青木 |
最初は、仕事の合間に、
「カミロボ」が沢山映っているような写真を、
二枚ぐらい見せてもらっていただけ、でした。
見てすぐにどうこう思うよりは、
「すごくいっぱい作っているな」
という感じがあって……
だったら、作品集を作ったり、
展覧会をやったらいいんじゃないか?
安居くんには、そういう話をしたんです。
ただ、それは、
「知りあいだから、何かやるときには手伝うよ」
という程度のことです。
もちろん、他の美術作家さんたちとも、
そういう会話って、よくあるんですよ。
「カタログ作りとか、DM作り、手伝うよ」
っていう話ですから。
「じゃ、こんど何かの機会があったときに、
ちゃんと見せてよ」
みたいな話で終わっていました。
半年、一年と時間が過ぎていった。
ぼくは、その間にも
広告の仕事をずっとやり続けていました。
不況不況と言われて、ずっと、
今まで、来ているじゃないですか。
やっぱり、広告も
だんだん量が少なくなってきて、
なんかこう、最初から
俳優さんとかが決まっているような広告も、
オーダーとして、いっぱい
来るような感じになってきていたんです。
「この俳優さんが
うちの商品のキャラクターに
なってくれているので、
ここはもう『キメ』で、
あとの企画を、お願いします」
そういう仕事が、いくつか重なって来た。
もともと、まっさらな状態から考えて、
広告に誰を登場させることも含めて
企画を作ることが、ぼくは好きでした。
しかし、広告の量は減るし、来る仕事も
「しがらみを引っ張ってきてやらざるを得ないもの」
になってきて……それ自体は、
あんまりおもしろいものではなかったんです。
「このホクロは消しといて!」
そういうことを言われてやる作業って、
意味ないというか、自分じゃなくてもいいな、
という気持ちが、とても大きかった。
「俳優やミュージシャンのような人を使って
表現を作りあげる広告」よりも、
「アーティストやイラストレーターと組んで、
一風変わった広告を作ること」をやりたい。
ところが、最近は、
それが、できなくなってきちゃっている。
そこで、考えはじめたんですね。
ぼくは、キャラクターものが好きな割には、
それをファッション系の広告で
使うことが多かったんです。
そうすると、キャラクターの露出は少ないし、
あっと言う間に消費されてしまうし、
次は新しいことを期待されてしまうし……。
そこにも、また、悪循環がありました。
例えば、ファッションの分野では、
シーズンが変わると、
次、次、次って、新しいものを、どんどん
作らなきゃいけないことになっちゃう。
それは、厳しいなぁと感じていました。
毎回毎回展開するのが面倒くさいというか、
消耗されてしまうことは、つまらなくて、
「キャラクターが残っていかないな」
と思っていたんです。
「もう一度見よう」
というぐらいの気持ちのあるものには、
なかなか、なってくれないんです。
ただ、なにげなく置いてある
犬の置きものだったり……
カタチを成しているものって、ずっと残りますよね。
置かれていさえすれば、ふとしたときに
誰かの気分を高揚させることができる。
平面とかムービーで制作する広告よりも、
立体になっているもののほうが、
自分の好きなものを
再認識できる機会が増えるんじゃないか?
立体化したら、何かが変わるんじゃないか?
そう思うようになったんです。
キャラクターも、
フィギュアだったら残るというか。
自分で作ったキャラクターにしても、
作ったら、あとはもう
どこかのエージェントにおまかせ、
みたいなことになるのではないことが、
やりたかった。
糸井さんの「ほぼ日」みたいに、
「自分のもの」を持つことによって、
今までの自分の能力を発揮しながら、
他にも土壌を広げていけるんじゃないか、
と思いはじめたんです。
自分たちが信じてやり続けていけるものを、
ちゃんと持っていたかったですし。
安居くんにも
キリンのノベルティグッズを
作ってもらったりとかもしていたんですけど、
その過程でも、
「具現化すれば、印象の度合いがあがる」
と、更に、考えるようになったんです。
そういう時期に、この「カミロボ」には、
なんかありそうだな、と思いはじめました。
安居くんのやっていることは、
空想の世界では
誰でもやることなのかもしれないけど、
実は、ここまで具体的に形として
残っているものって、あまりないんですよ。
詳しくは、本人から
聞いたほうが、早いと思いますけど……。
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