都築 ぼくはここ3、4年、
売れない演歌歌手の人たちを
取材で追いかけていました。
結局、いまは
難しい歌が売れないんですよ。
みうら わ、そうなんだ。
都築 みんな、歌が好きで買うんじゃなくて、
カラオケの用の教材として音源を買っています。
ですから、音域を狭くして、
憶えやすい歌が売れます。
憶えやすい歌詞ということは、つまり、
「よくある言葉の羅列」ですよ。
作詞作曲の人たちも、
素人さんに歌ってもらうための
教材としての歌しか
書かせてもらえなくなってるそうです。
田島 そういうとこ、あるでしょうね。
みうら 演歌の人なんか、つらいですね。
田島 行間とか、含みとか
そういうのはあんまり必要とされない。
糸井 「いい」「悪い」という言葉が
指し示すものが変わっちゃったんですね。
都築 CD買ってるおっさんに
「これ、好きなんですか」と聞くと
「いや別に。だけど、課題曲だから」
って言う。
糸井 課題曲って概念が。
みうら それは、だれも課してないのにね。
一同 (笑)
みうら でも、その人は音楽教室に
行ってるのかもしれませんよ。
うちのオカンも行ってますから。
糸井 行ってる、行ってる、
行ってる人いる。
みうら 歌を習って、ステージ立って、
ビデオに撮ってもらって、
レコードまでできてます。
そこまで含めて、月謝です。
糸井 オカンのレコード‥‥。
みうら ええ。
実家に帰って、レコードがあったんで、
「昔、俺が残したレコードかな?」
と思ってかけたら、
オカンの声が‥‥。
田島 わははははは。
糸井 うまくなっちゃってる?
みうら うまくなってないですよ。
うまくなってないほうが、
「もうちょっとですね」と言われながら
次に進むからね。
都築 世の中には、
アーティストとしての歌手じゃなくて、
レッスンプロとしての歌手がたくさんいますね。
みうら います、います。
都築 またちょっと話は別ですけども、
このあいだ、ぼく、
足立区あたりのフィリピンパブの取材を
させていただいたんです。
そこで、フィリピンパブマニアの人たちに
いろいろ話を聞くとね、
カラオケには2種類あるとおっしゃるんです。
「好きな歌を歌うカラオケと、
 ウケたくて歌うカラオケ」
みうら ああ。わかる。
フィリピンの女の子にウケたい。
都築 ね?
女の子たちにウケたくて歌う歌です。
で、ぼくの友だちに
フィリピンパブが好きな奴がいて、
カラオケで何歌うのかな? と待っていると
いきなり、チューブとか歌うわけです。
「チューブ好きだったっけ?」
「いや、嫌い」
「じゃあ、なんで歌うの?」
チューブとか、ボン・ジョヴィとかね。
結局、フィリピーナが好きだ、ということで。
田島 ボン・ジョヴィ。
都築 ジャーニーとかも、すごいみたいで。
みうら ジャーニー。
都築 「ちょっと、おまえ、
 ジャーニー歌うの?」
みたいな。
糸井 そうかぁ。
一同 (笑)
都築 ジャーニーって、いま、
ボーカルがフィリピンの人なんだそうですよ。
ボーカルいなくなっちゃって困ってて、
そしたら、youtubeで
ジャーニーをすごくうまく歌う
フィリピンの人が‥‥
糸井 いたんだ。
都築 それで、起用されたと聞きました。
その方、フィリピンでは
大スターなんだそうです。
みうら オメガトライブみたいな感じで。
糸井 そのくらいにしちゃってもいい存在。
そこにジャーニーは
行き着いているということですね。
都築 それだけ大きくなってますから。
糸井 そういう「ウケたくて」というほうが、
もしかしたら、ほんとの
カラオケかもしれないですね。
都築 「好きで歌うんじゃないんだもん」という。
田島 ジャーニーもボン・ジョヴィも
歌い「あげ」られますもんね。
歌いっぷりがかっこいい、
という表現ができます。
都築 そういうのが好かれるみたいですよ。
糸井 かっこいいといえば、
俺の知り合いの、歌のうまい営業マンに
オリジナル・ラヴを歌う奴がふたりいて。
都築 そうなんですか。
糸井 偶然、同じ会社に
ポプコンでボーカル賞取ったみたいなやつが、
たまたまふたりいる会社だったの。
オリジナル・ラヴって、当時、
俺の世代からするとまだ知らなかったんだよ。
そいつらがカラオケで歌うのを聴いて、
かっこよくて、
「何、その曲!」
って、驚いたんです。
みうら そいつらから入ったんですね。
糸井 そう。
カラオケでそいつらが教えてくれた歌。
あの「接吻」というのは
歌謡曲の要素が入ってるの。
田島 はい、はい。
糸井 わぁ、誰の何の歌だろう、って訊いたら
「オリジナル・ラヴだ」って教えてくれました。
で、のちに田島くんと知り合って、
こいつかぁと思ってました。
田島 そうなんですか。
一同 (笑)

(つづきます)


2011-02-01-TUE