安居 |
「こんなにいっぱい作って、
そんな妄想を広げていくことって、
つらくないですか?」
とか、こないだ言われたんですけど(笑)、
このカミロボでやってることは、
ぜんぶ、面倒くさいこと百%ナシなんです。
ぜんぶ、たのしいことばっかりなんです。
趣味ですから。
ぼく自身が面倒くさくなることは
やらないようにしていますし。
お気に入りのキャラクターは、
その都度、変わっていくんです。
「こいつ、今、キてるな!」とか、
「コイツを売り出していこう」とか。
気に入ってるやつが、ある程度実権を握っていくと、
反体制のほうのキャラクターに感情移入したり。
で、自分の興味が移り変わっていったりとか……。
一コずつのキャラクターになるときもあるし、
団体のオーナーとして
「こいつをどうやって売り出していこうかな?」
っていう気分のときもあるし、
観客になったりとか、
視点をどんどん変えるんですね。 |
青木 |
最初にカミロボの写真を見せてもらったときは、
安居くんが実際に二体を
激しく戦わせていたなんてことは、
まったく知らなかった(笑)。 |
安居 |
一体一体名前をつけてるとか、
そういうことは、
ずいぶん後になってから告白したんです(笑)。
それまでは、カタチを見てもらっただけで。
青木さんとは、ふだんやっている造形を通して、
何度か仕事をさせてもらったんです。
ぼくは、それまでの仕事の中では、
青木さんのような
アートディレクターという仕事をやっている人と
会ったことがなかった。
もしかして、このロボを見せたら、
なんか今までぼくがともだちに見せてきたときの
リアクションとは、
違うものが返ってくるかもしれない。
そういう意見を聞けるだけでもおもしろいかな、
と思って、好奇心で写真をお見せしたんですよ。 |
青木 |
ぼくは最初は、趣味でこういうものを作っていて、
作品としてコレクションしているんだな、
と思って見ていました。
あんまりピーンとは来ていなかったんだけど、
「現物を見てみたいな」とは感じました。
確か、小学生のときから
作り続けているってことだけは聞いたと思います。
それはすごいなと思っていたから、
何かのついでに、
安居くんの京都の仕事場に行く機会に、
いつも一緒に仕事をしている
カメラマンの小山さんを連れていったんですね。
ちょっと、一応、写真も撮っておこうかな、と。
実際に触ってみたら、
ずいぶん年季が入っている感じが
あるじゃないですか。
そこが、味わいがあって、
なんかおもしろいなぁ、と思った。
それから、量が、予想以上にすごかったのね。
思っていた二〇倍はあった。
「じゃあ、これは、また日を改めて撮ろう」
そんな話で終わったんです。
それが三〜四年前のことだから、
会う合間は、ずいぶん開いていたんだと思う。
半年ぐらいブランクがあって、
何かの仕事のときのついでに、
ちょっと話す、みたいな。
何かと気にはなっていたから、
東京で一回撮影してみたりする──。
そうすると、だんだん、
このカミロボは、特殊なものなんだな、
ということがよくわかりはじめました。
安居くんは、
ひとり遊びを具現化するということを、
これだけ続けられている。
これだけの期間、ひとりで続けているからこそ、
ひとりひとりのカミロボの名前も
ちゃんと覚えていて、
性格づけもストーリーも
しっかり練りあげられている。
まぁ、誰でも小さいころは、
こういうことをやっていたと思うんです。
何かをモチーフにした
ひとり遊びの空想の世界は、
女の子でもやっているだろうし、
オトナになってからも、
その延長線上の空想や妄想って、寝る前に
ちょっと頭の中に思い浮かぶじゃないですか。
だけど、それって、
「横になりながら考えたりするような範疇」
ですよね。
安居くんのように、
ここまでやり続けて具現化した人は、
なかなか珍しい──
ぼくは、そこがおもしろいと思ったんです。
ロボットに興味がなくても、
プロレスに共感しなくても、
安居くんという人のひとり遊びの世界が、
ここまで広がっていること自体に、
驚く人はいっぱいいるんじゃないかな、
と思うようになったんです。
カタチにすることって、
すごい大切なんだなぁということは、
安居くんのやっていることを見て、
再認識できるようになりました。
妄想を抱いて、自分を主人公に置き換えて、
ああだこうだ空想すること自体は、
誰でもやっていることだと思うんです。
ストレス解消にもなるし。
もちろん、安居くんも、ストレス解消には、
なっていたと思うんです。
だけど、その妄想を頭のなかで展開させることと、
実際にカタチにすることには、大きな違いがある。
安居くんのストーリーは、
現実のカタチにすることで、
どんどん、他にないものになる──。
それは、すごいと思った(笑)。 |