりしてるんだよね、ある意味では。
- 燃え殻
- ああ、そうかなあ。
- 糸井
- 燃え殻さんのケースは・・・・。
なんかそうじゃないような気がするね。
その場をなんとかキープしたいっていうか。
- 燃え殻
- そのクセがあるんです。
それで、どんどん追い込んで行っちゃうんですよ。
- 糸井
- 仕事もそうやって引き受けちゃうんだ。
- 燃え殻
- はい。
- 糸井
- 今日もそれで来たんだ。
- 燃え殻
- 違います。
- 糸井
- (笑)。
「違います」の早さ、すごく好感が持てた。
- 燃え殻
- (笑)。
はい、そうです。