私のオットは大工さんだ。
詳細に説明すると
ライブなどのイベントの舞台を設置したり
CMのセットを作ったりする
「イベント関係の何でも屋」的な大工なのだそう。
付き合って10年めで結婚、
ただいま6年目に突入した同い年のオット。
長い人生でみたらまだまだだが
私たちの年齢からみたら
人生の半分近くを一緒に過ごしている。
このオットには、少々困ったところがある。
それは、家の中のものを勝手に作っていってしまうことだ。
例えば、キッチンカウンター、
家の壁、パソコン用の机……。
ここで問題なのは
「前触れもなく」「勝手に」ということだ。
私も、一応人並みに
「家のインテリアはこうしたいな」
とイメージを持ち合わせている。
それをがっつり無視する形で
ある日突然、家の中にそれらが登場するのだ。
例えば、家に帰ったら玄関を上がったところに
しきりのような壁が出現する。
その日の朝まではなかったのに。
ちなみに、これは賃貸の間取り上
玄関からそのまま部屋が見渡せるようになっていたため
それの目隠しとして誕生した。
本棚の背をうまく利用して木の板を
はりつけて壁のようにしており
そのため部屋は傷つけていない仕様だ。
今でも忘れない。
いつも荷物を届けてくれる宅配便のお兄さんが
その壁を見て、
「うわ、すごい…これはいったい……」
と、唖然としたことを。
おそらく同じマンションの
他の部屋も知っているであろう彼が
びっくりしたのも無理はない。
私も最初は言葉を失ったし、
「ええ!? 私の意見も聞いてよ!!!」
と結構言ったし、怒っていた。
だが当の本人は
ドヤっとするわけでもなく
しれっと何事もなかったように
接してくるのだ。
さらに悔しいことには、作ったものは
そんなに私の趣味から外れていないという。
オットはサプライズが好きなのだ。
そして作るのは、突発的に思いついたときが多い。
お願いされて作ることは、あまりない。
これが何度か繰り返されて私は察した。
これは、オットと付き合っていく上で
避けられない運命なのだと。
そして、そんな諦めともに生まれてきたのが
意外とワクワクした気持ち。
「次は何がくるのだろう?」
どうせなら変化を楽しんでしまえ。
ぐるっと視点を変えて、私はこだわりよりも
オットのサプライズな作品を楽しむ方向にシフトした。