2018年の春、転職活動をしたとき
希望する企業のエントリーには
自分の長所と短所を書く項目があった。
短所はすぐに浮かんだ一方、長所には頭を悩ませた。
そんなとき、私が頼ったのは、
小学校6年生時の通知表だった。
当時、先生が行ってくれた企画。
クラス全員が一人ひとりに向けて、
その子の素敵だなと思うところを書く。
それを先生がまとめて通知表に記載してくれていたのだ。
いい大人が転職時に記すネタを
小学校時代の通知表から?
と思う人もいるかもしれない。
だが、三つ子の魂百まで、ではないけれど、
小学校6年生の魂は、きっと“今”につながるものが
あるにちがいないと思ったのだ。
改めて開いた通知表。
用紙を追加して貼られていたのは、
クラス全員が書いてくれた
「みんなのステキ探し」。
一つ一つ読み進めるごとに
長所はなんだろうと自信を持てず、自問自答していた私は、
これもあれもステキなところだよ、長所なんだよ、
とそっと背中を押してもらえた気持ちだった。
エントリーを書き終えたとき、
当時のクラスメイトと先生への感謝、
そして、今更ながら、
この企画をしてくれた先生への興味が
じんわり沸いてくるのを感じた
この「ステキ探し」の取り組みをしてくれたこと、
かなりの労力を要するだろう、
手書きで全て残す。それだけではない。
先生自身が学期ごとに通知表に
書いてくれた文章は、規定の枠を大きく越えて、
何枚もの別紙がつけられるほどの
ボリュームだったのだ。
こんなにも一人の生徒を見ていてくれていたのか。
その驚きはゆるやかに、
「今も先生は、きっと変わらずに
一人ずつに向き合っているに違いない。
先生にもう一度会って、
その姿勢の所以やエネルギーの源を
聞かせてほしい」
とエネルギーになっていった。
先生から最後に通信簿を受け取った1999年から、
今年で早20年。
卒業依頼、頻繁に会っていたわけではなく、
まめに連絡を取り合っていたわけでもない。
でも不思議と躊躇いはなかった。
20年前の通知表を手に、
私は先生のいる小学校へ向かった。
(つづきます)