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第3回 妄想の心地よさは、いつでも味わえる。


安居 「こんなにいっぱい作って、
 そんな妄想を広げていくことって、
 つらくないですか?」
とか、こないだ言われたんですけど(笑)、
このカミロボでやってることは、
ぜんぶ、面倒くさいこと百%ナシなんです。

ぜんぶ、たのしいことばっかりなんです。
趣味ですから。
ぼく自身が面倒くさくなることは
やらないようにしていますし。

お気に入りのキャラクターは、
その都度、変わっていくんです。

「こいつ、今、キてるな!」とか、
「コイツを売り出していこう」とか。

気に入ってるやつが、ある程度実権を握っていくと、
反体制のほうのキャラクターに感情移入したり。
で、自分の興味が移り変わっていったりとか……。
一コずつのキャラクターになるときもあるし、
団体のオーナーとして
「こいつをどうやって売り出していこうかな?」
っていう気分のときもあるし、
観客になったりとか、
視点をどんどん変えるんですね。
青木 最初にカミロボの写真を見せてもらったときは、
安居くんが実際に二体を
激しく戦わせていたなんてことは、
まったく知らなかった(笑)。
安居 一体一体名前をつけてるとか、
そういうことは、
ずいぶん後になってから告白したんです(笑)。

それまでは、カタチを見てもらっただけで。



青木さんとは、ふだんやっている造形を通して、
何度か仕事をさせてもらったんです。
ぼくは、それまでの仕事の中では、
青木さんのような
アートディレクターという仕事をやっている人と
会ったことがなかった。

もしかして、このロボを見せたら、
なんか今までぼくがともだちに見せてきたときの
リアクションとは、
違うものが返ってくるかもしれない。
そういう意見を聞けるだけでもおもしろいかな、
と思って、好奇心で写真をお見せしたんですよ。
青木 ぼくは最初は、趣味でこういうものを作っていて、
作品としてコレクションしているんだな、
と思って見ていました。

あんまりピーンとは来ていなかったんだけど、
「現物を見てみたいな」とは感じました。

確か、小学生のときから
作り続けているってことだけは聞いたと思います。
それはすごいなと思っていたから、
何かのついでに、
安居くんの京都の仕事場に行く機会に、
いつも一緒に仕事をしている
カメラマンの小山さんを連れていったんですね。
ちょっと、一応、写真も撮っておこうかな、と。

実際に触ってみたら、
ずいぶん年季が入っている感じが
あるじゃないですか。
そこが、味わいがあって、
なんかおもしろいなぁ、と思った。

それから、量が、予想以上にすごかったのね。
思っていた二〇倍はあった。



「じゃあ、これは、また日を改めて撮ろう」
そんな話で終わったんです。
それが三〜四年前のことだから、
会う合間は、ずいぶん開いていたんだと思う。
半年ぐらいブランクがあって、
何かの仕事のときのついでに、
ちょっと話す、みたいな。

何かと気にはなっていたから、
東京で一回撮影してみたりする──。
そうすると、だんだん、
このカミロボは、特殊なものなんだな、
ということがよくわかりはじめました。

安居くんは、
ひとり遊びを具現化するということを、
これだけ続けられている。

これだけの期間、ひとりで続けているからこそ、
ひとりひとりのカミロボの名前も
ちゃんと覚えていて、
性格づけもストーリーも
しっかり練りあげられている。

まぁ、誰でも小さいころは、
こういうことをやっていたと思うんです。
何かをモチーフにした
ひとり遊びの空想の世界は、
女の子でもやっているだろうし、
オトナになってからも、
その延長線上の空想や妄想って、寝る前に
ちょっと頭の中に思い浮かぶじゃないですか。

だけど、それって、
「横になりながら考えたりするような範疇」
ですよね。

安居くんのように、
ここまでやり続けて具現化した人は、
なかなか珍しい──

ぼくは、そこがおもしろいと思ったんです。



ロボットに興味がなくても、
プロレスに共感しなくても、
安居くんという人のひとり遊びの世界が、
ここまで広がっていること自体に、
驚く人はいっぱいいるんじゃないかな、
と思うようになったんです。

カタチにすることって、
すごい大切なんだなぁということは、
安居くんのやっていることを見て、
再認識できるようになりました。


妄想を抱いて、自分を主人公に置き換えて、
ああだこうだ空想すること自体は、
誰でもやっていることだと思うんです。
ストレス解消にもなるし。

もちろん、安居くんも、ストレス解消には、
なっていたと思うんです。
だけど、その妄想を頭のなかで展開させることと、
実際にカタチにすることには、大きな違いがある。

安居くんのストーリーは、
現実のカタチにすることで、
どんどん、他にないものになる──。

それは、すごいと思った(笑)。

(次回は、月曜日に掲載します!)

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