小さい頃、リカちゃん人形で遊んだことはあるだろうか。
私は30代前半。おそらく同年代の女性であれば、
一度は手に取ったことがあるおもちゃだと思う。
1967年に誕生した彼女は、50年以上も愛されており、
時代に合わせて容姿やプロフィールも変化している。
いま活躍しているのは4代目。
(一時期、5代目も販売されていたようだが、
約1年と短く、今は製造されていない模様)。
現在の公式プロフィールの趣味の欄をみてみると、
ファッション、スウィーツ、旅行、スポーツ、そしてSNS更新。
SNS更新が趣味なだけあって、
インスタには可愛い姿はもちろん、お洒落でクールな姿まで、
活き活きとした数々の写真が投稿されている。
くわえて、リカちゃんのプロフィールは本人、
父・母、祖父母、弟妹さらにはボーイフレンドと、
事細かに設定されている。プロフィールを読む限り、
なんとも華やかな一家なのだ。
そんなちょっとリッチで異国の風も感じる彼女の存在は、
幼少期の私にとって憧れを抱くものであり、
そしてどこか遠すぎる存在でもあった。
何と言えば良いのだろうか…ハイスペック?
「設定」が細かく、完璧すぎて、付け入る隙がないのである。
一方ジェニーはというと
8月1日生まれ。
ハイスクールに通う17歳。
身長165cm、体重45kg。ロサンゼルス出身。
父は映画のプロデューサー、母はデザイナー。
明るくて好奇心旺盛。少々負けず嫌い。
将来の夢はファッションデザイナー。
(ウィキペディアより)
スタイル抜群で、憧れの存在であることは確かなのだが、
家族情報がリカちゃんに比べて圧倒的に少ない。
リカちゃんが「家族まるごと」揃えたくなり、
おもちゃ屋さんでも「家族みんな」が
販売されているのに対して、
ジェニーは父母が人形化されているわけでもなく、
家族臭がなかった。
リカちゃんが幅を効かせるなか、
私が初めて買ってもらった人形はジェニーだった。
ウィキペディアによれば、ジェニーは1982年に、
米マテル社から、バービー製造販売のライセンスを取得して
製造された『タカラバービー』が前身のようだ。
マテル社とのライセンス契約切れたことに伴い、
1986年タカラバービーがジェニーへと改名された。
私が人形で遊ぶ年頃になったころは、
メーカーが販促に力を入れていたのかもしれない。
店頭で目に留まり、何かの時に母が
ジェニーを買ってくれたのだろう。
リカちゃんに比べて身長の高いジェニーは、
友達とのごっこ遊びの際に、
ちょっぴり浮いてしまう存在だった。
けれども、リカちゃんよりもスタイルがよく、
幼稚園児の私からすれば”大人”の雰囲気が漂う彼女は、
私の心を掴んで離さなかった。
(ジェニーは身長がリカちゃんよりも高いので
ジェニーを持つ私は、いつもお母さん役、
お姉さん役をやらされるのは、多少不満ではあったのだが)
ジェニーはリカちゃんに比べて、大人っぽい洋服も多く、
洋服を着せ替え、お洒落させることに私は夢中だった。
リカちゃんの靴は主にローヒール。
けれども、ジェニーの靴はハイヒールが多かった。
自分では決して履けない高いヒールが格好よく、
大人の女性の象徴のようだった。
記憶にある限り、
私はリカちゃんをほしいとねだることもなく、
たった1体のジェニーで遊び続けた。
友だちと、時には弟のロボットと一緒に、
ジェニーを片手にごっこ遊びを繰り広げる。
一番好きなおもちゃだった彼女だが、
次第に年を重ねると人形遊びをする友だちは少なくなり、
小学生になるころには、私も友だちも、
当時流行っていたセーラームーンに心を奪われてしまう。
私とジェニーの友情が復活するには、
まだ数年の時間が必要だった。