「インデアンカレー」という名のカレー店は全国に様々ある。
なかでも私が通う店は、1947年に大阪で創業
現在、関西に8店舗展開中の関東初にして唯一の店舗
「インデアンカレー 丸の内店」である。
そして、愛して止まないメニューが
「インデアンカレー レギュラー卵入り」である。
初めて同店でこのカレーを食べたのは
30歳になってすぐの頃だと記憶している。
一口頬張った瞬間、「次にいつ来ようか」と考えた。
もっというと、これから人生で何回このカレーを
食べられるか分からないけれど
できる限り多くその機会を持てるように
努力しようと決心した。
それくらいこのカレーの味は
私にとって衝撃的かつドンピシャだった。
甘いのに辛い、辛いのに甘い。
20代の時のような激辛狂いを卒業し
だんだん上品な辛さを欲してきた時分に
出くわした小気味良い辛さのこのカレー。
時の流れというものに、「むしろありがとう!」
とブンブン握手を交わしたくなるほどだった。
サーブしてくれるスタッフの方を囲むかたちの
カウンターにとなり合う他のお客さんの真似をして
頼んだオプションの生卵もいい。
食べ進めるごとに口内で弾けるスパイシーさを
まろやかに中和してくれて
なるほど、これはマストなオプションだと感じる。
「必然性って美しい」、と心のメモ帳に記した。
そして、ひとりひとりに小皿に載せて提供される
甘酸っぱいキャベツのピクルスもまた素晴らしい。
美味しいカレーにとことん集中したいから
副菜があらかじめ小分けされているのはありがたい。
さらに、額にじんわり滲む汗も見抜かれている
かのように注ぎ足されるお冷やのタイミングも絶妙だ。
ファーストコンタクトにして
インデアンカレーに完全ノックアウトされた私。
以来、丸の内近辺で用事があるたびに
その前後に同店に駆け込むことにしている。
というより…、同店に行くために
丸の内近辺に用事をつくったこともわりと多い。
最高なのは、出張や国内旅行をする前に
食べるインデアンカレーだ。
同店は東京駅へと至る地下通路とつながっているので
新幹線に乗る前に立ち寄るのにも便利。
ルーはお玉で計量されており、
すさまじい速さでご飯にかけて提供されるので
乗車までの時間がタイトでも短時間で満足感を得られる。
旅の始まりは、すでに「インデアンカレー 丸の内店」
から始まっているという感じは“基本コト派”の
自分にとっては、たまらなく楽しいものなのだ。
ところで、私は32歳にして第一子を出産した。
これまでのようにひとりで無駄に用事をつくったり
出張や旅行に気ままに出かけたりすることは
調整や家族の協力なしには、簡単にはいかなくなった。
それでも先日、子育てと仕事との合間に
産後初のインデアンカレー詣でを敢行した。
愛しきカレーを無我夢中で食べ
交通系ICカードで支払い店を出て
滞在時間は15分もなかったと思うが私は幸せだった。
子どもを産んで、自意識やこじらせ感は
薄まったような気もするし
むしろ強くなったような気もしないでもない。
つまり、依然茫漠としているんだけど
インデアンカレーは問答無用に美味しいし
そこでの時間がたまらなく好きなことは確かだ。
ちなみに、関西出身のパートナーは
インデアンカレーを知らなかった。
彼が丸の内で用事があったときに
半ば無理やり、同店に行くことを勧めた。
帰宅後、「辛かった〜」と言う彼に
「でも、また食べたくなるでしょ?」
といったら「そやな!」と答えておりました。
(おわります)