- 清水
- これ社長室なの?

- 糸井
-
うん。
でも、ほとんどミーティングルームだね。
ぼくの入ったミーティングはここで行うことが多い。
で、行く場所がないときはここにいれば。
- 清水
- なんとか。
- 糸井
- うん。でも、それを知っててみんな訪ねてくるとか。
- 清水
- いいね、重厚感がなくて(笑)。
- 糸井
- (笑)
- 清水
- 風通しよさそう。
- 糸井
-
今考えてるのは、ここに一つ棚を作って、
ぬいぐるみを置く棚。
何ていうの、こう、
来世に残したいようなぬいぐるみがあるんですよ。
- 清水
- あれとか?
- 糸井
-
あれは「おれ、ゴリラ」の復刻版ですね。
チョコレートを買うと抽選でもらえるやつで。
- 清水
-
私、あれ持ってて、
めっちゃかわいがった。
大事にした。
- 糸井
- ああ、あれを持ってたんですか。
- 清水
-
持ってたんですよ。
なんでかっていうと、
親が清水屋商店という商売をしてたので、
なんか特別なルートで。
- 糸井
- そうでしょう。あれ持ってるのはエリートですよ。
- 清水
- オッホッホッホッホ(笑)。
- 糸井
- 当時ね、ぼくは石坂浩二さんにもらったの。
- 清水
- え、なんで?
- 糸井
- 石坂さんちに行ったら、あって。
- 清水
- え、まだ学生ぐらいでしょ?
- 糸井
- 二十歳ちょっとぐらいだったんだけど、もう仕事してたんで。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- 石坂さんが、結婚したばっかりぐらいだったんですよ。
- 清水
- あ、結婚したばっかり。浅丘(ルリ子)さんとね。
- 糸井
-
うん。
で、ポルシェのオープンカーでさ、
「原宿のあの交差点とこで待ってろよ」とか言って、
「やあ!」ってパジャマの上にコート着て、
石坂浩二さんが。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
-
で、俺を乗せて、マンションまで行って、
ご飯は作ってくれるし、
どこか痛いって言うと按摩してくれるしみたいな。
- 清水
- なんでそんなかわいがられたの?
- 糸井
- いい人なのよ、あの人。
- 清水
- まあでも、本当にいい方ですよね。
- 糸井
- いい人なの。
- 清水
-
私と光浦さんが4、5年前にサイン会をやってたときに、
「あれ石坂浩二さんじゃない?」って言って、見たら、
普通にお客さんとして立ってて(笑)。
- 糸井
- (笑)
- 清水
-
「見に来たんだよ」って。
なんてフットワーク軽いんだと思ってビックリしちゃった。
- 糸井
- うん。俺知ってる中でも、「いい人番付」に絶対いる人だよ。
- 清水
- その頃糸井さんの仕事って何?
- 糸井
- コピーライターだったの。
- 清水
- ていう言葉は、じゃあ‥‥。
- 糸井
- もうあるある。
- 清水
- もうとっくにある?
- 糸井
-
あるある。
それで、養成講座から出たばっかりで就職して
――逆に俺、インタビューされてるじゃない(笑)。
- 清水
- でも知りたい(笑)。

- 糸井
-
たまたま少し大きめの仕事を取ってこれて。
ちっちゃい会社だったし、そのままぼくがやってたら、
なんか石坂さんと馬が合ったというか、面白がってもらって。
その頃はけっこう付き合ってもらってたんです。
- 清水
- へぇー、ラッキーでしたね。
- 糸井
-
うん。
俺、確か、手持ちのお金がないっていうときに、
「じゃ、ぼく、買っとくから」と言って、
「あとで返すよ」
って返してもらってないのがあるよ、多分。
- 清水
- あ、ごめん、お金貸したのは?
- 糸井
- お金貸したのぼくなの。2000円ぐらい(笑)。
- 清水
- よく覚えてるね(笑)。
- 糸井
-
その、何ていうんだろう、
「そんなのしていいのかな」
みたいな気持ちがあったんで覚えてるの。
- 清水
- ふーん。
- 糸井
- あと、「スターってお金持ってないんだ」と思った。
- 清水
- そんなわけない(笑)。
- 糸井
-
要らないんだよ、多分。
マネージャーといることが多いから。
- 清水
- あ、そうかそうか。お財布はあまり持ち歩かないのかもね。
- 糸井
-
まあ、なんせ屈託のない人だったんで、俺はすごく楽で。
で、その当時、石坂さんは
明治製菓のコマーシャルに出てたから、
そのぬいぐるみを持ってて。
「そんなに気に入ったんだったら、持っていっていいよ」
って言われて、おサル抱いて帰ってきた。
- 清水
- 二十歳過ぎた人がぬいぐるみもらったんだ(笑)。
- 糸井
- ぬいぐるみは、なんか好きでさ。
- 清水
-
へぇー。
意外とメルヘンっぽいとこありますもんね、糸井さん。
女の子っぽいというか。
- 糸井
-
女の子っぽいと言われてることを
男もしちゃいけないのかなって気持ちがある。
- 清水
- そうなんだ。
- 糸井
-
前に、「ダ・ヴィンチ」の編集長だった横里さんと一緒に
本を選ぶ仕事を毎月やってたんですよ、
「ダ・ヴィンチ」の雑誌内で。
で、なんかね、
女の子とかオシャレみたいなものを彼は選ぶんだよ。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
-
それをなんかすげえなと思ってて。
「それ、なんで選んだの?」って言うと、
「いや、かわいいなと思って」ってまず言うの(笑)。
- 清水
- 正直だね。
- 糸井
- うん。その正直さがすごく気持ちいいわけ。

- 清水
- 羨ましいんだ。
- 糸井
-
で、それを素直に言える横里さんを
俺はすごく尊敬して、
あのくらいのところまでいこうと思ったの。
- 清水
- ほう。そんな日があって。
- 糸井
-
うん。
そういえば、このあいだよその人と話をしてて、
「ほぼ日の人たちは、相手の人が何かいいこと言うと、
『え、それどうやるの? 教えて』ってすごく素直に聞く」
って言うわけ。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
-
「なかなかないんですよ、普通の会社は。
うちのほうがすごいって言いたいから」って。
- 清水
- ああ、そうかも。
- 糸井
-
あ、それはいいと思った。
俺は「教えて」ってタイプだから、
なんかそういうのが会社に乗り移ってるのは
いいことだなと思ってさ。
- 清水
- 似てくるんですよね、人間って不思議と。
- 糸井
- 似てくるんだろうね。
- 清水
-
うん。
ほぼ日の社員の男の人も、
かわいいものが好きな人多いかも。
- 糸井
-
ああ、そうかもしれないね。
こだわりがないよね。
逆に言うと女の子たちも、
「ラグビーに行こうぜ」と言ったら、スッと乗るよね。
- 清水
- へぇー。好奇心が強いのかな。
- 糸井
- 何なんだろうね。男女の色分けがないんじゃないかな。
- 清水
- へぇー。
(つづきます)