シェフ
なにしろ10分の作品ですからね。
山下
ですねえ、どこまでお話しましょう?
ゆーないと
むずかしい。
スギエ
なーんにも知らない状態で観て、
わたしたちもすごく驚いたわけだし。
スガノ
そっかー、そうだよねえ。
シェフ
うん。
ここはいつも悩みどころなんですよ、
どこまでお知らせすればいいのか。
山下
なので、よく言っているのは、
「これから観ようと思っている人は
 ぜひ、読まないでください」と。
ゆーないと
そう、ぜひ読まないで(笑)。
スギエ
ここでページを閉じて(笑)。
コギー
妙なページだねえ(笑)。
スガノ
でも、「あ、そういうお話なんだ」って
ちょっと知ってから、
観てみようかな? って思う人もいるよね。
スギエ
そうですね、いらっしゃいますよね。
山下
話はそれますが、永田さんって
とにかく一切、知りたくない派なんですよね。
ゆーないと
あ〜、そうそう(笑)。
山下
事前情報はなんにも知りたくないと。
映画の予告編を観るなんてもってのほか。
先に観た人が感想を語り出したりすると、
わりとね、本気で怒ります。
スガノ
そうそう、永田さんはそう(笑)。
山下
一方、その正反対がモギさん。
スギエ
モギさんってどうなんですか?
山下
たとえば「昨日、演劇観た」って言うでしょ?
すると、
「どんなストーリー? ラストは?」って。
ゆーないと
へえ〜、知っても平気なんだ。
山下
「大勢に影響なし」なんだそうです。
「聞いていた、これかぁ!」と楽しめるし、
あらかじめ内容を聞いておけば、
自分好みかどうかを事前に判断できる、と。
コギー
なるほどねえ、それぞれなんだねえ。
シェフ
まあ、そのふたりはかなり極端な例ですが。
でも、そうですね、
これをきっかけに「観てみよう」と
思われるかもしれないかたに向けて、
ごくごく簡単にあらすじをお話ししましょう。
山下
はい、いつものようにですね。
例によってこれ以上は知りたくない!
と思ったら、ページを閉じてくださいね。
スガノ
永田さんは、ここで閉じてください。
ゆーないと
モギさんは最後までいっちゃってください。
シェフ
まいります。
‥‥ある町に、つみきのように
建てられている家があるんです。
どうやらその町は、水没してしまっている。
徐々に水面が上がってくるのにあわせて、
人々はレンガを積み重ね、
どんどん上に、部屋を作っているんですね。
まあ、そういう村ですから、
出て行ってしまう人が多いようなんですよ。
そんななかで、ひとつの家に
ひとりで住み続けているおじいさんがいる。
いくつも、つみきのように家を重ねて。
山下
というのが状況設定ですね。
ここでページを閉じてもいいかもしれません。
スガノ
永田さん、まだ読んでたりしないでしょうね。
ゆーないと
モギさんは引き続きどうぞ。
シェフ
で、ある朝、おじいさんが目を覚ますと、
また床上まで水があがってきているんです。
おじいさんは建て増しを決意して、
もう一階上にちいさな家を作りはじめます。
それで、水につかっちゃった部屋から
ボートに乗って家具を出そうとした時に、
くわえていたパイプを落としてしまうんです。
ちゃぽん。
山下
起承転結でいうならば、
ここはまだ「起」のところかもしれません。
ページを閉じるひとつのポイントです。
コギー
妙なページだなあ、閉じろ閉じろって(笑)。
スギエ
たしかに(笑)。
シェフ
パイプを落っことしたおじいちゃんは
なんと潜水服を着てそれを拾いに
水の中に潜っていくんです。
よっぽどだいじなパイプなんでしょうね。
一階下でパイプを拾うんですが、
それを拾うときに、
フラッシュバックで記憶がよみがえる。
それがね、亡くなった‥‥
コギー
亡くなった奥さんの記憶だね。
シェフ
それで、おじいさんはハッと思って、
さらに下の階に通じるドア‥‥
というか、あれはハッチというのかな?
ふだんはそのふたを開けて魚釣りをしている。
そのドアを開けて、
下に下に潜っていくと、
それぞれの階での思い出がよみがえって‥‥。
孫の記憶もありましたっけ?
スガノ
孫もあった。
山下
ベッドに横たわるおばあさんに
ごはんを食べさせている記憶も。
シェフ
あ、そうか、記憶を逆にだもんね。
山下
孫がいる階の下では、
娘さんがお嫁にいく記憶が。
スギエ
逆に逆に。
コギー
記憶を手前のほうからね。
ゆーないと
そうそう、さかのぼってく。
シェフ
で、どんどん、どんどん下に行くと、
ついに1階にたどりつく。水の底に。
そこでは、この場所が水につかる前の
草原だったころの記憶がよみがえって‥‥。
スガノ
まさか永田さん読んでないでしょうね。
一同
(笑)
シェフ
まだ若いおじいさんが、
幼なじみの奥さんに出会ってから、
結婚するまでの記憶が、
こう、やわらかく、表現されて‥‥。
山下
そう。いいんですよねえ、そこが‥‥。
シェフ
ぜんぶを思い出したおじいさんは、
もう一度いちばん上の部屋に戻ってきて。
そこでは当然ひとりぼっち。
でも、ひとりぼっちなんだけど、
ワイングラスをふたつ並べてね、
しずかに乾杯をして終わり、という‥‥。
スガノ
だめだ、いま聞いてても泣けてきた。
一同
(笑)
山下
そうなんですよね、
知っているのに、
心が揺り動かされるんです。
3回観てもそれぞれに感動がありました。
ということは、このあらすじを知っていても
悪い影響はあまりないのかもしれませんよ?
シェフ
うーん、ぼくらはその順番で観てないから
そこは何とも言えないんだけど‥‥
すくなくともミステリーのタネ明かしを
しているわけじゃないよね、今回。
ゆーないと
うん、それとはちがう。
シェフ
そもそもぼくらのこの、つたない説明で
作品のすべてをあらわせるはずがない(笑)。
スガノ
そりゃあそうだ。
スギエ
セリフのない作品だったから、
拾いきれない情報もたくさんあるはずだし。
ゆーないと
DVDだと長澤まさみさんの
ナレーション「ばぁ〜」もあるしね。
コギー
‥‥うん? なに? その「ばぁ〜」って。
ゆーないと
ナレーションバージョンの「ばぁ〜」。
「Ver.」だから、「ばぁ〜」。
コギー
‥‥いい発音だねぇ。
シェフ
発音の話はさておき、
そのナレーションバージョンで、
拾いきれなかった情報も
すこしわかったりして。
スギエ
それでさらに、絵本を読めば‥‥。
シェフ
あ、そうそう! 絵本もあるんです。
それにはストーリーが
ややこまかく書かれてある。
スガノ
そうだったのか〜っていう。
山下
うんうん。
シェフ
絵本は、アニメーションとは別で
新しい描き下ろしなんですって。
スギエ
へええ〜。
シェフ
ぜんぶ水彩画で描き下ろしているそうで。
スガノ
いまのおじいさんの暮らしも
ちょっと書いてありましたよね。
シェフ
はい。そのあたりは
読んでいただいてのおたのしみと
しましょうか。
山下
ですね。
シェフ
では、こんなところでー。
スガノ
‥‥よもや永田さん読んでないよね?
 
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今回の感激団メンバー
シェフ コギー ゆーないと
スガノ スギエ 山下
 
終盤の特別ゲスト
作者・加藤久仁生さん
カトウ    


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