もくじ
第1回「どうして夜中にやってたの?」 2019-03-19-Tue
第2回「私の『MOTHER2』は、やっぱりこの4人なの」 2019-03-19-Tue
第3回「心が帰る場所」 2019-03-19-Tue

1993年生まれのライター・編集者です。Mr.ChildrenとMOTHER2と、かりんとうが好きです。

課題3

課題3

担当・サノトモキ

こどもの頃、ぼくのうちには「ゲームは週に1時間まで」というルールがありました。
どうして好きにやってはいけないのかとぶつくさ文句を言いつつも、ぼくと3つ上のお兄ちゃんはそのルールを守…ったり破ったりしながら、一生懸命ゲームを進めていました。
しかしある夜、みんなが寝静まったあとのリビングで、ぼくは偶然、テレビに向かってこっそり『MOTHER2』をプレイするお母さんを発見してしまうのです。
お母さんが1人でゲームをする姿を見たのは、後にも先にも、『MOTHER2』だけ。今思えば、隠れるように遊ぶその背中は、「母親」としてではない、「一人の人間」としての母を感じた数少ない瞬間でした。
そこで今回は、25歳の大人になった僕とお母さんで、スーパーファミコンの名作『MOTHER2』を遊んでみることに。あの日から約20年、今のぼくたちが一緒にあの世界を冒険したら、親子の会話はどんなふうに転がっていくのか。全3回、一緒に楽しんでいただけたらうれしいです。

第1回 「どうして夜中にやってたの?」

ぼく
いやあ、急に帰ってきてごめんね、一緒に『MOTHER2』をやろうだなんて。
お母さん
いえいえ、わざわざ東京から会いにきてくれて、うれしいよ。
今日のようすがほぼ日に載っちゃうなんて緊張するけど(笑)。
 
ゲームの前に、まずはお昼ご飯にしない?
ぼく
そうだね。そのあとゆっくり、『MOTHER2』の世界を楽しみましょうか。


母お手製、高菜の和風パスタとおでん。「後半味が濃くなってきたら、ブロッコリーを食べてね」とのこと。最後まで美味しくいただきました。

お母さん
でも、すごいなあ。新しいゲーム機で『MOTHER2』ができるなんて。
ぼく
人気のゲームだから、今でも遊びたい人がたくさんいるんだろうね。
お母さん
まあ、私でさえも「たのしかった」って気持ちが残ってるくらいだもんね。
ぼく
覚えてるんだ。でも、最後までクリアはしてないでしょ?
お母さん
したよ。私、ギーグ(『MOTHER2』、最後の敵)やったもん。
ぼく
えーーっ!! めちゃくちゃやってるじゃん! 絶対1週間に1時間じゃないでしょ、それ!
お母さん
ははは(笑)。ハマりまくってたときは、毎日1~2時間はやったね。
ぼく
いや、てっきり、「ちょっとやってみた」くらいのものかと思ってたよ。
 
まだ幼稚園くらいだったかな、夜中にトイレに行きたくなって部屋を出たら、リビングから光が漏れてて、恐る恐る覗いてみたらお母さんがゲームしてて…。でも、その日だけ偶然やってたのかなと思ってた。
お母さん
いつも夜中の12時くらいになると、テレビの電源つけて、ゲームのスイッチ入れて、また昨日の続きから。
ぼく
深夜0時、冒険に出るんだ。
 
どうしてわざわざそんな夜更けにやってたの?
お母さん
うーん、べつに隠れてやってるつもりはなかったんだけど、とにかく君たちもお父さんも寝てからやるのが楽しかったのかなあ。
全員寝て、カーテンも閉めて、マジの独り。私だけの世界。
だから、こうやって昼やることに、すっごい違和感がある! こんな明るいなかやるって時点で、もう、私の『MOTHER2』じゃない(笑)!やっぱり、夜中にやるのが楽しいんだよね。


食後のおやつは『エンゼルパイ』。東京に来てからはなかなか見つけられず、帰るたびにお願いしています。

ぼく
染みついてるんだ、夜中のイメージが(笑)。
 
でもさ、なんでそんなにハマったんだろうね?
ぼくらに時間制限かけてたくらいだし、ゲームなんて全然興味なかったんじゃないの?
お母さん
はじめたきっかけは正直覚えてないんだけどね…とにかく、冒険が楽しかった。
ふつうの主婦が冒険するって、ふつうはないじゃん。
このゲームってさ、次どこにいけばいいかとか、何をすればいいかとか、あんまり教えてくれないでしょ? そこがまた、自分で選んで進んでいってる気がして、おもしろいんだよね。ちょっとした根気さえあれば楽しめるゲームで。
ぼく
いや、じゃあ、ぼくらが1週間に1時間じゃ足りないってわかったでしょ(笑)!?
お母さん
まあ、君たちには習い事をいっぱいやらせちゃってたから…。とてもじゃないけど、計算上、ゲームをやってる時間はないなと。かわいそうだけど。
ぼく
公文に通信教育、水泳にサッカー、野球にピアノか。多忙すぎて、小学生のころおばあちゃんに「ぼくね、ちょっとお疲れ気味なの」って言ったらしいよ。
お母さん
やっぱり、男の子ふたりだったからか、将来にすごく責任を感じちゃったんだよね。自分は短大だったけど、ちゃんと大学まで行かせてあげなきゃって。
でも、もっといろんなことをやらせてあげればよかったなって、今は反省してる。
ぼく
いろんなこと?
お母さん
君たちが好きだった、将棋とか。
私が勝手に選んで押しつけるんじゃなくて、「やりたいことある?」って聞いてあげられたらよかった。君たちの意見を聞いて、君たちがやりたいことをやらせてあげればよかった。
ぼく
でも、そうやってたくさん習い事をさせてくれたおかげで、中学校の内申点オール5ですからね。どんなジャンルも楽しめるように育ててくれて、感謝ですよ。
お母さん
オール5だったの!?
ぼく
いや覚えてないんかい。

第2回 「私の『MOTHER2』は、やっぱりこの4人なの」