座長との出会いは15年前。
当時、私は大学生で、劇団員募集のチラシをたまたま見て
応募したのがきっかけです。
舞台経験どころか演技をすること自体が
まったくの未経験だったのですが、
そんな無謀な私をあたたかく迎えてくれたのが座長でした。
座長と私は母と娘くらいの歳の差がありますが、
今でも年に1~2回会ってはとりとめもない話をするという
交流を続けています。
心に迷いがある時に、相談というよりも
ただ話をしたくなるのです。
私にとって、母のような、姉のような、友人のような、
師匠のような、不思議で面白くてありがたい存在です。
少しだけ劇団の紹介をすると、
私たちの劇団はメインの役者が40代以上の女性のみという
ちょっと変わったメンバー構成でした。
もとは子育て中のママ達が
子ども向けの舞台をつくっていた劇団が
前身だったからだそうです。
とはいえ、劇団員それぞれが洋裁や美術など
プロなみの得意分野を持ち、
実際に現役の舞台女優や音楽家というプロがいる
エキスパート集団。
能楽殿でおこなう年1回の定例公演がメイン活動でしたが、
脚本から音楽まですべてオリジナル、
舞台美術も衣装もすべて自分たちで手づくりという
気合の入れようでした。
そんな劇団が解散したのは8年前。
多くのお客さんや関係者に惜しまれる中で、
座長は「劇団員の高齢化で続けるのが大変で」なんて
冗談めかして言っていました。
もちろん、こだわりの詰まった舞台をつくりあげるのが
大変だったことは事実ですが、
私は詳しい理由をなんとなく聞けないままでした。
どこかで小さく引っかかっていながらも聞けなかった、
劇団をやめた理由。
今回を逃すとずっと聞けないような気がして、
思いきって聞いてみることにしました。
(つづきます)