- ───
- 高校生の時、子供を生むの信じられないって言ってたよね。
- カオル
- そうそう。今は、そんなことがあったかもなぁって。
前世のことを聞いているような感じ。
- ───
- 何でそう言ったの?
- カオル
- 男の人が苦手だった。
- ───
- それは何で?
- カオル
- 父親が凄い苦手だったから(笑)。
- ───
- お父さん、個性的だもんね(笑)。
あ、言いたくないことは言わなくていいからね。
- カオル
- いや、今はもう客観的に見れるから大丈夫。
エキセントリックが過ぎるっていうか。
身近な男のモデルが父親しかいなかったからかな。
また、その印象が強烈で。
- ───
- どんな感じだったの?
- カオル
- 姉妹4人それぞれに毎日国語や算数のドリルをさせて、
その勉強を父親が見ていた。
「俺ほど教育熱心な親はいない」って言うのが口癖だったな。
ほめられることはなくて、
いつもがっかりされているなぁと思っていた。
───:
カオル、成績良かったのに?
- カオル
- お前の成績は塾に行かせている俺のお金で買ったようなもの、
って言われて。
何の時だったか、お前に払っているお金は、
ドブに捨てているようなものだって言われたこともあったなぁ。
- ───
- それはキツイなぁ。
そういえば、高校の時に1人暮らししてたよね。
(カオルの家は学校まで車で40分位。通える距離ではあった)
- カオル
- たぶん私と父親がすごい仲悪かったから。
追い出されたのかなぁ。
実家に帰ってくるなって言われたし。
母が迎えに来て実家に行ったのに父親に帰れって言われて、
久しぶりに妹に会えるなぁって思ってたのにアパートに戻って。
- ───
- 寂しくなかった?
- カオル
- 寂しかった。
特に、1人暮らしを始めて最初の何日かは、
誰か暇そうな人を拾って帰りたいなぁって思ったくらい。
たまにお母さんが差し入れを持ってきてくれたけど
時々電気代を払いそびれて真っ暗になってた記憶があるなぁ。
暗い部屋で一人でさ。
─── 悲しいなぁ。
- カオル
- 生活能力もないからさ。
お風呂でお湯が出なかったから、ぬるま湯をベビーバスにためて
お湯を温めようとフライパンを熱してジューって入れて
やり過ぎてフライパンをベコベコにするっていう(笑)。
生活能力がない子どもをよく一人暮らしさせたなぁ。
- ───
- よく頑張ったね。
- カオル
- 今も、父のキャラクターは凄いんだよ。
何年か前に、実家に初めて夫を連れて行ったときに、
束で自分のエッセーを見せたんだよ。
コピー用紙で20枚くらいあるの読ませてさ。
夫はぐったりしすぎてその場で結婚させてください、
の話ができなくて、改めてもう一回行ったんだよ!(笑)
- ───
- 面白いなぁ(笑)。どんなことが書いてあるの?
- カオル
- 妄想を裏づけなしで長々と書くっていう。
- ───
- 小説とか書けそうだね(笑)。
- カオル
- いやぁ(笑)。疲れるよ。エネルギーを吸い取られる。
「俺を分かって」が強いけど、何が言いたいのか分からない。
- ───
- 俺を凄いって思ってほしいのかな。
- カオル
- そうそう! 自己主張が強いんだよ。70近くなった今も。
- ───
- 元気過ぎるね!
- カオル
- 最近もお祝いの席で初対面の人に、
おもむろにクリアファイルから自分のエッセーを出して見せて。
相手も大人だから聞いてくれるさ。
それが申し訳なくて。家族ですみませんって。
- ───
- 絵が浮かぶ(笑)。
- カオル
- 本人は幸せそうだわけ。
周りが、まただよってどうにか必死で止めるっていう(笑)。
- ───
- 姉妹でお父さんのことを話すことはある?
- カオル
- あるある。もう仕方ないねぇって。
母親が真逆で「うちの子はみんなかわいい」って
全肯定の人だったから、
私たち姉妹はぐれなかったんだろうな。
- ───
- お父さんの影響は、ありそうだね。
- カオル
- そうだね。就職する時の基準も、
男の人がいないか少ないっていうのを一番にするくらい。
一緒にいたら、向こうもこっちを嫌がるだろうし、
コミュニケーション取れないから迷惑かけるし。
一緒に和気あいあいと仕事できるイメージが一切持てなかった。
- ───
- 今、お父さんに対してどう思ってる?
- カオル
- 相変わらずだなぁって感じで、ある意味諦観?(笑)
受け入れている。今は、嫌いとかではないよ。
(続きます)