青木 |
漫画家でもアーティストでも、ある程度、
自分のやっている行為を受けとめて、
ポジティブに発表しながら
成長していくじゃないですか。
ところが、安居くんは、
誰にも見せずにやり続けてきた。
こういう人って、
世界でも珍しいんじゃないかなぁと思いまして。
まぁ、単純に言うと、
安居くんはこのカミロボをすごい好きで作っていて、
ぼくはこれをプロデュースすることを
たのしいなと思ってやっている──
ということに尽きるんです。
ただ、それをうまく仕事に還元できると、
おたがいがラクでいいなと思って、
キャラクターライセンスに持っていってしまって。 |
安居 |
人間のできることは、プラモデルにはできない。
逆に、人間は間接を
無限に動かすことができないのに、
プラモデルは腕がどこまでも折れる。
そういうところは、
腕をめりこませることで調整したり。
プロレスの技をかけるから、
痛そうなところで
「ギギッ」と止まる必要があったんです。
試合、ものすごいハードなんです。
こんな感じで、ほんとに
相手を痛めつけながら試合をやるんで
(ガシッ! ダーン!とカミロボを叩きつける)
いい試合の後には、絶対に壊れちゃう。 |
ほぼ日 |
やり慣れてますね(笑)。 |
安居 |
それを修理したり。
作ったばかりの新人って、
関節の動きがすごいぎこちないんです。
二年ぐらい使うと、紙が痛んできて、
けっこういい感じになってくるんですね。
動きがよくなると、プロレスの試合の中でも、
割と上のほうの試合で使ってもらえるようになる。
新人はプロレスがヘタくそだから、
前座で使うとか……すべてが
リアルなんです、ぼくの中では(笑)。
スターに育てようと思って作ったやつの
動きが悪くても、それは修正できなかったりするし。 |
青木 |
ひとり遊びとは言いながら、
安居くんが試合をしているのを見てると、
おもしろいんです。
去年、おととしと、
年末の仕事が落ち着いたときに
事務所に来てもらって、
試合を組ませたことがあるんです。
別室で、カメラを三台ぐらい置いて
そこで安居くんひとりに試合をしてもらう。
集中してやってもらうには、
そのほうがいいかなと思って。
そうすると、みんな壊れちゃうんです。
手がもげちゃったり、
おなかがはずれちゃったりとか。
それぐらいはげしい試合をやる。
こちらを勝たせようと思っていても、
もちろん手が取れちゃったりしたら
負けじゃないですか。
そういうアクシデントで、
こっちが勝つんだろうなと思っていたのが
一気に敗退したりする。
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安居 |
青木さんたちの前でやる、って、
そこまでさらけ出せるまで、
そうとう時間かかりました(笑)。
いちばん恥ずかしいところは、
ずいぶん隠していたんです。
だけど、「これで毎晩遊んでる」って、
ものすごい恥ずかしいところまで
告白しちゃったら、
青木さんの方のリアクションも変わってきて。
こっちが恥ずかしいことを
言えば言うほどおもしろがってもらえるというか、
恥ずかしいのに、
告白してしまった気持ちよさも、
実はあったりして……(笑)。
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青木 |
ただ、そのカミングアウトも、
どの度合いが最適なのかが、
まだ見えていないんです。
このカミロボの世界でプロレスをやっている、
一体ずつの人格づけもできている、
そこまではわかるんです。
ただ、こいつの兄弟はこうなっているとか、
あいつは人を殺したことがあるとか、
きっと、まだまだ、奥深いところまで、
安居くんの中では展開があるはずなんです。
ただ、それって、
どこまで聞くとおもしろいのかは、わからない。
ある一線を越えると、
急に引いてしまうものかもしれない(笑)。
このロボが引退して居酒屋をやってて、
そこに来た違うロボが愚痴を言うとか……
どこまで来たら、
おもしろくなくなるのか?
それは、これから
やってくるところなんだと思います。
でも、かなり深いところまでは、
意外と聞いていられるんじゃないか、
と思っているんです。
ぼくだけじゃなくて、誰でも、
ちょっと、自分の空想や妄想に
通じるところがあるでしょうから。
みんな、安居くんのような妄想があること自体は、
認識することができる。
そこがおもしろいと思うんです。
何かを作っている人はみんなそうだろうけど、
カタチになっている以上に、ほんとはみんな、
いろいろ考えていたり思っていたりするんですよね。
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