- 糸井
- 今さら紹介されても面倒っていう人だらけと思っているんで
もう、急に始めます。
みなさん、燃え殻さんの体調が心配だったでしょ。
- 燃え殻
- 昨日ね、あんまり寝られなかったんです。
糸井さんの顔がちらついて。
- 糸井
- それは好きで?
- 燃え殻
- あ、好きで。
- 糸井
- (笑)
- 燃え殻
- すげえ早くここに来て、グルグル回ってました。
- 糸井
- ずいぶん早く来てるって噂は届いてまして。
僕はその頃お風呂に入ってて。
- 燃え殻
- ああ、いいですね。
- 糸井
- 1時間ぐらい入ってたんですよ。
よくお風呂に入りながらネット見たり本読んだりしてるんで、
これだけで1キロぐらい痩せるんですね(笑)
- 燃え殻
- 素晴らしい、いいなあ。
- 糸井
- え、そう思う悩みでもあるんですか。
- 燃え殻
- いや、全然。
でも、お風呂での読書は至福なことだと思ってて。
糸井さんがずっとそうしているって聞いたので、
ちょっと真似しようかなって。
- 糸井
- ぜひやってください。
それで、体は大丈夫ですか、の質問は本当に尋ねたくて。
ものすごい数の取材を受けてるでしょ?
- 燃え殻
- はい、サラリーマンなのに(笑)
- 糸井
- サラリーマンなのにね。
- 燃え殻
- 6月30日に本が出てから、
ありがたいことに何十という数の取材を。
- 糸井
- 何十と。
- 燃え殻
- はい。
- 糸井
- はぁー。
- 燃え殻
- 糸井さんには相談させていただいたんですけど、
新聞とか、いろんな方からの質問が心苦しいんですよ。
- 糸井
- 心苦しい(笑)
- 燃え殻
- 心苦しい(笑)
答えてて、ウソをつかなきゃいけない自分が。
- 糸井
- あ、ということは、
新聞を読んだ人はウソを読んでいるわけですね。
- 燃え殻
- 「なんでこの本を書いたんですか」
とか言われるじゃないですか。
本当は、あまり大きな理由がない。
実は、会社の行き帰りとか、寝る前とか、
寝てる途中で起きて書くことがほとんどだったんですけど、
たぶん、この小説では2か所ぐらいしか書きたいことがなくて。
僕、今日糸井さんに聞きたかったんですけど、
何か訴えることがない人は小説を書いちゃだめなんですか。
- 糸井
- それは例えば、ナマズを彫った高村光太郎に
「高村光太郎さん、なぜナマズを彫ったんですか」
って聞くみたいなことですよね?
- 燃え殻
- そうそう。
「実は社会的にすごく意味があることなんだ」って
高村さんは言えたんでしょうか。
- 糸井
- 言えないんじゃないでしょうかね。
- 燃え殻
- 僕は、社会的な感じを含めて答えなきゃいけないと思って。
この本には90年代から2000年くらいのことを書いたので
「90年代の空気みたいなものを、ひとつの本に閉じ込めたかったんです」というウソを、ここ1ヶ月ずっとついてて(笑)
スルスル、スルスル、口から流れるようになって。
- 糸井
- (笑)
- 燃え殻
- 「バブルが終わっても、世の中にはまだバブルが残ってる。
ヴェルファーレがあったりとか。そのまだらな世界を
僕はひとつの本に閉じ込めたかったんです」
ウソ、みたいな(笑)
- 糸井
- 的確なウソですよ。
そう考えてもらえればいいやっていうウソですよね。
- 燃え殻
- そう、もう「あ、なるほど」みたいな。
たぶん、それを求められてるんだろうなっていう。
- 糸井
- うんうん。
「それが聞きたかったんですよ!」って。
- 燃え殻
- こういうことを言っとかないといけないんだな、と思って。
いろんな人が取材記事を読むだろうし、
その取材の撮影場所にもいろんな人がいて、
その人たちに頷かれないと怖いじゃないですか。
- 糸井
- はいはいはい。
- 燃え殻
- だから、記者の人も、カメラマンの人も頷いて
「ああ、わかった、わかった」っていうのが理想。
- 糸井
- そして「ボクの話、いいですか」みたいな(笑)
- 燃え殻
- そう。すると「ああ、最初はよくわかんなかったけど、
そういうこと書いてる人なんだね」って感じで
シャッターを押してくれたり。
そんな感じで場が少し温まる。
温めたいから、それをずっと言うっていう(笑)
- 糸井
- ずっと言う(笑)
- 燃え殻
- 問題は、記事のアップされる間隔が狭いってことなんですよ。
だから「同じことばっか」ってネットに書かれて。
全然関係ない人から「いつも同じこと言ってくだらねえ」
とか「宣伝男」みたいなこと言われて(笑)
- 糸井
- 三谷幸喜さんくらいになるとね、
撮った映画が「さあ上映だ」ってときに
いっぱいテレビに出るじゃないですか。
やっぱり同じようなこと聞かれてるけど、
あの人も「宣伝男」みたいに言われるだろうし、
ちょっと不本意な気持ちもあるかもしれないですね。
- 燃え殻
- 僕は書きたいのであって、訴えたいんじゃないんです。
書いてて楽しい、みたいな。
- 糸井
- 書いてて、自分が嬉しいこと。
うんうん。
(つづきます)