- 清水
- これ社長室なの? これで。
- 糸井
- うん。でも、ほとんどミーティングルームだね。
- 清水
- いいね、重厚感がなくて(笑)。風通しよさそう。
- 糸井
- 今、ここに一つ棚を作って、
ぬいぐるみの棚にしようと思ってて(笑)。
ぬいぐるみは、なんか好きでさ。
- 清水
- へぇー。意外とメルヘンっぽいとこありますもんね、糸井さん。
女の子っぽいというか(笑)。
- 糸井
- 女の子っぽいと世間で言われていることを、
男がしちゃいけないのかな?って気持ちがある。
- 清水
- そうだ、今の風潮だ(笑)。
- 糸井
- 前に「ダ・ヴィンチ」っていう雑誌の編集長だった横里さんという人と一緒に、本を選ぶ仕事を毎月やっていたんですよ。
その彼が、女の子っぽいものとかオシャレみたいなものを選ぶんだよ。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
- で、なんかすごいなと思ってて。
「どうして選んだかっていうとね」って
説明することになってるんだけど、
「それ、なんで選んだの?」って言うと、
「いや、かわいいなと思って」ってまず言うの(笑)。
- 清水
- 正直だね(笑)。
- 糸井
- うん。で、その正直さがすごく気持ちいいわけ。
で、「まあねえ」って言ったら、
説明で、こうこうこうこう、こういう、こういうことで
「なんか女の子っていいなと思って」って言うんです。
- 清水
- 羨ましいんだ(笑)。
- 糸井
- それを素直に言える横里さんのことを俺はすごく尊敬して、
あのくらいのところまで行こうと思ったの(笑)。
- 糸井
- ‥‥清水さんすごいな。全部俺が聞かれてるな。
- 清水
- 私、もともともっと聞きたいこといっぱいあったの。
- 糸井
- え、そう?
- 清水
- いつも仕事で流れていっちゃうからね。
- 糸井
- じゃあお互いしょうがないから、ぼくのところに質問が来たら、
それはそれでしょうがないっていう、ね。
- 清水
- しょうがないとは何ですか(笑)。
- 糸井
- 決まりがあるわけじゃないんだけど。
いや、ぼくもね、清水さんについては、言ったり聞いたりしてみたかったのよ。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
- 清水さんは、大学で勉強したの? 卒業できるぐらい。
- 清水
- うん。でも、家政科だから。
うちの田舎って短大とか大学行く以上は、教師免状を取るのが当たり前みたいな常識があったの。
だから、それを取るまではちゃんと勉強しましたね。
- 糸井
- ドロップアウトをしてないんですよね、つまりね。
- 清水
- うん、してないです。親に心配かけるようなことはしてない。
- 糸井
- なのに、やってることは、ずーっと(笑)。
- 清水
- もう本当、とにかくうちの両親は、森山良子さんの「ざわわ」をやめろやめろって(笑)。
- 糸井
- (笑)
- 清水
- 「まあまあ、もう今年でやめますから」って言いつつ30年もやって(笑)。
- 糸井
- 森山良子さんを見てるとき、清水ミチコを思い浮かべるように‥‥(笑)
- 清水
- なっちゃうじゃないか(笑)。
- 糸井
- なってしまう(笑)。
- 清水
- でも、うちの家系は、
私のひいおじいちゃんがエイザブロウって名前なんだけど
「嘘つきエイザ」って呼ばれてた人で(笑)。
- 糸井
- うん(笑)。
- 清水
- 普通は自分の名誉のためとか
お金のために嘘をついたりするけど、そうじゃなくて、
本当に自分の楽しみのためにだけ嘘ついてて。
- 糸井
- 性欲のような〝嘘つきたい欲〟(笑)。
- 清水
- そうそうそう(笑)。息をするように(笑)。
お坊さんのところに行って、
「田中んちのじいちゃんが死んだから、すぐ行け」とか言って、
そんなこと真顔で言うと、お坊さんは飛んで行くでしょう?
それで、それを見て、1人ですっごい笑ってんだって。
「飛んでった、飛んでった」って(笑)。
- 糸井
- 単純な嘘だね(笑)。
- 清水
- そう。それを何回も繰り返して1人で笑ってたって人が
私の祖先なの(笑)。飛騨高山で。
- 糸井
- 飛騨高山ってさ、崖からクマが落ちてたりするでしょう?
- 清水
- え? あ、します(笑)。
- 糸井
- ちゃんといい子だったんですか。
おじいちゃんは嘘つきかもしれないけど、「私」は。
- 清水
- うん、私は、いい子でもなく悪い子でもなく。
パッとしないような子だったけど、
糸井さんの「ヘンタイよいこ新聞」とかを高校のときに読んだり『オールナイトニッポン』聞いたりとかして、
だんだんそういうお笑いの世界みたいなのにはまって‥‥
- 糸井
- パッとしていったわけ?
- 清水
- 自分の中ではね、パッとしていったけど。
ほかの人はみんな恋愛してる中で自分だけが、
「ビックリハウス」載ったとか、
(1974年~1985年に発行されていたサブカルチャー雑誌)
ラジオで投稿読まれたとか、
幸せの尺度がちょっと違う感じだった。
(つづきます)