- 燃え殻
- 1年前の糸井さんと対談したときが、
人前で話すっていうことが人生初だったんです。
- 糸井
- 何だ、何だ、何だ(笑)。
- 燃え殻
- 初で、さらに糸井重里がいて。
あのとき、またそうそうたる変わった方々がいらっしゃって。
- 糸井
- (笑)
- 燃え殻
- 緊張したー。
その1年前の対談を見たときに、
少し慣れたかもしれないと思ったんですよ。
- 糸井
- いっくらでもやってるじゃない、もう人前で。
- 燃え殻
- ここ2か月ぐらいです。
- 糸井
- あ、それは変化かもしれない。
- 燃え殻
- 人前ってなかなかないですよ。
気軽に糸井さん誘いましたけどね、ロフトへ(笑)。
- 糸井
- (笑)
- 燃え殻
- すごい人は気軽に誘うんだなと思いました。
- 糸井
- (笑)
- 燃え殻
- ぼく、会田誠さんもそうだったんです。
会田誠さんから飲みに行かないかって言われたんです。
断ることもないんで、「行きたいです」って言ったんです。
そしたら人前でした。
- 糸井
- そうですか。
ぼくは会田さんみたいな芸術家じゃないんで、
「よかったら来ていただけませんか」。
- 燃え殻
- あ、ちゃんとしっかり。
- 糸井
- 断る権利を与えてたはずですよ、たぶん。
「よろしかったら、こういうのに出ていただけませんか」って
形式的にもそうしたんじゃないかな。
そこはぼくのしぶといところで、
絶対断られるんじゃないかって今でも思ってるんです。
- 燃え殻
- あ、そうですか?
- 糸井
- 思ってるんです。
そこをけっこう本気で思ってるんです。
- 燃え殻
- それは自分がガッカリしたくないからってことですか。
- 糸井
- じゃなくて、自分もそうだから。
誰が何と言おうがそれは行きたくないとか、
ちょっと今は勘弁してくださいとか、
いろんな理由があるから、
断れるように誘ってほしいなって思ってるので。
- 燃え殻
- それはいいですねえ。
- 糸井
- だから、「すぐ来いよ」みたいなことを言うまでの関係って
やっぱり、いや、まだないかもな、俺。
娘にでもそうだな。
- 燃え殻
- ちゃんと選択肢を。
- 糸井
- うんうん。
ノーと言える空き地を作って、
「もし空いてたら」とか。
- 燃え殻
- ああ、ぼくも絶対そうするんですよね。
- 糸井
- 気が弱いせいもある。
- 燃え殻
- 気が弱いんです。ぼくはですよ。
- 糸井
- それのおかげで、でも、
俺はだいぶ長生きできると思うよ。
損得にする必要はないんだけど、
多分トータルにものすごく健康でいられる気がする。
- 糸井
- 燃え殻さんも、
じゃあ、人前に出るのも初めてかもしれないけど、
人にもう「こいつは来るに決まってるな」とかって言ったことはないんですか。
- 燃え殻
- もう、これは本当にそれはない。
ぼく、直前で嫌になっちゃうってクセがあるんです。
例えば以前、ここに友達と一緒に来ましたよね。
彼は小学校からの友達です。
その彼と焼肉を食いに行きたい。
何度も行った焼肉屋なんです。
味もわかってて。嫌なことが起きないんです。
- 糸井
- 起きない、うんうん。
- 燃え殻
- なのに、行きたくないってことがあったんです。
そのときに、「ごめん、俺、今日行きたくない」
って言えたんですよね。
- 糸井
- そう言えたんだ(笑)。
- 燃え殻
- 言えたんです。
そしたら、「まあ、そういうこともあるわな」って
そいつが言ったんですよ。友達だなって思いました。
- 糸井
- それは友達だな。
- 燃え殻
- うん。
(つづきます)