もくじ
第1回おばぁは怒らない 2019-02-26-Tue
第2回加速度的に老いは進む 2019-02-26-Tue
第3回おばぁは、今幸せ? 2019-02-26-Tue

地方で編集・ライターをしています。
おいしいものと心地いい陽気が好きです。

私の好きなもの 94才のおばぁとのお茶

私の好きなもの 94才のおばぁとのお茶

担当・カワノリナコ

おばぁは94才。
私とおばぁは、時々お茶をします。
私たちのいつものお茶の時間は、
たくさんのさんぴん茶とお菓子に、おしゃべりは少し。
話題は天気や家族のことで、突っ込んだ話はしません。
塾の宿題でおばぁのことを書くことに決めて、
思い切って、前から知りたかったことを聞いてみました。
一番聞きたかったのは、今幸せか。
とても個人的なことですが、小さなころの思い出からお付き合いください。
全3回でお届けします。





第1回 おばぁは怒らない

私はおばぁにとって初孫で、小さなころからそれはそれは可愛がられた。
実家とおばぁの家は同じ敷地で、一緒に過ごす時間は多かった。
妹ができても「おばぁ抱っこして」と甘えたし、
親に怒られたらおばぁの家に逃げ込んだ。

私に問題が無いから、怒られなかったわけではない。
その昔、私は病的に忘れっぽい子どもだった。
小1の時、書道教室にランドセルを忘れた。
忘れ物を繰り返すことに怒った母親に
「自分で取りに行きなさい!」と家から出されて行方不明に。
周囲を巻き込んで大騒ぎになった。
まぁ、母が怒るのも当然なくらい私の忘れ物はひどかったのだ。
ランドセルや体操服、教科書とあらゆるものを忘れては、
おじぃが小学校まで自転車で届けてくれた。
おばぁが歩いて届けてくれたこともあった。
家から小学校までは約2キロ。
車が無いと、地味に遠い。
何回?と聞くと苦笑されたから、数えきれないのだろう。
「何で怒らなかったの?」と聞いたら「何で怒るかー」と笑われた。

おばぁのことは大好きだったけれど、
思春期になっておばぁの家に行く回数は減った。
大人になってからも、何となく足が遠のいていた。
おやつを食べても食べても
「もっと食べなさい」と言われると返答に困ったし、
「何を話そうか」と考えるのもちょっと面倒だった。

おばぁとお茶をするようになったのは、6年くらい前。
おばぁとお茶をしていた妹が県外に行くことになり、
誰も行かないのは寂しいだろうなぁと、努めてお茶に行くことにした。
行き慣れると、会話が続かないのは気にならなくなった。
まったりお茶をしながらお菓子を食べるのは、ホッとできる時間になった。

そんなおばぁとのお茶はうれしいけれど、最近ちょっと切ない。

第2回 加速度的に老いは進む