もくじ
第1回ぼくの好きなもの「ぼく」 2019-02-26-Tue
第2回ぼくの好きなもの「ぼく」 2019-02-26-Tue

1993年生まれのライター・編集者です。Mr.Childrenとかりんとうが好きです。

ぼくの好きなもの</br>「ぼく」

ぼくの好きなもの
「ぼく」

担当・サノトモキ

ほぼ日の塾、第2回の課題。

「自分の好きなものについて、ご自由に書いてください」…そう聞いたとき、ぼくの頭には3つ、書きたいものが浮かんできました。

好きなバンドの話、家族の話(もちろん愛犬ノエルをふくむ)、そして恋人の話。どれを書くにも、少し書くのをためらうような恥ずかしさと、自分でも読んでみたいようなおもしろさがあると思いました。

だけどぼくは、もう一つ、自分が書きたがっている「ぼくの好きなもの」に気づいているのです。

それは、ぼくが、「ぼく」自身を好きだということ。

だけど、思いついてしまってから、書くかどうかものすごく悩みました。他の3つと比べても、ずいぶん悩みました。
悩むうちに、ぼくは、ぼくが「ぼく」を好きだと言葉にすることに、どうしてこんなにためらうのだろうと思いました。(ややこしい!)

でもぼくは、そんなふうに悩んでしまうことが、なんだかもうおもしろいなあと思ったのです。

どうして、好き?ほんとうに、好き?
どうして、書きたい?どうして、迷うの?

好きなバンドのこと、家族(愛犬ノエルはおとこの子)のこと、恋人のことを考えるときより、何もかもがよくわかりません。
好きなのに、こんなにわからないものかね。

そう思うと、なんだか余計に書いてみたくなってしまいました。せっかく、「ぼくの好きなもの」について書けるんだもの。思いっきり恥ずかしく、熱っぽく、フルスイング!

第1回 ぼくの好きなもの「ぼく」

「ぼくは、『ぼく』のことが好きです」

そう書くことをぼくがためらったのには、よくよく考えてみると、2つの理由があったと思います。

1つ目は、とてもシンプル。
「この人、イタイ人だなあ」と思われるのが怖くて、恥ずかしかったのです。

だってやっぱり、「あなたって、自信満々のナルシストなのね…!」と思われてしまいそうだから。

どうせみんな、「ナルシスト」と聞くやいなや、はらりと垂れた黒髪をポマードなんかでツヤツヤのオールバックにまとめてあげて、お手洗いにいけば鋭く尖ったあごをさすりながら鏡をぐいっと覗き込む、ジムで鍛えた肩幅がやけに頼もしい感じの人を想像するんでしょう!?

違う、ぼくの「自分が好き」は、そういう感じじゃないんです…!
こう、なんというのか…「自分に自信がある」というところとはまったくべつの「好き」なんです。

そもそも、「ナルシスト」の語源であるギリシャ神話の美少年ナルキッソス君も、水面に映る自らの姿に恋をしてしまっただけであって、彼もまた「自信がある」わけでなく「ただ自分が好き」なだけだったと思うんです。

「ああボクはなんて美しいんだ…きっと周りのみんなもボクに見惚れてしまうに違いない」ではなく、「いやー、ボク、自分の顔好っきやな〜。周りは知らんけど、ボクは好きやな〜」だったと思うのです。ナル君は。

ぼくも、自分の顔が好きだし(恥ずかしい…)、性格が好きだし(恥ずかしい…)、言葉選びだとか歌声だとかも好きだし(うわあ、恥ずかしい…)、挙げだしたらキリがないくらい、思い浮かんでしまいます。(は、恥ずかしい!!)

でもそれは、「かっこいいと思ってる」とかじゃなく、あくまで「好き」なだけなのです!
つまり何が言いたいかというと、ぼくは、「ナルシスト」と「自信家」は違うと思うのです!!

むしろ、自信なんて持てていないほうなんじゃないのかなあと、自分では思っています。

ぼくよりカッコイイ人なんて、人間のできた人なんて、仕事のできる人なんて、ぼくの周りだけでもたーくさんいらっしゃいますし、
イケメンの部類でないことを女の子からそれとなく示唆されてしまったり、甘えた性格を指摘されてしまったり、仕事で己の無力さを痛感したことだって、そりゃもう何度もあります。

その度に毎度律儀に凹むし、周りのすごい人たちや、厳しい意見にたくさん触れる日々のなかで、根拠もなく自信を保てるような人間では、まったくないのです。

でも、周りにダメ出しされても、「自信」こそ削れていけど、自分を「好き」である気持ちは不思議と揺らぎません。

自分の容姿や能力が優れている劣っているだとか、そういった他人との比較からくる「自信」の有無と、自分のことを「好き」な気持ちは、少なくとも今のぼくのなかではあまり結びついていないような気がします。

何か決定的に好きなものがあるわけでもなければ、ダメなところだってたくさんわかっちゃいるけれど、好き。
そんな状態です。

じゃあ、ぼくは、いったいどうしてそんなに自分を好きなんでしょう。

その答え、じつは今回エッセイを書くなかで見つけたつもりなのですが、はたしてそれを書いてしまっていいのか…というのが、ぼくがこのエッセイを書くかためらった2つ目の理由です。

第2回 ぼくの好きなもの「ぼく」